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エルフの商人  作者: Yuya. S
エルフと経済編
1/18

第1商 "このペン1つ"

かつて魔法使いとエルフは互いを倒し 魔法を奪い合っていた

激戦の果て すべての魔法は1人のエルフのもとへと収束

魔法使いは人間となり 食べねば生きられぬ存在に

エルフは 人々が皆で食物を作り 分かち合う道を示す

敵対していた人間とエルフが手を取り合い 人々が互いに信じ合える未来を目指す

エルフは言った『さあ みんなで一緒にパンを食べよう』


〜2025年 日本〜

ナレーション『この日本に人知れず佇む神秘の神社がある 得経山(えるふやま)神社』

(視界いっぱいに広がる青空。その下には、堂々とした富士山がそびえ立つ、白い雲がその裾を流れ、陽の光を浴びた稜線がくっきりと浮かび上がる)

(富士山の広大な裾野をなぞるように、緑深い山々へと視点が移る、幾重にも重なる尾根が、まるで波のように広がっている)

(さらにズームイン、木々の隙間に一本の細い山道が見える。道はくねくねと蛇行しながら森の奥へと続いている。その先には、ぽつんと佇む赤い鳥居)

ナレーション『富士山から少し離れた山の中 険しい道を進んだ先にひっそりとその姿を見せる』

(鳥居の向こうには、果てしなく続く石段、視線をたどると、霧の中にぼんやりと姿を現す神社、歴史を感じさせる木造の社殿が、ひっそりと山の静寂に包まれている…)

ナレーション『ここは日本一の金運神社とも呼ばれ 国内外から多くの者が訪れる 果たして訪れる者は何を得るのか』

(階段を見上げるスーツ姿の男性がいる)

(長く続く石段を見上げる、両脇に生い茂る木々が風に揺れ、葉擦れの音が静寂の中に響く、鳥居の赤が、深い緑の中でひときわ映えている)


(男性が息を吐きながら階段の一歩目を踏み出す、ゆっくりと登り始める)

常盤 兼成(ときわ かねなり)、アセットマネジメント社員、新卒」

兼成(僕の名前は常盤 兼成(ときわ かねなり))

(視線を前に向け、一定のペースで足を進める、少しずつ標高が上がり、遠くの景色が広がっていく)

兼成(今年からアセットマネジメントで働いてる 彼女は…まあ できたら欲しい)

(スーツの袖をまくり、額の汗を軽く拭う、少し息が上がってきたが、歩調は崩さない)

兼成(コースはオープン 入社時の配属部署は決まってなくて 入社後数年間は複数の領域を経験する予定だ)

(石段を踏みしめながら、社の屋根がわずかに見え始める、だが、まだ道のりは長い)

兼成(金融というのは…おカネを回せる方からおカネが必要な方へ おカネを回すこと)

(歩調を崩さず登っていく)

兼成(投資信託(ファンド)というのは… 色んな方々から回していただいたおカネを集め… 1つの大きなおカネとして 資産に投資・運用していく仕組みだ)

(手すりに軽く触れながら、一段一段確実に登る、視線は前を向きながらも、口元に小さく笑みを浮かべる)

兼成(お客様には国内外の個人や機関投資家がいる… 機関投資家というのは 年金基金 政府や中央銀行 銀行や保険会社みたいな たくさんのおカネを運用する方々のことだ)

(ふと立ち止まり振り返る、遠くに街並みが見える、ビル群の間を光が反射し、まるで別世界のように感じる)


兼成『僕は お客様の仕事 経済 そしておカネについて もっと知っていかないといけない』

(再び前を向き歩を進める、社の姿がはっきりと見え始める、風が吹き、額の汗を少しだけ冷ましていく)

兼成(上司に相談したら この場所を勧めてもらった)

(ジャケットの袖を軽く引っ張る、革靴のつま先を見ながら、小さく笑う)

兼成『それと ここへ来るときは 仕事をするときの服装で行けと言われた 仕事の気持ちで行くべき場所だかららしい』

(常盤 兼成が最後の石段を登り切る、境内には厳かな空気が漂い、木々に囲まれた静寂が心地よい、社殿の朱色が陽光を浴びて、ほんのりと輝いている)

(鳥居をくぐり、手水舎で手を清める、水の冷たさが心を引き締めるように感じる)

(拝殿の前へと歩み寄り、ポケットから財布を取り出す、しばらく迷うように硬貨を指で弾きながら考える)

兼成『…1,000円とかの方がいいのか?』

(小銭入れを覗き込み、少し悩むが、結局1,000円札を取り出し、お賽銭箱へと入れる)

(軽く息を整え、深く一礼、目を閉じて、手を合わせる。)

兼成(お願いします もっと稼げるようになりたいです…そして できれば 彼女も…)

(静寂が広がる、鳥のさえずりすら遠くに感じるほどの静けさ)

?『ならば 学べ』

(ハッとして目を開けて振り返る)

兼成『え?』


(振り返ると、そこには一人のエルフが立っていた、陽光を背に受け、神秘的な雰囲気を纏っている、風が髪を揺らし、その耳は人間よりも長く鋭く尖っていた)

兼成(驚き飛び上がって)『エルフ!!!!』


(兼成は目を瞬かせながら、エルフをじっと見つめる、頭が追いつかず、思わずもう一度周囲を見回す、神社の境内は静かで、他に人の気配はない)

兼成『……え? え? なんか すごく普通に話しかけられたけど 誰? コスプレ? それとも…何かのキャンペーン?』

(エルフは兼成をじっと見つめたまま、口の端を少しだけ上げる)

「ウェル、得経山(えるふやま)神社のご神体、エルフ」

ウェル『私はウェル この神社に祀られている者だ』

(エルフは兼成をじっと見つめたまま、口の端を少しだけ上げる)

ウェル『君はさっき 何を願った?』

兼成『え? いや… まあ 仕事でもっと稼ぎたいとか… あと 彼女が欲しいとか…』

(ウェルは軽く頷き、静かに歩を進める、境内の玉砂利を踏む音が心地よく響く)

ウェル『愚かだな 学べ』

兼成『さっきもそれ言ってたけど 何を?』

ウェル『カネとは何か…世界とは何か…』

(エルフが兼成の横をすり抜け、拝殿の方へ視線を向ける)

ウェル『君は さっき お賽銭を入れる時に迷ったな』

兼成『え? いや まあ… 1,000円とかの方がご利益あるのかなって…』

(エルフは小さく笑う)

ウェル『フッ 愚かだな 金額に意味はない 重要なのは 誰にどう笑顔になってほしいかを願う それだけだ』

(エルフが静かに手を伸ばし、兼成の胸ポケットからペンを取り出す、細い指がペンをくるくると回しながら、ウェルはゆっくりと口を開いた)


ウェル『このペン1つに…どれだけの者が関わっているか… わかるかね?』

(兼成は思わずペンを見つめる、ただの文房具、しかし、エルフの問いに、急にそれが別のものに思えてくる)

ウェル『どれだけの時が 積み重なっているのだろうか…』

(エルフはペンを宙に掲げ、境内の光にかざす、その目は遠い過去を見つめるよう)

ウェル『どんな顔をして どんな思いで この世界を作っているのだろうか…』

(境内を吹き抜ける風が、木々の葉を揺らす、兼成はごくりと息を飲んだ)

ウェル『どれほどの者が この道を歩き 星となり消えたのだろうか…』

(エルフはペンをゆっくりと兼成へと返す、彼の手の中で、そのペンは今までとまったく違う重みを持つように感じられた)

ウェル『自分の持ち物… 口にする食料… まず身の回りの1つを見て考えてみるがいい… 何社が関わり…何人が関わり…どれほどの時間が費やされ… どんな顔で働き… その活動がいくらで動いているのか…』


(兼成は自分の手元を見る、腕時計、スマートフォン、スーツ、ふと、昨日の夜に食べたコンビニの弁当が頭をよぎる)

兼成(どれほどの人々が関わっていたのかなんて… ちゃんと考えたこともなかった)

ウェル『それを1つ1つ… 少しずつ…時間があるときに考え 記録し まとめる… すべて合わせた時…』

(ウェルが両手を広げる)

ウェル『君の目の前に広がるこの環境に 何社が関わり 何人が関わり どれほどの時間が積み重なり どんな思いで作られたのかが 見えてくるだろう』

(ウェルは境内をゆっくりと歩く、踏みしめる玉砂利の音が、兼成の鼓動と重なって響いた)

ウェル『それを知ろうともしない若者… それを説明できずただ”恵まれている”としか言えない老いた者… そういう者たちの人生も…言葉も…軽い』

(兼成は息を呑む、自分は今まで、そんなことを考えたことがあっただろうか)

ウェル『覚悟もなく…それを知る努力もせず… 何者かになったつもりで ”私を認めてくれ” ”稼ぎたい”などと口にしたところで… 誰の心にも響きはしない…そう思わないかね?』

(兼成はギュッとペンを握る、言い返そうとして、言葉が出なかった、まるで、何か大きなものを突きつけられたような気分だった)

ウェル『カネは… 他の誰かがいなければ… カネにはならないのだよ』

(ウェルが兼成の胸に手を当てる)


ウェル『カネとは 他の誰かを信じる気持ち… わかるかね?』

(ウェルが兼成をまっすぐに見つめる、その瞳には、深い森のような静けさがあった)

(ウェルは懐から、小さな木製の賽銭箱を取り出し、兼成の手のひらにそっと乗せる、掌サイズのそれは、どこか古風な彫刻が施されていた)

ウェル『これを家に飾るがいい… そして100円を入れてお祈りすれば… 私が魔法で現れる』

兼成『まずはあなたを信じて学べと』

ウェル『私は人間の始まりからこの世界を見てきた… 君の先人達の知恵を授けよう』

(兼成は眉をひそめながら、賽銭箱をじっと見つめる)

兼成『…貯金箱みたいな感じか?』

(ウェルはクスッと笑い、首を横に振る)

ウェル『いや転送魔法だ 皆の捧げた100円はそのまま私の元へと届く…世界中のどこにいようとね』

兼成『……いいビジネスだな』



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