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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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別々の土地で同じ月を見上げているかも知れないと思い馳せて。―夢十夜

 昨日は月が綺麗すぎて、夕食後に夏目漱石を開いてしまった。漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したという逸話は有名。たった一人きりで見つめた月は勿体なくて、綺麗だね、と話せるひとも傍らに居ない寂しさだった。



 こんな月の綺麗な夜は、懐かしい人に会いたくなる。



 夢のなかに会いに来てくれる嬉しさ。私は二十年来の友人に再会する。



 私は二十年前の若い頃の姿で、学校に通っている。その教室にイーゼルを立て、絵を描いている友人。描かれるモデルとなってるのは、何故か私の子どもたちで、きょうだい揃って遊んでいる風景を友人が描いている。



 私は若いままだし、子どもたちは登場するし、時代が錯綜している。私はこれは夢だと自覚したまま、これは漱石の夢十夜みたいだ、第六夜だ、と思う。



 運慶が仏像を彫るように、私の友人も絵描きに集中している。



 私の子どもたちは、描かれていることに頓着なく、ぽぽちゃん遊びに仮面ライダーごっこに興じている。私の子どもたちも幼児の姿で更に時代がめちゃくちゃだ。私は何故かハラハラして落ち着かなく、子どもたちにジッとしているようにと話しかけている。



 絵はどんなふうに仕上がったのか、夢の中で見ることはできなかった。



 時々、懐かしい気持ちになると、夢に会いに来てくれる友人。遠方から、今でも元気でいることだろうか、と懐かしむ。別々の土地で同じ月を見上げているかも知れないと思い馳せて。



 月の都からの便りです。






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