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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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真っ赤な頬は紅葉色に染まったかのよう。小さな幸せが胸に滲んでいく。―古今集

 きょうだいたちが小さな頃は、秋も深まった公園で、紅葉狩りをしたり、どんぐり拾いしたりしました。




 紅葉した落ち葉を丁寧に袋に入れ、どんぐりをポケットに入れ、持ち帰ったら、どんぐりは一度冷凍し、落ち葉は土を払って、画用紙に貼り付けて絵を描いたり楽しみました。

 兄の作った、魚に見立てた落ち葉の絵は可愛らしく、絵の具やクレヨンを駆使して、水族館が出来上がりました。妹はたくさんの紅葉ばかりを貼り付けて、ヒトデ! と喜んで作りました。



 ちはやぶる神代も聞かず龍田川からくれなゐに水くくるとは




 在原業平の歌った屛風歌だ。神の時代には、不思議な出来事が起きていただろうが、その時代にも聞いたことがない。龍田川の水が、紅に括り染めしてしまうとは、という歌。



 

 川が紅に染まるほど、紅葉が落ち、流れている。そんな様子が描かれた屛風。鮮やかで、華やかで、神代の出来事にも聞いたことがない、と讃美する程の風景らしい。




 お祝いの歌にふさわしい豪華な歌。私ときょうだいたちの紅葉狩りは、本当に細やかで、でも公園の小路を秋色に染める、ちょっとわくわくする風景。秋空が日を高くして、日に染まるきょうだいたちの真っ赤な頬は、紅葉色に染まったかのよう。小さな幸せが胸に滲んでいく。




 しばらく玄関に絵を飾って、秋を楽しむ。きょうだいたちが、それを見つめるたび「また公園行こうよ!」と、急かすから、簡単なお弁当を用意して、出かけていったあの頃。




 秋の日は柔らかで、優しく。




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