Scene0:『父性に目覚めた私は、今日もひとり墓地へ向かうのである』
娘に“パパ”と呼ばれたいだけの男が、
今日もまた、ブーツで臓物を揺さぶらされている。
なぜなら娘は、
ギターを愛し、ロックを愛す、ゾンビ娘。
ロックを侮辱すれば本気のケリが跳ぶからだ。
しかし、彼は言う……。
「これが父娘の愛の音色だ」と。
この世界には、かつて“失敗作”と呼ばれた、
少女たちがいる。
魔術と科学の境界を踏み越え、
魂すら部品として、あつかわれた。
……禁忌の実験のはてにうまれた、
哀れな少女たちだ。
そして、そんな少女たちを作ったのが、
他ならぬこの私である。
しかし、私は、変わったのだ。
かつては、LC試験体などという
“物”として彼女たちを扱っていた。
だが、私は気づいたのだ。
LC-10……いや、“飛鳥"との語らいの中でな。
私は、ゆっくりと手袋を直す。
指先に刻まれた術式が、
淡く脈動していた。
「あの抱擁は……
今思い出しても、なかなかにエモかった。
そして、それに応えた私は、もっとエモかった。
つまり、私こそが、真の“エモ”の体現者である」
——おそらく、当の飛鳥。
彼の成長のきっかけとなった、
あの青い翼と桃色の鱗の脚を持つ、
華奢な女の子。
彼女が聞けば、センブリ茶くらい苦い、
苦笑いをするであろう。
「娘を作ったというのなら、
父として責任を持つのが当然だろう。
たとえそれが……一度死んだ、
ゾンビのような存在でも、だ」
——彼は満足げにうなずいた。
自分の成長を、ほこらしげに。
「まずは……あの反抗的な不良娘に会いにいく。
何度、諭しても聞かないが、
そろそろ理解できる頃合いだろう。
“父の愛”とは、"家族"とは何かを」
私は慈悲深く微笑んだ。
「私はすでに子供ではない。“パパ”だ。
例え不良娘だろうと、父として導いてやらねばな」
——to be first scene.
——お父さん的プロモーション -不良娘育成計画編-——
ゾンビで、不良で、ギターをかき鳴らして、言葉遣いも乱暴、顔はすぐ蹴る、情緒はロック。
そう、それが我が娘、ロメラである。
だが私は知っている。その粗野な態度の裏に、どれほどの激情と繊細さが眠っているか。
彼女こそ、もっとも“家族”に。"父"に飢えているタイプだと…!
——次回。
Scene1:古びた納骨堂、静寂の中で。
——
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