プロローグ
自殺予定日
『ゆう』は小さいころから不精だった。
不精少女は小学生の時・・・死を考える。
不精少女は愛されていない。
「わたしが死んでも誰も悲しまない。」
ずっと、そう思っていた。
不精少女、故に片づけは一人でできない。
だから、親も兄弟もそこはやってくれた。
なぜ、不精少女になったかというと・・・
母親の些細ない一言だった。
「あんたがやったら明日になる。」
不精少女がお手伝いを申し出ても母は拒絶した。
多分、無意識。
父親なんてもっと最悪な人だ。
小学生の不精少女にこう言った。
「お父さんの頭の中は、ユリが99%、ナオが1%、お前は0%。ショウも0%。」
子ども心に気づついた。
それは深い深い傷。
不精少女は『ゆう』
ユリととても似た名前。
ある日、寝ぼけた父は・・・
「ユリ、リモコン取って。」
『ゆう』は驚いたが素直にリモコンを渡した。
『ユリって誰?』
子ども心に疑問がわいた。
両祖母だって酷い。
父方はナオが大好き。
ナオにだけ、毎年大きなぬいぐるみのプレゼント。
ナオにだけ、お小遣い。
母方はショウが大好き。
兄弟喧嘩をすれば、ショウを庇う。
完全にショウが悪くても・・・
「ショウはまだわからないんだ。」
と、言う。
確かに、『ゆう』より頭の回転が遅いけど、それくらいわかるだろう。
クリスマスプレゼントなんて桁違い。
「なんで、ショウだけ高いの?」
「男だから。位牌持ちだから。」
いつも、そう言った。
これも多分無意識。
伯父は、知ってか知らずか・・・『ゆう』にだけ、会うたびにお小遣いをくれた。
祖母のお小遣いとは桁違いだけど・・・『ゆう』はスゴく嬉しかった。
死に対する憧れは、心の奥底にあり、事あるごとに強くなる。
一応、何かに打ち込んでも・・・
苦しくなれば・・・
「どうせ死ぬし・・・。」
と、投げ出す。
死にたいくせに、すぐは死なない。
嬉しいことがあれば忘れた。一瞬。
不精少女、宿題もしない・・・。
忘れ物1位。
小学校の通信簿には・・・
「やればできる子」
と、毎年書いてあった。
でも、やらない。
ある日、思い立つ・・・。
自殺予定日を決めた。
二十歳
『二十歳の誕生日に死のう。』
『突然死がいいな~、誰にも気づかれないようにしよう。』
ホントは死にたいのに・・・前向きを装って生活するようになる。
あの日、までは。