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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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ことばが現代に変化して、月は変わらない姿で、透明度を上げて表現されようとする。―新古今集

 古典作品を読む。むむむ、と唸る。もっとすらすら鑑賞できたら。平安の人々の感情を共有できるのに。


 子どものときに、もっと真面目に古典の勉強しておいたらよかったなぁ、と思うのです。

 

 いいえ、今から勉強したって遅くはないのでしょうが。


 後悔ばかりが先立って、なかなか勉強などできない私。古典好きなら苦も無くやれるんでしょう。やってみせるでしょう。古典文法の本を開いて、むむむと唸る。そんな勉強法だから続かないのです。


 私が読めないのは、古典作品ばかりではありません。


 そう。息子から送られてきたLINEの文章。

 息子との会話。

 息子と息子の友達との会話の内容。


 つまり。


 若者の言葉が理解できない。


 ことばは変化するもの。

 千年前、詠まれた歌。百年前の新聞小説。令和の、今の世のことば。

 全然違うでしょう。本当に同じ、日本語なの?

 そのときの作者のことばを、そのときの流行の日本語で書かれる。そして、私のこのエッセイのことばも、きっと百年後には難解で読まれなくなるようなことばたち。


 辞書片手に。むむむと唸られながら。そんな風に翻訳されながら読まれるんだろう。


 そのとき、生きていたはずのことば。空気を吸い込んで消化されるように、消え去ったっていいんだ。

 明日にも、消え去ったっていいんだ。


 無常感と相まって、刹那的ですらあったっていいよ、と。



「秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ」



 「影のさやけさ」がいい。いにしえの月の、澄んだひかり。どんな月だったんだろう。ことばが現代に変化して、月は変わらない姿で、透明度を上げて表現されようとする。

 月は、いつだってフォトジェニックだったから。


 家族と、月を見に行こうか、と計画を立ててみる。

 月の都の、ここだから。




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