表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/82

日常にはない緊張感。たまに良いよね、と真顔でポーズ。―幻想の肖像

 学生時代に好きで集めた澁澤龍彦。本棚の整理をしているついでに読み始めてしまった『幻想の肖像』。美術史の勉強は澁澤で習ったと言ってもいい程はまった、澁澤の文庫を再読です。




 そう。この魅惑的な美女たちの肖像。見飽きることなく、見つめてしまうエナメルのような滑らかな肌。まさに陶器の輝き。




 特に、ペトルス・クリストゥスの「若い女の肖像」だ。

 細い切れ長の眼。まさにミステリアスと言っていい謎の魅力に満ちている。幼い少女のような表情と華奢な体つきは、日本人好みな肖像とは言えないか。





 うーん。こんな少女を拝んでいると、私の肖像も作ってみたくなるのである。そうだ。一枚くらいいいではないか。




 カメラが趣味の良人。求職中の私に、一枚履歴書用のポートレートを撮ってくださいとお願いする。快諾する良人。いいではないか。やってみよう。





 早速髪から纏めていく。この本の肖像の女性たちは、波打つウェーブの髪型だったり、縄のように編んで束にして、飾りを散りばめたりと髪型を見るだけでも見応えがある。今回、私のポートレートは履歴書用。私は多めに手に取ったワックスを髪に撫でつけ、きっちりと結んでいく。顔周りもスッキリさせるためシニョンにして留める。

 もちろん飾りはない。

 次は薄く化粧をはたいていく。『幻想の肖像』の女性たちのように眉を剃り落とすのはさすがにできない。やや太めのアーチ状にペンシルでなぞってぼかす。アイメイクはしないで、お決まりの眼鏡をかける。リップもワセリンを薄く伸ばす程度。




 どうだろう。スーツに着替え、第一ボタンまで留めて、息を止めて鏡の前に立った。





 いいんではないの。年増のリクルートスーツの痛みも気にしつつ、早速、カメラマン・良人によってシャッターが切られる。





 日常にはない緊張感。たまに良いよね、と真顔でポーズ。




 

 そしてプリントアウトしてもらった写真にあ然とするわけです。もちろんそこはお決まり。





 なんとなく想像と違っているけど、履歴書としては良いのかな、と納得する私。年増のダブルワークを狙った結果ですもの。こんなものです。




 良人は、満足そう。

 家族にも趣味の範囲が認められて、余程嬉しかったのかカメラをいじり出すのでした。




 『幻想の肖像』の美女たちはよりすぐって美女ばかりか、個性派か。化粧も落として、澁澤を読みあさる昼下がりなのでした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ