文系理系戦争 「文系か理系か。それが問題だ」
※この作品はフィクションであり、登場する教科や人物はすべて架空です。
政治的意思もございません。ギャグ・コメディ作品としてお楽しみください。
「え、まず、歴史さんって理系なんだぞ?」
「「は?」」
音楽の発した一声に、現国と数学は固まった。
「え、音楽さん、今なんとおっしゃいました?」
現国が信じられないといった様子で聞き返す。
「え、だから、歴史さんって理系なんだぞ。逆に文系だったのかい?驚きなんだぞ!」
「歴史さんって俺と同じだったのか…?」
「おいおい!数学大丈夫か!?洗脳されるな!!」
現国がおそらく初めて数学のことを気遣った。
「歴史って、なんかでっかい機械とか使って、遺跡の年代を特定するって聞いたぞ!それって理系じゃないのかい?あと、歴史の事象には自然環境ってやつが左右しやすいって前歴史さんが言ってたぞ!だから歴史さんって理科に近いなーって思っていたんだぞ!」
「確かにそういったような…」
歴史さんは苦笑しながらつぶやいた。
「まず、文系と理系っていうくくりを考えなきゃわからなくないか?」
ぴかっと現国の目が光った。
「文系とは人の心を知るために、言葉や文化を掘り下げる学問の一つのくくりである。理系とは世界の仕組みを解き明かすために、数と法則を使う学問のくくりである。」
「こういう時に、お前の能力って便利だよな…」
現国がもつ基本能力として、『自動辞書』、どの言葉でも一瞬にして意味が分かるというものがある。
「あー音楽が言う基準で言えば、歴史さんは理系っていうので通るのか…」
冷静に現国は言った。
「ん?となると」
数学が顎に指をあてて考えた。
「現国の理論をそのまま使うとすれば、歴史さんは理系であるため、文系である現国と話してはならない、となる…」
「おいおいおいおいおい!!!ちょっと待て!!歴史さんが理系っていつ決まった!!」
慌てて現国が反論した。
「歴史は確かに機械は使うけれど、文書も扱い、言葉や人々の暮らしを学んでいくだろ!?それって文系じゃないか!」
「いや!歴史さんは理系だ!文書とかも、理系の機器がなければできないことだ!!」
「なんだと!?」
「やるのか!?」
「…ちょっと、表出ろ現国」
「…かかってこいや数学」
「「歴史さんをかけて勝負だ!!」」
「…俺のために争わないで~…で合ってる…?」
……こうして冒頭に戻ってくる。
「理系の機器を使用しているからって、理系にはならないだろ!もし歴史さんが理系っていうなら音楽だって理系ってことになるじゃないか!!」
「え、逆に音楽って文系だと思っていたんですか!?今のピアノの音階を発見したのは、かの有名な数学者ピタゴラスさんだぞ!ピタゴラスさんがいないと、音楽もくそもねえからな!」
「いや、俺は音階だけにとらわれないんだぞ!この世界すべてが音楽なんだぞ!」
「「音楽は黙ってろ!」」
「じゃあ逆に少しでも文系の要素があったら、文系なんですか!?だったら生物さんもらっていいですかね!?生物って確か、人間の営みから生まれる環境問題から、反省点をあげて未来につなげていく、みたいなとこありましたよね!?」
「いや生物さんは『理科四兄弟』の中の次男だぞ!?理って入っているのに、どうして理系じゃねえんだよ!」
「お前の、『理系の要素が入っていたら理系である』理論を使えばそうなるんだよ!!わかったか!」
「いや、おかしい!生物だって理科をベースに考えているじゃねーか!」
二人があーだこーだ言い合っているのを、遠巻きに、歴史、美術、音楽は見つめた。
「あーなんか揉めてきたな…はあ…」
「結局、歴史さんってどっちなんだい?文系?理系?」
「ボクはどっちの歴史さんでも大好きだよ。結婚してくれるのまってるんだけどなー」
「え、遠慮しておくよ…」
そうだな、とつぶやいて歴史は目を少し閉じて考えた。
「学問に境界線を引いて分けるっていうのが、俺はよくわからないんだ…」
「どういうことだい?」
「俺は“学問”に境界線など、本来ないとおもっているんだ。
すべては“知りたい”という、たった一つの感情から始まっているからね。」
歴史はゆっくりと言い争いをしている二人の方に歩んでいった。
「俺は、今を、未来を知りたいから、過去を通してそれを探しているだけだ。
数字も、言葉も、絵も、音も、すべて“過去”を受け継いで、今がある。そう考えると俺は自分を文系か理系かどちらであるかとは決められない。でも俺から一つだけ言えることはある。
『自分こそ正しい』と声を荒げるとき、人は
——歴史から何も学ばないことになる」
ゴツン!
「痛った!!」
「痛って!!」
歴史さんにげんこつを落とされて現国と数学は床に伸びた。
「はあ…むったどむったどよぐあぎねなぁ…(いつもいつもよくあきないね・・)」
「うわあ歴史さんやっぱりかっこいいなぁ!!本当にボクと結婚しないの?」
「本当に遠慮しておくよ…」
「そういえば歴史さんまたどっかに旅行行くんだって!?すぐ帰ってきてくるんだぞ!いつもいなくて寂しいんだぞ…」
「めやぐ(ごめんね)、歴史を学びに行かなきゃいけないから、忙しいんだ」
「職員室のみんな、歴史さんのこと大好きだから、一緒にいたいんだぞ」
「ふふ、仕事優先だよ」
尚も食い下がる音楽を軽くあしらって、歴史さんは床にまだ伸びてる二人をまたいだ。
「あ、この二人放置しておいていいの?」
美術さんが現国と数学の横顔をスケッチしながら聞いた。
「うーん。ちょっと今日はいろいろ言われて俺も機嫌が悪いからなー。廊下の端っこにでも置いといていいかな」
「りょーかいなんだぞー!」
音楽と美術は二人を邪魔にならないところに置き、歴史を追って職員室に入った。
こーんな感じで文系理系戦争は終了した。
その後、保健さんに発見され、現国と数学は保健室で目覚めるのであった。
「「ちょ、ごめんなさい保健さん!今度から怪我しませんから!!!だから、その怖い笑いやめてください!!!!」」
昼頃に阿鼻叫喚の声は聞こえたというのは、しばらく学校の七不思議となり噂された。
第二話、読んでいただきありがとうございました!
作中では「歴史は文系?理系?」なんて冗談交じりに揉めてますが、実際には学問に明確な線なんてないと私は考えています。「知りたい」という気持ちから、いろんな学びが広がっていくんですね。
歴史さんの言葉を借りるなら──
「すべては“知りたい”という、たった一つの感情から始まっている」
……かっこいい~~!!(自画自賛)
あと、作中で方言を多用していますが、正直エセ感あるかも……。全力で調べて書いていますが、もし「これは違うよ~!」というところがあれば、ぜひ教えてください!(切実にお待ちしています…!)
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!