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[立体作品]モンスター美少女たちのパパになったら、全員俺を殺しにくるんだが!?  作者: 矢崎 那央
第5話 第3幕『パパって呼ばれたかっただけなのに、娘の世界にパパという概念がなかったので、私は何者にもなれませんでした』
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Scene8:『パパ、《ジェネシス・リサイクル・ゼロ》を撃つ』

『問題。信じるとは、どういうことか? 解答。裏切られてもいいと思うこと。裏切られても後悔しないと思うこと』

-「クビキリサイクル」より引用


どちらも間違いだ。それらはただの覚悟であり"信じる"ではない。

その答えは、何をされても、どれだけ拒絶されても、なおパパであること。

つまり、信じる=パパである。



 「なあ、フィロ……」



 私は、おずおずと声をかけた。



 「その……君が、やさしく私を迎えてくれたのは……

 私が特別だから、だよね?」



 自信なさげな笑み。

 いや、ちがうな。自信がほしいだけの笑みだ。


 だけど、フィロレーナは。



 「? どうしてですかぁ〜?」



 とびきり、無垢(むく)な顔で小首をかしげた。


 その瞬間(しゅんかん)、私の中の“何か”が

 パリンと音を立ててヒビ割れた。



 ——あれ……?



 え……ちょっと待って……?


 これ、もしかして……私だけじゃ、ない……?


 いや、違う違う!違うかもしれないだけだ!

 フィロはあれだ、だれにでもやさしくはあるが、

 家族には何か、もっと……違いがあるはず…。


 そう!あれだ!“やさしさのフォント”が違う!

 私にだけ、傍点で()()ってなってる。

 

 これは、そういうチューニング。

 ワンチャン!いや、ツーチャンはある!


 私は、心の中で謎の裁判(さいばん)を始めていた。



 ——だが……。



 その瞬間、(とびら)がバンッ!と開いた。



 「ゼェッ……ゼェッ……! はぁっ……ッ!」



 ()まみれの男が飛び込んできた。


 肩に(おの)(かつ)ぎ、目は血走(ちばし)り、

 口元からは鮮血(せんけつ)(したた)っている。


 あきらかに、カタギではない。

 おそらく、山賊(さんぞく)か何かが逃げ込んで来たのだろう。



 「テメーら全員ッ!人質(ひとじち)だァッ!!」



 子どもたちが悲鳴(ひめい)を上げる。


 お(じい)さんたちが、わりと元気に(つえ)を構えた。

 なんだこの老人軍団(ろうじんぐんだん)


 山賊の視線(しせん)が、温室(おんしつ)を見渡し、

 フィロレーナを見て、ビクリ!と止まる。



 「ヒッ……なんだその()け物ッ!

 女の顔して、花なんか()かせやがって……

 ぶった()ってやる!」



 ……来た。


 来たぞ。


 これは、“父”の出番(でばん)だ!



 「……やれやれ」



 私は、静かに立ち上がる。

 白衣(はくい)(すそ)が、ふわりと()れた。



 「娘とお茶を楽しむ、この美しき午後に……」



 私は一歩、前へと進み出る。



 「羽虫(はむし)が一匹、()い込んできたか。

 よかろう。我が術式(じゅつしき)、“創造還元式・第零項ジェネシス・リサイクル・ゼロ”により

 お前を、原子(げんし)まで分解(ぶんかい)してやろう」



  ドーンッ!!


 ……決まった。


 いや、これは完璧(かんぺき)だ。

 音響照明(おんきょうしょうめい)エフェクト全部のってる。


 これでフィロも「おとうさまぁ〜……」ってなる。

 なるに決まってる。なるはず。


 が……そのとき。



 「お客さまわぁ……すっごく疲れてる、

 かんじがしますぅ……」



  ふわり。


 彼女の胸部(きょうぶ)波打(なみう)ち、葉脈(ようみゃく)がその肌に浮かび上がる。

 肩からのぞく(ツタ)が、やわらかく()れる。



 「はいっ、これ。げんきがでる、お花……!」



  ぽすん。


 花冠(はなかんむり)を、山賊の頭にのせた。


 ……完全に、私のときと同じパターンである。



 「な、なに……?」



 山賊は硬直(こうちょく)した。

 花冠にふれる手が、(ふる)えている。



 ——そして。



 「……オレ、ガキのころ、村が(かん)ばつで(つぶ)れて…。

 親も、兄貴も、みんな死んじまって……」


 「誰かにすがろうにも、追い出されて……。

 どこ行っても、“疫病神(やくびょうがみ)(あつか)いだった……」



 ぽつ、ぽつ、と。


 ()みしめるように言葉をこぼしながら、

 彼はヒザをついた。



 「だから……だからオレは、

 誰かから(うば)うしかなかったんだ……!」


 「でも……でも……」



 ぐしゃ、と両手で顔を(おお)い。


 「……や、やさしい……こんな……

 やさしくされたの、はじめてだ……」



 ぽろぽろと、涙が落ちる。



 「オ、オレ……」

 

 「間違ってた……生きるって、

 こういうことじゃなかったハズだ……」



 震える声で、ぽつり。



 「オレは人のぬくもりを、こころを、忘れてた…」



 フィロは、にっこり笑った。



 「だいじょうぶですよぉ〜……やりなおせますぅ」



 山賊は、すすり泣きながら立ち上がる。



 「オレ、やりなおすッス! 

 だから……俺を連れてってくださいィ!」



 そこへ現れた冒険者たちが、

 さっそうと山賊を拘束(こうそく)した。



 「助かったよ、フィロ。

 アイツ、またこっちの村、(おそ)ってたんだよな〜」



 「ありがとな。今度またハーブティー飲ませてよ」



 ……なんだこの茶飲みコミュニティは。

 どこまで顔が広いんだ、君は。


 私は、静かに白衣の(スソ)(ととの)えた。



 ——ええ、ええ、わかっておりますとも。



 私が出るまでも、ございませんでしたとも……。


 誰にでもやさしくて、誰とでも(つな)がって、

 誰のことも否定しない……。


 そんな彼女のそばに、

 私は、何を持って立てばよかったのだろう。


 でも、今だけは……。


 せめて“はり切ったお父さん”のこの立ち姿だけは、

 誰にも見られていないことを、願いたい。



——to be last scene.

創造還元式・第零項ジェネシス・リサイクル・ゼロ


とにかくスゴい技である。

名前からしてヤバいし、なんか「ゼロ」とかついてる時点で最強っぽい。


発動すると世界のことわりがバグる。

敵は原子レベルでバラバラになってリサイクルされる。エコ。


そもそも「創造」してないのに「還元」するという、

因果が逆走してる時点でIQが高すぎて意味がわからない。


——次回予告。

Last scene:おとうさん、ではなかった。


——

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