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第24話 魔王とコアの話

「これが……魔王のコアですか」


「あ、触らないでね〜危険だよ〜ん。正確にはコアのカ・ケ・ラ。それも小粒のね」


 第十三騎士団は他と違って少数精鋭だが、表立って戦わない裏方もいるのが特徴だ。

 武器や防具、魔道具の管理や研究を受け持つのが、この痩せた眼鏡の男……ドクだ。

 本名は教えて貰えなかった。

 バサバサの髪の毛を一括りにしていて、作業着の上に白衣を着ている不思議な出立ちだ。


 アルフレッドの目線の先には、布の上に禍々しい黒いカケラ。

 指先ほどのカケラの周囲の空間が不思議と暗く見える。

 キングオークの死骸から見つかったものだ。


「とても素手で触る気にはなりませんよ……」


 とは言いつつ、実物を見るのはアルフレッドにとっては初めてなのでマジマジと見つめる。



 このコアの元の持ち主、魔王……は二百年も前に勇者イーロスによって打ち滅ぼされた。

 それにより魔物達は統制を失い、世界には平和が訪れる筈だった。

 

 しかし、そのコアを国に持ち帰る途中に惨劇は起きた。

 

 勇者がコアの悪意と害意の邪悪な力に精神を汚染され、仲間達を皆殺しにしたのだ。

 女神ステラエの加護を持つ聖女ローサがその死の間際、最期の力を振り絞ってコアごと勇者を殺した事で、それ以上の被害を辛くも防ぐ事に成功した。

 イーロスとローサは恋人同士だった事から、悲恋として世界に広く伝えられている有名な物語だ。

 

 ローサの命を賭した魔法で、魔王のコアは砕けて世界中に散らばった。

 魔物がそのカケラを見つけて体内に入れる事で強力な個体になる事があるが、カケラの大きさによっては、一匹の魔物を倒す為に何千という兵力を必要とする事すらある……らしい。

 


「人間の体内に入るとどうなるんですか?」


 アルフレッドはふと気になってドクに聞いてみる。


「あはは!みんなそれ聞くよね〜。精神が汚染されて暴れるから討伐対象になりま〜す。

 やってみる?」


「……結構です」


 アルフレッドはコアのカケラから距離を取る。

 怖がってばかりいる訳にもいかないのだが……。

 なんだか嫌な感じがする。心臓が冷たくなる様な……。

 凶暴な気持ちが湧き上がる様な……。

 

 魔物達は新たな王を求めている。新たな魔王はこのコアをなるべく多く体内に持つモノがなるだろう事は確実だ。

 第十三騎士団の本当の任務は、このコアのカケラの収集にあると言っても過言では無い。


「元のコアはどれくらい大きいんでしょうね」


「ね〜。気になるよね〜」


「……既に集まってるカケラから推測出来ないんですか?」


「形状がね〜、個体とは限らないのよ〜。液体だったり?物と同化してたり?」


「はぁ……なるほど。興味深いですが、また今度で」


 ドクはまだ話したそうにしていたが、あんまりゆっくり出来ないので適当に切り上げる。

 外に出ると、そこにはハロルド副団長がいた。


「真面目だねぇ、おぼっちゃまは。

 学園なんてもっとガッツリ休んじゃえば良いのに」


「最低限の交友関係は保たないといけませんから……」


「婚約者も学園にいるんだっけ?俺も仕事ちょっと休むから学園超絶久しぶりに寄ろうかな?」


「勘弁してくださいよ……」


 このハーフエルフの優男は、てっきり年若い人間を揶揄っているのだと思いきや、本気で着いてくる気の様だ。

 こう見えて何百年も生きているらしいのに、落ち着きがない。


「良いじゃん。紹介してよ。

 なんか地味な子なんだって?」


「――最近は眼鏡をいつも掛けてるみたいなんですよ。

 でも、地味って訳じゃ……」


 眼鏡を掛けていなければかなり目立つ顔立ちだと思う。隠しているのは勿体無い気もするし、自分がいない時に変に注目を浴びないのは安心出来る気も……。


「へぇ……庇うじゃん。女に興味ねーって顔してるのに」


 ハロルドはアルフレッドの婚約者に興味を持った様だ。

 面倒に思いつつも無碍に出来ない程度には存在する上下関係。


「スカーレットをあまり揶揄わない様にしてください。

 それに婚約者だけど本当に結婚するかは……」


「そうそう、スカーレットちゃんね。良いから良いから。あー、どんな子だろ?会うの超楽しみ!」


 アルフレッドは軽い副隊長の態度にウンザリしていたが、まだ新参者なので強くは逆らえない。


「はぁ…………」


 機嫌の良さそうなハロルドの後ろで、アルフレッドは深い深いため息を吐いた。


 

 


 

 

 


 


 


 

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