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愛おしさがつまって、箱の蓋からあふれそうなほどに。―澁澤龍彦玉手匣
掌に収まるほどのアルミの箱に、ヘアゴム入れたり、ヘアアクセサリー入れたり。
おしゃれでもなんでもない私だけれど、髪を長くしてるから少しは持っている、ヘアアレンジのアイテム。
朝、開けて。今日はこれにしよう。ゴムを取り出す。
箱を開けるときはいつもわくわくする。愛おしさがつまって、蓋からあふれそうなほどに。
『澁澤龍彦玉手匣』を読む。プロローグにある、夢の玉手箱の記述。笠女郎の歌が引用されている。
わが思人に知るれや玉匣開け明けつと夢にし見ゆる
夢のつまった玉匣。秘めた想いがつまった箱が、開けられてしまったという夢をみたよ、という歌。閉ざされた夢の中身が溢れて澁澤曰く、「アラビヤン・ナイトの魔法の壺のごとく」「夢の空間を満たした」のだろう。笠女郎の恋人、大伴家持への恋心。不安と焦燥とが入り交じって、胸を締め付けるような甘さが箱に詰まっていた。それが開けられ、辺りに満ちあふれてしまった。
そんな歌を題名にした『澁澤龍彦玉手匣』。澁澤龍彦のエッセイがセレクトされた一冊。選りすぐりの、大好きばかりを集めた小箱。
宝物がまたひとつ増えた。玉匣からひとつ夢を取り出して眺め愛でてもいいですか。




