第2商 "5箇条"
(早朝の静けさが部屋に広がる中、スマホのアラームが鳴り、兼成はベッドの上で目を覚ます、時計の針が午前5時を指している)
(兼成は布団を畳んで枕の上に置く)
(兼成はポットでお湯を沸かし始める)
(兼成はドライヤーをし、その後に歯を磨く、そしてヒゲを剃る)
(兼成はガラスの丸みを帯びたマグカップにペットボトルの水を入れて飲む)
(兼成はそのマグカップにコーヒーを入れる)
(兼成はそのコーヒーを持ってパソコンの元へ)
(兼成はパソコンで2つのブラウザを開いている、右側で何かをまとめている)
(ふと目に入るのは、昨日ウェルから渡された小さな木製の賽銭箱が、心の中で迷いながらも、決心したように立ち上がる)
兼成『よし…とりあえず学んでみるか』
(兼成は財布から100円を取り出して賽銭箱に入れる、その音が、朝の静けさの中で響く)
(深呼吸をして、目を閉じ、祈りを捧げる)
兼成(どうか…お客様の笑顔のため… 僕におカネとの向き合い方を教えてください)
(その瞬間、目の前に光が閃き、ウェルの姿が現れる、エルフの優雅な姿が、あっという間に部屋の中に浮かび上がる)
(兼成はびっくりしながら椅子をくるっとウェルの方へ向ける)
兼成『うおっ』
(ウェルが胸に手を当ててお辞儀をしている)
ウェル(笑みを浮かべて)『常盤兼成様 ご利用ありがとうございます』
兼成『なんで僕の名前…』
ウェル『私はエルフだ それくらい分かるのだよ』
兼成『僕の個人情報…』
ウェル『それより 実際に行動するとは…君はなかなかやるじゃないか』
兼成『そりゃやるでしょ』
ウェル『いや 90%の人間は行動できない… 人間は自分のよくわからないものを敵だとみなす生き物なのだよ… カネがかかるものには余計に手を出さない』
兼成『でもペーペーの僕に必要なことは… 自分の頭で考えずに 先人達から学び続けることだけだからなあ』
ウェル『素晴らしい カネとの向き合い方と言ったな… そうだ!! 今紙幣を持っているかい?』
(兼成は財布から1万円を取り出して机に置く)
兼成『ちょうど昨日 おろしたばっかり』
ウェル『そうか…じゃあ昨日の復習だ』
ウェル『その1万円札を破れるかね?』
(兼成は少し驚き、目の前の1万円札を見つめる、ウェルはその様子を見守る)
兼成『できるわけないでしょ…あなたも言ってた』
ウェル『そうだ カネとは他の誰かを信じる気持ち ただ君の持っているそれは紙だ』
(ウェルがその1万円札を手に取り、静かに語り始める)
ウェル『銀行口座の数字達も同じだ… 君の目の前に誰かがいて…その紙その数字達に価値があると信じた瞬間にだけ価値が発生する それがカネなのだよ』
ウェル『ちなみにこの紙の製造コストは1枚約20.4円だ… 破れた面積の3分の2以上が使用できる状態の場合は全額として引き換えてもらえる』
(ウェルがその1万円札を机に戻す)
ウェル『このカネは使う誰かがいなければただの紙に過ぎない… 破れなければ君の人生はカネに支配されている…わかるかね?』
(ウェルは兼成に背を向けて歩き始める)
ウェル『カネ持ちとは…単に目的を達成するためのおカネをたくさん動かせる者のことだ』『他の誰かを感動させたいという目的のために活動し おカネをもらい… 自然とその過程でおカネが増えていくだけの話なのだよ』
ウェル『もちろん…自分のために知識のない者からカネをたくさん集める活動も存在する… それは夢を売っているんだ… ただウソをつけば詐欺になる』
兼成『じゃあ 他の誰かの目的のためにおカネをやり取りするのはアリなのか?』
ウェル『それが労働や投資につながる… そしてこうして現金を持つということは日本円という資産を持つことに他ならない』
(ウェルは兼成に向き直り、静かに語り始める)
ウェル『今から君にカネの5箇条を伝える…先人達の知恵なのだよ』
(ウェルが指で1を示す)
ウェル『❶”カネなんて汚いとカネの悪口を言わない”』
(ウェルは歩き始める)
ウェル『カネの悪口を言っている者に限って… 必要なときにカネが手に入らないものだ… カネじゃ買えないものがあるのは確かだが… ほとんどの物事にはカネが必要なんだよ それに…』
(ウェルが両手を顔の横で広げる)
ウェル『社会なんて…企業なんて…と批判している者が助けを求める時…誰が手を差し伸べる?』『カネを否定する者には…必ずその代償が待っている そう思わないかね?』
(ウェルが指で2を示す)
ウェル『❷”値段ではなく価値を考える” カネを動かせる者は…10円単位で価値を考える… 株式の場合… 株価そのものではなく 企業価値を見極めることが重要なのだよ』
兼成『価値って何かよくわからないな』
ウェル『価値の源泉は差異…値段との違いに対して心が動くかどうか』
兼成『例えば?』
(ウェルが棚の文庫本を手に取る)
ウェル『ここに1冊700円の文庫本がある 書いた人間…編集した人間…たくさんの人間が関わる…君はこの本の内容にいくら出せると思った?』
兼成『700円…?』
ウェル『それが値段で考えるということだ…700円と言われたから700円だと考える…』
ウェル『価値で考えるとは…本を読んでみてこの本は1000円出してもいいかなと考えたとする…そして値段が700円…君は安いと感じるだろう…その差異が価値 わかるかね?』
兼成(そんなの考えたことなかった…)
ウェル『他の誰かが提供したもの…その背景…それを想像できない者は値段だけ見て生きていくことになる…一生な』
(ウェルがメガネをカチャッとする)
ウェル『いくら出したいかを想像し 価値を判断するには知識と経験が必要だ… 知識があれば想像を膨らませられる…経験は最高のものと最低のもの両方に自分でカネを出して触れることが大切だ』
兼成(ピンキリを知れってやつか)
ウェル『それにカネを出したものをとことん使いこなそうとすることが必要だ… だからカネを出せない者ほど…カネを出してから使いこなそうとしない者ほど…価値で考えることが難しくなっていく そう思わないかね?』
(ウェルが指で3を示す)
ウェル『❸”謎の清貧思想を持たない” 清く貧しく…そんなものは幻想だ!!!』
(ウェルが歩き始める)
ウェル『貧しいとは余裕がないことだ… おカネに余裕がない…時間に余裕がない…心に余裕がない…それが貧しさなのだよ』
(ウェルが本を棚に戻す)
ウェル『おカネ…時間…心…人生は貧しさを抱えてスタートするものだ…これらを超えて初めて清い状態になれる』
(ウェルが兼成へ向かって歩いてくる)
ウェル『貧しくない人間は… いくらおカネを稼げなくなっても余裕がある… いくら忙しくても余裕がある… いくら辛くても余裕がある… これが清い』
兼成『でもそんなことって…』
ウェル『他の誰かを感動させたいという目的とそれを曲げない信念…ここからくるものだ』
(ウェルが指で4を示す)
ウェル『❹”常に学び 自己投資する” 投資投資という前にまずはここからだ… 人生で一番長く保有する資産は自分自身だからな』
ウェル『人間の資産価値は年々減っていく… 生まれた時には最大…死ぬ時には最小になる そして他の誰かを感動させようとしなければ 資産価値は指数関数的に減っていく つまり…』
兼成『生きるってことは 他の誰かの未来を作ること』
ウェル『私はそう考える そして…自分の資産価値が減らない状態で 他者の資産価値が急激に減っていくため… 他者よりも価値があると思われる わかるかね?』
兼成『そのためにあらゆる事を学んで自己投資を続ける…それができないと貧しいにつながるかもしれないのか』
ウェル『ちなみに教養とは…知識と経験から生まれる心の余裕の事だ… 心の余裕が生まれるなら何について知ろうとしてもいい… 古代ギリシャ人は夜の営みから教養を得ていたような…』
兼成『じゃあ僕はカードゲームとかでもいいのかな?』
ウェル『ああ ただ思考するには歴史・アート・哲学・経済などの知識が必要だと思わないかね? そして…一番大事な事』
(ウェルが指で5を示す)
ウェル『❺”とにかく体力をつける” 最も大事なステータスは体力だ どんなに知識があっても体力がなければ行動できない』
(ウェルが歩き始める)
ウェル『体力は年々減っていく 若い頃から少しずつでも投資しておくべきだ そして人生とは誰かの未来を作る戦い…』
(ウェルが振り返る)
ウェル『勝てる人間とは最後まで壊れないで立っている人間のことだ 叩いても壊れない人間には誰も勝てない 投資のリスク管理も同じだ』
(ウェルが兼成に向かって歩く)
ウェル『特に変化の速い現代では…学び続けられる体力を持っていなければ生き残れない そう思わないかね?』
(ウェルが兼成の前で止まる)
ウェル『仕事のできる人間は体調管理をしっかりやっている? 違う!!』
『多少の体調不良でも仕事を休んではならない? 違う!!』
『しょっちゅう体調不良になる人間は仕事ができない? 違う!!』
『体調管理をせずとも体調不良にならない体力を持つ人間が一定数存在し!! そいつらが仕事をぶん回しているだけだ!!!』
(ウェルがメガネをカチャッとする)
ウェル『これが先人達の言葉だ わかるかね?』
兼成『血肉にします』
(兼成が机の1万円札を見つめる)
〜過去シーンが流れる〜
(大学時代、研究室、教授が目の前に座っている)
教授『”分かる”とは”変わる”ことですよ 常盤君… 行動が変わるかどうか』
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(兼成が机の1万円札を手に取る)
(ビリッ!! 1万円札を破る)
兼成『アァップデェートォ!!!』
兼成(とりあえず今までの考えを捨てろ…!! 不快だったとしても… 一挙手一投足をアップデートしないと!!)
ウェル『流石だな また明日会おう』
(ウェルが胸に手を当ててお辞儀をしている)
ウェル『またの100円の賽銭 心よりお待ちしております』
(お賽銭箱が映る、光っている)
兼成『ねえウェルさん…』
ウェル『何だ』
兼成『これ 3分の2以上残ってるよね?』
ウェル『知らん 銀行に行ってプロに聞け』