弱りきった様子が、妙にグッとくるということだろう。―枕草子
秋から歯医者通いを始めた私。歯医者の先生には申し訳ないが、歯医者は怖いという先入観があって、足が遠のいていたわけです。子どもは歯医者通いさせるのに母だけずるい! という家族からの後押しもあって、6年ぶりに歯医者へ予約したのでした。
いざ診察。
なんともびっくりですが虫歯だらけだった私の歯。なんとも治療しがいのある私の歯。怒涛の治療がスタートしたわけです。
でもそこは先生の腕の素晴らしさよ。全然痛くないんですね。結局、最後の虫歯の治療が終わるまで全く痛まなかった。
医療の進歩にも感謝する思い。本当に今の世の生まれたことのありがたさを感じます。
平安の世と言えば、歯痛も我慢し続けた事が枕草子から伺えます。
「⋯いとよう肥えて、いみじう色白う、顔愛敬づき、よしと見ゆるが、歯をいみじう病みて額髪もしとどに泣き濡らし、乱れかかるも知らず、面いと赤くて、おさへて居たるこそ、いとをかしけれ」(第百八十三段)
美人が歯を痛めて泣き乱れているのが、いとをかし! と言ってしまう清少納言。治療ができないのだから、歯痛の美人にとっては「をかし」どころではないだろうと言いたくなる。病に犯されているのをちょっと色っぽく見えてしまうと言うのはよくある美意識かなと思う。「病は、胸」から始まるこの百八十三段。胸の病ってときめきする乙女の病。その延長にあるこの歯痛美女のお話。弱りきった様子が、妙にグッとくるということだろう。
私の虫歯騒動には、どんな色っぽさもないが、大した歯痛もなく、治療も軽くて、私は大満足なのである。色っぽさより、歯医者様々なのだった。
歯医者を怖がる方がいるなら、痛くないよ! と後押ししたい私でした。




