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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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私まで心の端が揺れるような。―古今集

 あらあらあら。という間もなく、落ち着きなく散っていく桜の花びら。降る雪のよう。いくら散っても無くならないような気がした。無限にも思えるほどに。そんなに慌てて散って、あらあら。




 先週末、終わりかけの桜を観に行った。駐車場は満車で、臨時駐車場に停めて、公園までの少しの坂道を歩いた。わずか1キロほどだったけれど、ほんのり汗ばむくらい。息を上げて歩いた。




 公園では桜吹雪。桜の花びらに埋め尽くされた坂道の傾斜を、踏みしめ、踏みしめ歩いた。満開に咲き誇っている時はあっという間で、愛でるまもなく慌てて散ってしまう。踊るように散っていく様子。遠くの山には雪が積もっていて、公園の桜の景色の陽気とがコントラストで、なんともフォトジェニック。




 つい口ずさみたくなる一首。

 「久方の光のどけき春の日に静心しづこころなく花の散るらむ」



 「日の光のどかな春の日に、落ち着きなく桜の散るのはなぜなのか」という歌。静心なくという言葉が、桜を見てそわそわしてしまう感じがして、春の気分にぴったりくる。春は忙しない。そわそわしながら、ひらひらと散っていく桜を観ると、なんとなく鬱屈してくるような。そんな気分。




 私まで心の端が揺れるような。まだ枝木に残ってる花びらを惜しむようにシャッターを切って、春だよ、と言い訳してるみたいな。光は眩しくて、花びらにとってはなんの余裕もなかったりするのだろうなあ、と。



 次は葉桜かな。





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