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エルフの商人  作者: Yuya. S
エルフと経済編
3/18

第3商 "GDPで国の豊かさは測れない"

(夜、兼成はコンビニでお菓子を買っている)

兼成『夜の楽しみといえばこれだよな』

(その時声が聞こえる)

人々『日本人はみんな真面目に働いてるし…コンビニは24時間営業…スーパーも百貨店も定休日なし…なのに1人当たりGDPでイタリアに負けるってヤバくないか?』

人々『どう考えてもおかしいだろ イタリアなんてランチタイムにワイン飲んで夕方には仕事終わらせて 日曜祝日はほとんどの店が閉まるんだぞ!? それでなんで俺たちより稼げるんだよ!?』

兼成(本当にそうなのかな?)

(兼成が家に着く)

兼成『大学で経済を勉強したけど…わからないことが多いな』

(兼成は財布から100円を取り出して賽銭箱に入れる、その音が、朝の静けさの中で響く)

(深呼吸をして、目を閉じ、祈りを捧げる)


兼成(どうか…お客様の笑顔のため… 僕に経済について教えてください)

(その瞬間、目の前に光が閃き、ウェルの姿が現れる、エルフの優雅な姿が、あっという間に部屋の中に浮かび上がる)

(ウェルが胸に手を当ててお辞儀をしている)

ウェル『常盤兼成様 ご利用ありがとうございます』

兼成『こんばんは』

ウェル『こんばんは? そうかここは日本だったな』

兼成『どこか別の場所に?』

ウェル『私は神社にいながら魔法で同時に何十人… 多いときは百人ほどの分身を作って話をしている ただ分身が増えすぎると情報が混雑してしまうのだよ』

兼成『すごい 他にどんな人がウェルの話を聞いてるの?』

ウェル『顧客情報は漏らせないな』

兼成『だよね』

ウェル『今日は経済についてだな』

兼成『一度勉強したんだけど…ウェルの話を聞いたら変わるかもしれないと思って』

ウェル『いい考えだな』

兼成『早速だけど 経済って…人々の生活に必要なモノ・サービスを生産・分配・消費することであってる?』

ウェル『そうだ それを動かすものは何かわかるかね?』


兼成『…おカネ?』

ウェル『正確にいうとカネを使った交換だ 経済を動かすのは”取引”なのだよ』

ウェル『取引とは…契約や合意のもとに行われる交換のこと 経済とは…ただ何億回という取引を合計したものだ』

兼成『確かに 売る人と買う人がいておカネが動く……それの繰り返しか』

ウェル『言い換えるなら 取引とは…貨幣・信用とモノ・サービス・金融資産を交換すること』

兼成『それっておカネは2種類って事だよね』

ウェル『そうだ これはまた別の機会に話そう』

兼成(こういうとこ うまいよな 僕も見習わないと)

ウェル『そして カネの流れで考えるなら 経済はネズミ講のようなものとも言える』

兼成『おいおい それはヤバいって』

ウェル『仕組みの話だ 皆が掌を広げ 上からカネを落とす 当然掌が上にある人間ほど多くのカネをつかめる つまり…』


ウェル『収入を決めるのは社会でのポジション 能力ではないのだよ』

兼成『掌が上にある組織…役職だから稼げると』

ウェル『そして次に参入した者のカネが回ってくることで カネの流れができる 売上や純利益もそういうものだ』

(兼成が首を傾げる)

ウェル『君が私から何かを買ってそれより高い値段で売る…君から買う人間はそれより高い値段で売らなければならない わかるかね?』

兼成『そっか…だからどんどん新規参入者が必要』

ウェル『経済成長とは…人々がより多くのカネを使ってより多くの取引をできるようになるということ わかるかね?』

兼成『なんかインフレと繋がりそうだな』

ウェル『鋭いな それもまた別の機会で』

兼成『でも取引がどうやって経済を動かすんだろ』

ウェル『取引によって 経済を動かす3つの力が生まれる』


ウェル『❶”生産性の向上” これは経済の直線の傾き

❷”短期の信用サイクル” これは5~8年の小さな経済の波

❸”長期の信用サイクル” これは75~100年の大きな経済の波

これら3つを重ねることで経済の状態がわかるのだよ』

兼成『じゃあ 経済の傾きがプラスでも…大きな経済の波がマイナスって場合もあるのか』

ウェル『だから長期的な投資が勧められる そして生産性が長期的に見て一番重要』

兼成『生産とか産出とかって何が違う?』

ウェル『生産とは…原料を元に人工的に作ること』『産出とは…原料になるものが自然の中から出たり 取り出したりすることだ』

兼成『じゃあGDPって…!?』

ウェル『2つある 名目GDPとは…ある国の国内で生産されたモノ・サービスの付加価値の合計』

『GDPの構成要素は4つ

❶消費…家計によるモノ・サービスへの支払い

❷投資…企業によるモノ・サービスへの支払い

❸政府支出…政府によるモノ・サービスへの支払い

❹貿易収支…輸出の収入から輸入の支払いを引いたもの』

兼成『もう1つは?』

『実質GDPとは…物価変動の影響を取り除いたGDP』

兼成『海外にいる日本企業の人間はGDPに含まれない…?』

ウェル『そうなるな それと関連してわかることがある』

兼成『え?』


ウェル『GDPで国の豊かさは測れない』

兼成『じゃあ1人当たりGDPで負けるとかって言うのは』

ウェル『ああ 1人当たりGDPという指標にはカラクリがあるのだよ』

兼成『…!!』

ウェル『例えば イタリアにはヨーロッパ各地から労働者が集まってくる… だが彼らがイタリアで働いた場合… GDPはイタリアに加算されるが 人口は元いた国で計算される つまり…』

兼成『イタリアのGDPが大きくなるけど 人口が加算されないから1人当たりGDPが高くなる』

ウェル『そうだ この1人当たりGDPという指標はヨーロッパ人のために作られたようなものだ そして私のイタリア人の友人は常に言ってる』

(ウェルは両手をあげてイタリア人の友人のマネをする)

ウェル『ヨーロッパじゃトイレは汚くて不便だが有料だ でも日本じゃ綺麗なトイレが無料で使える 日本スバラシイ!! ってな』

兼成『……!! そうか!!』


ウェル『当然料金はGDPに加算される 有料にしてるヨーロッパのGDPが高くなり 無料にしてる日本のGDPが低くなる傾向にあるのだよ』

兼成『でも 何でもかんでも無料っていい事なのか?』

ウェル『それはこれからの歴史が証明するはずだ』

兼成『ランチタイムにワイン飲んで夕方には仕事終わらせて 日曜祝日はほとんどの店が閉まるってのも』

ウェル『それはイタリア全体の話ではないな そういうイタリア人もいるってだけ だがそれは日本人も同じ そう思わないかね?』

兼成『そう思うと日本は…』

ウェル『ゴミをみんながポイ捨てしなくなると清掃員が必要なくなる…大盛りおかわりが無料で食べられるようになる…治安がいいから防犯グッズを買わなくなる 全てGDPは下がる そしてある仮説が立つ』


ウェル『日本のGDPの成長額は❸政府支出…その中でも社会保障支出の増加額ではないか』

兼成『え それって…』

(ウェルが部屋の時計を見る)

ウェル『おや もう時間だ』

(ウェルが胸に手を当ててお辞儀をしている)

ウェル『またの100円の賽銭 心よりお待ちしております』

(お賽銭箱が映る、光っている)

兼成『今日もありがとうございます』

ウェル『おい その手に持ってるの』

兼成『グミ組の新発売のグミですよ いります?』

ウェル『ああ 新発売ってワクワクするよな』



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