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ひじきを食べると思い出す、ひじきの歌。―伊勢物語
ひじきを煮る。にんじん、油揚げ、ちくわ、白滝と炒めて、酒と砂糖と醤油で煮る。貧血予防で、立ちくらみがある私には優しい。酢飯と合わせて、お稲荷さんに包む。きょうだいたちの好物だ。
「昔、男がいた」から始まる伊勢物語。第三段にひじき藻を贈ったという男が、それに添えて歌を贈った。
思ひあらば葎の宿に寝もしなむひしきものには袖をしつつも
ひじきを詠みこんだ歌。ひじきではないが、敷物には袖をして共寝でも、という歌。贈り物にひじきとは、私は嬉しいが、贈られた二条の后はどう思ったろう。海の幸が珍しいとはあるだろうか。それにしたって野暮な感じがしてしまう。ひじきと敷物を掛けた歌とは言ってもだ。
山盛りのひじき煮と銘酒八咫烏でいただく晩御飯。私にはたまらない。ほんのり甘く、きょうだいたちはお稲荷さんに手を伸ばす。ひじきを食べると思い出す、ひじきの歌。愛情たっぷり、ひじきたっぷりの歌と言えようか。主菜の肉団子の甘酢あんもすすむ。あっという間に平らげて、コップ酒も空になる。
いやしい家に共寝も、愛越えて、ひじきをプレゼント。逆におしゃれかな、と思いながら食す、ひじき煮。




