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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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ギタアはおっぽり出されたけど、凍みた氷を踏むと音楽のようだ。―月の光

 月の都から、その名月をお伝えするエピソードは過去にあげさせて頂きました。



 今回は、こんなレクイエムを紹介。

 中原中也の「月の光 その一」「月の光 その二」だ。




 家族と夕方、ウォーキングの習慣がある。夕方と言っても、日はとっくに暮れて、辺りは真っ暗の夜空の中、今の季節だと凍みた道路を歩いている。ツルツル滑って、歩き方にコツがいる。降ってきそうな雲一つない星空の下を歩いているだけで、ストレスが緩んで、心が洗われるような感覚がある。




 「月の光が照つてゐた」

 「月の光が照つてゐた」



 つい口ずさみたくなる。ぐるりと住宅を通る道を回って、雪道に映える月明かり。




 「お庭の隅の草叢くさむら

  隠れてゐるのは死んだ児だ」




 亡くなった中也の子、文也へのレクイエム。登場するチルシスとアマント同様に、月の妖精が登場したかのようだ。




 月明かりを浴びながら、中也の「月の光」をきょうだいたちに話して聞かせる。文也が亡くなってから、一年もたたずに中也も亡くなったこと。音楽を思わせる詩だけれど、「ギタア」は放り出されて弾かれそうもないこと。




 特別、関心も持てなかったのか、きょうだいで別の話題で盛り上がりだす二人。どんな興味も、二人には敵わないと思う私。




 淋しいような気でいると、良人だけは聞いていてくれて、「中原中也、本当に好きだね」と白い息を吐きながら笑ってる。毎回、ちょっと飽きれているような、でも必ずリアクションをくれる良人に、ひとの良さを感じてしまう。




 ギタアをおっぽり出されたけれど、凍みた氷を踏むと音楽のようだ。「こそこそ話をしてゐる」ようだと思う。




 「森の中では死んだ子が

  蛍のようにしゃがんでる」




 ここが好き。文也への愛を感じるようで、こんなふうに書いてみたいと頷いてしまう。




 今日の月も、雪道に落ちる。

 寒いね、ときょうだいたち。






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