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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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音楽を聞く。色が横たわり、その関係の中に画布に描かれた風景があった―地獄の季節

 詩人のある状態に憧れて、まねたことがある。共感覚「シネステジア」である。

 共感覚とは、ある感覚刺激を受けた時に、その刺激以外の別の感覚が引き起こされることである。


 アルチュール・ランボーは、『地獄の季節』のなかに、「俺は母音の色を発明した。―Aは黒、Eは白、Iは赤、Uは緑、Oは青―。」と記した。このように異なった感覚同士が結びつく現象を持つ人は、割合に少ないものの、自分に共感覚があると気づいていない人も含め、一定数存在する。文字や数字に色を感じたり、音から色を感じたりする。その他、においや味に色や形を感じる共感覚など、数十種類に分類できたという研究もあるらしい。


 共感覚を肯定的に捉えるなら、自分は詩人らしい特質を持っていると言えると思う。実際、私はランボーの共感覚に憧れて、一見混乱していると思われるような感覚の結びつきを、詩に羅列させてみたことがある。二番煎じもいいところで、駄文が仕上がったことは否めないが、混乱する詩の列の中に、私しか理解できない秩序があった。私の中の混沌が言葉になったとき、思考は整理され、新しい生を受けて眼前に提出された幸せはかけがえないものだった。


 音楽を聞く。色が横たわり、その関係の中に画布に描かれた風景があった。その感覚を研ぎ澄ませ、抽象化される表現に、芸術家の芸術家たる所以があるだろう。






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