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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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会う=結ばれた、という結果がついてくる以上、情のようなものがすでに芽生えやしませんか。―新古今集

 恋に恋をするようなもの。姫の顔を知らず、美しい姫がいる、という噂を聞いて恋文を出す。その歌は、こんな歌だった。


「みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ」


 いつ見たか分からないのに、こんなにも恋しい。恋の歌を贈ります。贈られてきた恋の歌に、あなたへの恋心が募ります。ようやく今夜、あなたの姿を見ることができます。


 姫と結ばれた朝、ついに顔を見る。顔を見るまで、噂や恋の歌にどれだけ想いを募らせたか。素形を見て、彼はその外見にも恋をする。


 そうだったらいいですけど!


 ようやくの思いで結ばれたのに、「あれ? 好みじゃないな」と思われたらどうしましょう。いや、そんなことだってあったはずである。人を外見で好きになどなりませんって! などと言えますでしょうか。美人だってひとから聞いたから恋しちゃったんですけど、なんか違ったみたい、と思われ、後朝の別れもそこそこ、次の訪れはなかったことに、なんてことにも実際あったはずだ。

 

 逆に!


「わあ、なんて可愛らしい姫だろう!」と愛が始まっていくことだってある。しかし、会う=結ばれた、という結果がついてくる以上、情のようなものがすでに芽生えやしませんか。ひっぱってひっぱって、勿体ぶって、現代なら顔をみつめて口説き落とすところ、見えない相手にラブコールするのである。妄想の夢は敗れても、すでに恋、育っちゃってますけど? な事態に、まあ情はあるよねという結末くらいは頂きたいものである。


 現代は面食いが許されているなんて都合がよくなったことか。恋愛のハードルが高すぎやしませんか。そう叫びたくなるのも、外見に自信のない私は、昔も今も恋愛向きではないと、悲しくならざるを得ないのである。




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