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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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満たされる腹とその明るい言葉に、胸がいっぱいになる。―伊勢物語

 9月はじめの頃、地域で防災訓練に参加してきました。三角巾を包帯にして患部を巻く方法や、寝たきりのひとの搬送の仕方など学び、地元ケーブルテレビのインタビューにも答えてきました。



 そこで振る舞われた炊き出し訓練。レトルトパウチのカレーライスと、水で戻したアルファ米が支給されました。アルファ米はわかめごはんとして配られたのですが、とてもおいしくいただきました。非日常感からか、きょうだいたちも、防災用とは思えない! おいしすぎる! とやや興奮気味に味わって食べました。



 伊勢物語の第九段。東下りの章段は、モデルとなる在原業平が京から八橋へ下り、乾飯かれいひを食べている描写がある。かきつばたという五文字の句の上に据えて詠んだ歌に、みな感動して、乾飯のうえに涙を落として食べた。乾飯は、水分を抜いて乾燥させた保存食のことで、持ち運びに便利で旅先に持っていったらしい。ふやけた米に涙の塩の味が効いて、歌の妻を思う気持ちも相まって、懐かしさと満たされる腹とその明るい言葉に、胸がいっぱいになる。



 乾飯は、今で言ったら、防災用のアルファ米と言ったところか。水で戻すだけで食べられる防災用保存食は、家にひとつ常備しておきたいと思った。いざというとき、家族を助ける保存食。伊勢物語の東下りの段も思い出しながらいただくありがたいお米。非常の時など来ないことを願いつつ、どんなときも家族と助け合って生きていくことを確認した防災の日なのでした。




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