第6商 "インフレーション "
(早朝の静けさが部屋に広がる中、スマホのアラームが鳴り、兼成はベッドの上で目を覚ます、時計の針が午前5時を指している)
(兼成はコーヒーを持ってパソコンの元へ)
(兼成はパソコンで経済ニュースを見ている)
兼成『この方は過剰な政府支出がインフレを引き起こすと言っているのか…』(そういえば…次は物価について話してくれると言ってたな)
(兼成は財布から100円を取り出して賽銭箱に入れる、その音が、朝の静けさの中で響く)
(深呼吸をして、目を閉じ、祈りを捧げる)
(その瞬間、目の前に光が閃き、ウェルの姿が現れる、エルフの優雅な姿が、あっという間に部屋の中に浮かび上がる)
(ウェルが胸に手を当ててお辞儀をしている)
ウェル(笑みを浮かべて)『常盤兼成様 ご利用ありがとうございます』
兼成『今日は物価について再度学びたいなと…』
ウェル『いいだろう 物価とは…モノ・サービスを買うためにカネがどれくらいの量必要かを表すものだ そしてその逆数は貨幣価値を示す』
兼成『物価が上がればおカネの価値は下がり…物価が下がればおカネの価値は上がる…って事ですね』
ウェル『そしてインフレーション…インフレとは…出回るモノ・サービスが少なくなり おカネが多くなり続ける経済状態の事だ』
兼成『物価が上がって おカネの価値が下がりますね』
ウェル『つまり… カネの支払い・収入がモノ・サービスの生産性より速く成長している経済状態とも言える わかるかね?』
兼成『この間言ってた 傾きと波を重ねて 波の傾きが大きいって事ですかね?』
ウェル『反対にデフレーション…デフレとは…出回るモノ・サービスが多くなり おカネが少なくなり続ける経済状態の事だ』
兼成『物価が下がって おカネの価値が上がりますね』
ウェル『つまり… モノ・サービスの生産性がカネの支払い・収入より速く成長している経済状態とも言える わかるかね?』
兼成『そこまではなんとなくわかる…でも僕が疑問なのは 人によってインフレの意味が違うんじゃないかって…』
ウェル『そうだ インフレには3つある
❶モノ・サービスのインフレ
❷資産のインフレ
❸労働のインフレ
だからどれを指して話しているのか きちんと確認した方がいい
そして 話す時は前年比・前前年比・10年前比とかを大事にした方がいいのだよ』
兼成『そうか… そもそもインフレって良くないもの?』
ウェル『私が思うに…インフレには”良いインフレ”と”悪いインフレ”があるのだよ』
ウェル『”良いインフレ”とは…景気が良くなり 需要が高まり モノ・サービスの値段が上がるインフレ… そうなると企業は利益を出しやすくなり 給与も上がる そう思わないかね?』
兼成『なるほど…じゃあ悪いインフレってのは?』
ウェル『”悪いインフレ”とは…原材料の高騰でコストが上がり モノ・サービスの値段が上がるインフレ… 需要が高まるわけでなく給与もそれについてこない』
兼成『給与が変わらなくて モノ・サービスを買う値段だけ上がっていく…』
ウェル『資本主義の本質はインフレ…投資はこうしたインフレと戦うためにあるものなのだよ』
兼成『子供や孫がインフレになっても困らないように…』
ウェル『それと経営者であれば 企業の従業員や関係者も含まれるぞ』
兼成『この間のお客様も同じようなことを仰ったような…』
ウェル『経済的な成功など インフレ率が高過ぎれば一瞬で価値がなくなるのだ… 周りが1億円稼ぐ世界で10億円稼げましたは評価される… だが』
(ウェルがメガネをカチャっとする)
ウェル『人々の血の滲む努力で周りが9億円稼げるようになった世界で 10億円稼げましたは評価されなくなる だから一瞬でも早く下の世代に投資しなければ価値がなくなるのだよ』
兼成『インフレになる要因は色々あるような…』
ウェル『ああ だが大きく分ければ3つ』
(ウェルが指で1を示す)
『❶”慣性の法則”…インフレが続けばインフレになる これは適応的期待からくるものだ』
(ウェルが指で2を示す)
『❷”完全雇用”…人手不足がなくなればインフレになる フィリップス曲線など聞いたことがあるだろう』
(ウェルが指で3を示す)
ウェル『❸”外生的要因”…需要・供給ショック Covidのパンデミックもこれにあたる そう思わないかね?』
兼成『…弊害も多いよな』
ウェル『インフレの弊害も大きく分ければ3つ』
(ウェルが指で1を示す)
ウェル『❶”インフレ課税”…インフレが続けば政府はカネを持つ人々の購買力を奪って国の借金を返済する カネを刷って世の中に出回るカネが増加すると人々はモノを買い求め…さらにインフレが起き…カネの価値が減少し購買力が減少する』
兼成(さっきニュースで見たのはこれか…)
(ウェルが指で2を示す)
ウェル『❷”値段シグナルの機能低下”…インフレが続けば需要のある生産が減ったり 需要のない生産が増えたりと経済が非効率となる モノ・サービスによって値段の上昇率が大きく違うからだ』
兼成『僕もそうだけど やっぱり値段で買うかどうかを決めるから…でもどれも高すぎると何買えばいいかわからなくなる気がする』
ウェル『3つ目はそれに関わる』
(ウェルが指で3を示す)
ウェル『❸”生活水準の低下”…カネで買えるものが少なくなる そしてカネを持っていて損だと感じる人々がモノ・金融資産に変えようとする そしてそれを狙った犯罪が増える インフレとは人々の道徳観を蝕むものだ』
兼成『給与が上がらないから職権濫用するしかないって書き込みを見たことがあります 社食サービスの食い逃げ…取引先のサンプル品を自宅へ郵送…カラ出張…』
ウェル『インサイダー取引や詐欺も増加する』
兼成『でも…仮に給与が上がったとして…手元に残るおカネが増えたとして 日本がどう変わるんだ?』
ウェル『賃上げか… 賃上げできたとして 税額が変わらないとしよう…すると手元に残るカネが増える…だが消費に貢献しようとせず貯蓄に回そうとする… メディアはインフレだと騒ぎ立てる…』
(ウェルが歩き始める)
ウェル『すると貯蓄ではなくリスク資産に回そうとする…その時 ちょうどいい株式を買える制度があるとする… すると手元に残るカネが増える そこでやっと消費に回す』
兼成『消費に貢献しようとしないってのは…GDPについて話したことが関係して…』
ウェル『そうだ ここまでいい話に見える が他に考えなければいけないこともある』
兼成『株価だけ上がってても…自国のおカネの価値が下がっていれば国の利益が海外に流出してるかもしれない』
ウェル『そうだ そしてインフレ下では 中立国に資産を逃して経済発展する この1択しかない』
兼成『年金をもらって逃げ切った気になってもインフレで意味がなくなる…?』
ウェル『そうだ ちなみに1923年のドイツのハイパーインフレに関する本を読んだことはあるかね?』
兼成『いや…』
ウェル『そこではハイパーインフレを乗り切った人間は 中立国に資産を逃がしていた人間・農家などの実業を行う人間… 一方悲惨だったのが年金生活者・公務員・政治家… こうなると国の医療も教育も治安もどんどん悪くなる… GDPの時にした話と繋げると君は何を思うかね?』
兼成『負のサイクルが…思い浮かび…ます』
ウェル『面白そうだな 聞かせてくれないかね?』
兼成『社会保障を維持するため政府は課税を強化し…政府に集まったおカネはすべて高齢者福祉に行く…消費にはつながらない…そして全て安売りだと…働いても給与から手元に残るおカネはインフレに追いつかない…』
ウェル『ほう』
兼成『するとまず地方経済が衰退…東京に人が集まる…不動産の値段が上がる…海外から安売りだとしても手に入らない…不動産・株式・仮想通貨の値段が上がる…おカネの価値が下がっているから…』
ウェル『資産が高齢者に偏っていればどうなると思うかね?』
兼成『親から資産を受け継げる若者は安全…そうではない若者は東京で疲弊するか地方で衰退するか…地方でフルリモートも起業できるような人でしか機能しないので少なくなる… 若者は1発当てて稼ぐことを目指す』
ウェル『そうなると…社会保障に頼る者…資産を持つ者…社会を不安定にする者が増え…労働で社会を支えようとする者が減ってしまうな』
兼成『そして 今の時代は自己責任と言われるのでこの負のサイクルが増えるかもしれません』
ウェル『兼成 君の意見は面白かったよ ではそうならないようにするには?』
兼成『…まだ』
ウェル『そこに人生の価値が発生するのだよ 常盤君 そして物価と信用サイクルの話を繋げると…』
ウェル『物価が上がれば 中央銀行は金利を上げる つまり信用による支払いが難しくなる そして消費も少なくなる』
兼成『誰かの支払いは 他の誰かの収入だから…』
ウェル『景気は悪くなる 中央銀行は金利を下げる 信用による支払いをまた増やそうとする』
兼成『それが5〜8年の 短期の信用サイクル』
ウェル『そうだ そして次の信用サイクルは前の信用サイクルよりも成長する…借りたおカネも多くなる』
兼成『なぜ?』
ウェル『人間は一度あげた生活水準を下げることができないからだ もっともっととさらにカネを借りて使おうとする』
兼成『人間の性ってやつか』
ウェル『生活水準を景気に合わせて上げたり下げたりするのは現代人に特に求められるスキルだ そう思わないかね? まあ気にしないくらい稼げれば別だろうが』
兼成『でもおカネを貸す方も増やしてしまうんですね』
ウェル『人間は皆 物事がうまくいくと考えがちだからな』
兼成『それが人間の性…』
ウェル 『信用での支払いが繰り返されるとバブルが発生する よければもう少し話そうか』