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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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今日は卵料理で。―貧乏サヴァラン

 「掃除や洗濯は有がたくないが、料理をこしらえるのは楽しい」という森茉莉。共感。贅沢な舌を持つ茉莉の食エッセイを今日は読みたい。そうだ、読もう。




 今日は、卵の話。



 森鷗外の娘、茉莉。鷗外が好きだった卵料理は、生卵ご飯だったそうだ。それを継承した茉莉。卵好きの茉莉は、食べるだけでなく、その形も好きだった。

 私は無類の卵好きというわけではない。卵の形は可愛らしいと思いたいけれど、そのデリケートさで扱いに難がある。割るのを失敗すると殻も入ってもどかしくなる。半熟好きの茉莉だけれど、私は半熟の目玉焼きを作るのも、食べるのも苦手だ。目玉焼き作りは、ターナーで焼けた目玉を崩さず皿によそるのは至難だ。いつでも焦げ付かないフライパンがあればいいのかもしれないが。




 私の卵の愛すべきポイントと言えば、その名前だ。「たま」という言葉の音は可愛らしく、その形状をよく表している。割れてしまうデリケートさは調理をする上で厄介だけれど、その形の本質まで嫌えない。「たま」に「こ」が合わさって愛すべき名だと感じてしまう。「卵」を音読みにして、「らん」と言うと楽しくなる。「らん」を二つ重ねたくなる。




 卵料理は作るのも食べるのも苦手だけれど、大好物のメニューがある。塩麹を使った親子煮だ。

 鶏もも肉を細切れにしたものに塩麹に30分ほど漬ける。それと玉ねぎとだし昆布を鍋に入れ煮えたら昆布をのぞき、溶き卵を回し入れひと煮立ちさせるのだ。それを炊きたての丼ご飯の上にのせる。塩麹の親子丼は、砂糖もみりんも必要ない。塩麹のおかげで卵がふわふわして口当たりがなんとも贅沢。またとない卵料理だ。




 卵好きの茉莉の気持ちに共感したくなる一品。明日も食べたくなる。





 「私のメニュウ」という目次がある。ページを捲る。ある日の茉莉のメニュウが羅列される。とてもおしゃれでおいしそうなメニュウ。作り方も載っている。真似したくなる。茉莉に習いたくなる。




 今日は、卵料理で。




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