私の聖女様
格好良い婆ちゃんは、素敵だと思っています。
愛を込めて婆と呼んでおります。
2/20ローファンタジーの意味を勘違いしてました。
申し訳ないのですが、ハイファンタジーに変更します。
「お前がパーティーに参加できる訳ないでしょ!」
「このボロ雑巾が! お前は掃除でもしておいで」
「行ったって、どうせ選らばれる訳がないのだから。無駄な期待はするんじゃない」
そう言い放つのと同時に、義母と義姉達は準備された馬車で邸を後にした。
「ああ、羨ましい。一度で良いからお城に行ってみたい。そして………」
今日は王宮の舞踏会。
どうやらお城で、王子の花嫁探しのパーティーがあるらしい。
この家は数年前に、当主のサミュエル・キリアン伯爵が貿易船ごと行方不明になっていた。
現在は義母の伯爵夫人アクアリネが事業を取り仕切っているが、高飛車な性格と偏見の強さから下降の一途を辿っていた。
頭は良いのだが、客商売に向いていないようだ。
そしてサミュエルが消息不明になってからは、前妻の娘であるアンヌマリーを使用人とし貶めた。
「今の邸には、余分なお金等ないのだから」と言って、アンヌマリー1人に全ての家事をさせたのだ。
勿論お嬢様のアンヌマリーに、家事仕事等出来る筈がない。
最初は定年間近のメイドを安く雇い、アンヌマリーに家事を仕込ませ、覚えればそのメイドも解雇した。
正当な後継ぎ娘に何やってるんだとの話だが、義母なりの理屈もあるらしく。
「アンヌマリーはこの家を継ぐので婚期は何とでもなるが、連れ子の2人は適齢期に嫁げるように支援している。お荷物にならないうように努力している」と言う。
アンヌマリーが使用人をしていることは、醜聞になる為なるべく内緒にはしているが、それを知る者も変に義母が開き直ることを恐れきつく言えずに静観していた。
当主不在の今、成人までの子の決定権は義母アクアリネが握る。亡き?父親に代わり娘に責任を取らせたと言えば、娼館や好色家に売り払われることも過言ではないからだ。
それを思うと家の手伝いをするのは当たり前と言われれば、買い出しをさせるくらいは良いかと思えてくる。
勿論そんな手伝い程度ではないのだが。
そんな感じで、項垂れて城に行く馬車を見送るアンヌマリーと、
彼女に声を掛ける通りがかりの3人の婆さん。
「ちょっと、あんた泣いてるのかい?」
「いえ、あの……」
「あんた1人だけ置かれたのかい?」
「まあ、はい。そうですね」
「もしかして、あいつら継母と継子かい? どの時代も世知辛いねえ。金ぴかに着飾って。それに比べてあんたの服、向こうに透けて見えそうな薄さだね。動きやすいだろうけど、人前だと心許ないねえ。いくらエプロンしてるからって」
そう彼女のお仕着せは、何年も着ている年代物。
他の使用人の服とて、着古しているので同じような物だった。
止まらない3人の婆さんは、好き勝手に話し掛ける。
遠慮してちゃ、損とばかりに。
そう3人は貴族ではない。それどころか、最近日本から来た商売人の転移者だった。
今でこそ寂れたシャッター商店街だが、若い時は栄華を誇った超老舗店の婦人会役員達である。
1人目:裁縫のお竜(72歳)。
界隈では言わずと知れた呉服屋の女主人。
一度見れば、どんな和洋服も縫い合わせる。
簡易ミシンと、裁縫道具は常備している。
着付け上等である。
衣装は加賀友禅の薄黄で、先端には紫色が染色されている。柄は色とりどりの小さい牡丹の着物。帯も花模様入りのベージュ。
白足袋に薄紫の草履。鼻緒はピンクで小花が右寄りで描かれている。荷物は普通の花柄風呂敷に入れている。
※加賀友禅は、加賀五彩と呼ばれる「臙脂・藍・黄土・草・古代紫」の5色を基本に加賀友禅作家が独自の色合いを表現している。
2人目:中古自動車ディーラーの銀子(75歳)。
若い時に亡き夫とヤンチャして、暴れまわった危険人物。巣鴨のゴット姉ちゃんの威圧入り三白眼は、今だ健在である。
正規の車検から、違法改造まで何でもござれ。
溶接作業は神業。愛用のゴーグルと(バッテリー充電式)溶接道具等は、背中のリュックに入っている。
衣装はティーシャツにレザージャケットを羽織る。下は紺のジーンズ。編み上げブーツ装着。サングラスは額にかけっぱなし。
3人目:元カネ◯ー化粧品販売店の花子(68歳)
若者から年寄りまで、化粧品知識とメイクテクで顧客が多い。
最近は自己のメイクアップ動画でバズり、登録100万人を越えチャンネル登録の広告収入で生活していた。
趣味で特殊メイク教室に通い、シリコン製のマスクも作り出し売り出すことも考えていた。
メイクアップ道具は大きい鞄の中に常備。
衣装はキッチンメイド風。
化粧をした花子は、メイクで40代そこそこのメイドに見える。
秘訣はシワをテーピングして、伸ばすことだ。
その為にその部分を隠す、つけ毛(エクステとかつら等)必須。
この3人に目をつけられたら最後、圧に負け洗いざらい話さねばならなくなった醜聞……………。
なのだが、舞踏会に行けなかったアンヌマリーは、今まで話し相手もいなかったので、つい楽しくなって話まくった。
「ええーと、ですね。…………………と言う訳で、かくかくしかじかなんですよ。てへっ」
「ほうほう。今夜で」
「やるじゃないか、お前さん」
「まあ、憧れるわよね」
彼女のやりたいことは解った。
「そんじゃあ一先ず、準備しようかね」と、立ち上がる3婆達。
「ええー(いったい何を)?」
と疑問のアンヌマリーは、小首を傾げた。
「ちょいとアンヌや。ドレスの見本見せとくれ、後はあんたの好み聞かせておくれよ」と、お竜。
「えーと、お義姉さまのドレスで良いですか? 私は幼い時のドレスも売られてしまってないんです。後は私はレースが好きですね。色は青系統が好きです」
何て言いながら、義姉の部屋へ案内する彼女。
何だか不思議ねと思いながらも、父が戻らなくなってから外出は食事の買い出しだけで、家族以外との他者とは殆ど接触もなかった彼女。
お婆ちゃんって、こんなものかと危機意識が薄い。
それを見て、言った方のお竜が苦言を呈する。
「アンヌ駄目じゃないか! ちょっとは人を疑わないと。わたしらが強盗とか、悪い奴だったらどうするんだい?」
理不尽は百も承知で、言い募るお竜。
アンヌマリーは可愛く笑った。
「強盗は、悩みなんて聞いてくれませんよ」
「ぐぬぬ」と唸るお竜。
可愛いじゃないか、まったくもう。
最高の逸品を作ってやるわよと、頬を染めるのだった。
そう思いながら、義姉の部屋に到着。
アンヌマリーのサイズを計り義姉のドレスをばらしながら、フリルやレースを縫い付けて、全く別物の素敵ドレスが完成した。
時間にして20分程度。
「まあ、なんて素敵なんでしょう!」
無邪気に喜ぶアンヌマリーに、お竜は素早く着用させる。
「まあ、良いわね」と満足そうに頷き、練り香水を首元に塗り込んだ。
「良い香り」
「そうだろうとも。良い物だからね。特別だよ」
「ありがとうございます」
アンヌマリーの微笑みに腰砕けるお竜は、孫にも衣装だねとアンヌマリーには解らぬ言葉でデレていた。
「時間ないんだから、早くこっちにおいで」
そう言うのは、花子だ。
銀子も、まともな靴もないんだろと言って、アンヌマリーの靴を脱がせた。
「若いってそれだけで尊いわね。余計な(テーピング)物が要らないんだもの。素材を活かし、いざメイクよ!」
鞄からメイク道具を取り出し、化粧水・乳液・下地を塗り、ファンデーション、チークやアイシャドウ、マスカラ、口紅で仕上げていく。
この世界にない化粧品は、彼女を大変身させた。
「わーすごい。私じゃないみたい。なんて綺麗なの?」
アンヌマリーは嬉しくて、鏡を見ながらくるくるその場を回った。
花子はご機嫌で伝えた。
「これはアンヌの元が良いからさ。私はほとんど手を加えていない。整えた程度だ。普段から化粧に縁がないから驚いただけだよ。それに……あんただって気づかれない方が、いろいろ都合が良いだろ? 仕上げだ!」
そう言ってアンヌマリーに、ゴールドプラチナのロングウィッグを被せた。
「これで滅多に気づかれないだろうね。うん。似合う、似合う」
「本当に別人ですね。私のお姉さんと言っても通じますよ。お掃除の邪魔になるから、肩までしか伸ばせなかった髪が腰まである。うぐっ、嬉しい、です。ふぇん」
思わず涙ぐむアンヌマリー。
それを見て頷くお竜と花子。
解るよ。だって髪は女の命だからね。
自分の意思で短いなら良いけど、この時代は長い方が好まれていて、尚且つこの子もそれを望んでいる。
「花子、あんた良い腕してるじゃないか」
「それほどでもないよ。本当はこの子の亜麻色を活かしたかったけど、ばれちゃ面倒だからね。今回はこの色さ」
ライバルを認めあうように、握手を交わす二人。
そこに、大声で叫ぶ銀子の声が聞こえた。
「モタモタすんじゃないよ。アンヌこっちだ」
「はい。今行きます!」
バタバタバタッと、走って玄関に向かうアンヌマリー。
幸福に浸る間もなく、次の工程開始だ。
まずは靴。
先程脱いだ靴は、アルミを巻いてメタリック塗料で塗装をした銀色の光るハイヒールに変身した。
「ええっ!? これがあの破けそうな布の靴ですか? すごいです、光ってます!」
「おうよ。時間がないわりには良いだろ? アルミはそんなに重くないから踊りやすいぞ」
そして当然のように、シャペロンを花子がすることになった。その為の衣装も、メイクの間に義母アクアリネの服をばらして作っていたお竜。
アンヌマリーの水色のドレスに添うような、黄なりのシンプルで、胸が強調されたドレスだった。勿論胸もガムテープで無理矢理寄せた。「ぐえっー」と、呻く花子。本当に容赦のないお竜だ。
アンヌマリーの清楚さが際立つように、30~40代の妖艶なメイクで変身した花子。うん、完璧。二人再び握手。
そしてその間に、銀子はリュックから様々なパーツを組み合わせて、サイドカー付きのバイクを組み立てていた。
(竜)「馬車には…………1mmにも見えないわね」
(銀)「仕方ねーだろ、このリュックはバイクと車関係しか出せないんだから。生き物なんて出せるか」
(花)「じゃあ、自動車は? その方が速くない?」
(銀)「ばっかやろ。どんだけ時間くうと思ってんだよ。これだって、超時短で作ったのに。喧嘩売ってんのか? 買うぞ!」
喧嘩になりそうな3人を、慌てて止めようとするアンヌマリー。
「あ、あの。私の為に喧嘩なんかしないで下さい。本当に感謝しかないですから。どうかお怒りをお沈め下さい」
懸命に頭を下げ続けるアンヌマリーに、3人は暖かな視線を送る。
(銀)「ま、まあ。アンヌがそう言うなら、許すよ」
(花)「私だって、文句言ってごめん。こんなに短時間で単車作れるのなんて、あんたくらいだよ。本当にごめん」
(竜)「そうだよ。時間内で頑張ったよ。みんな良くやった」
3人にとってはいつものじゃれあいだが、それを知らないアンヌマリーは泣きそうだった。それを宥め、もう一つの作戦を決行した。
そこは伯爵家の執務室。
書類の引き出しには鍵がかかっている。
そこに針金を差し込み、ある書類を手に入れた。
そして再び鍵を閉め、痕跡を残さず部屋を後にする。
義母や義姉達の部屋へ入った痕跡も消し、アンヌマリーの部屋も整頓した。そこは、元々何もない場所だった。元いた場所は義姉が使い、彼女は物置のような場所に移動させられていたからだ。
今まで着ていたお仕着せをたたみ、簡素なベッドの上に手紙と共に置く。
「本当に良いのかい?これで」
お竜が問いかけた。
「はい、良いんです。最初から18歳の誕生日が来たら、ここを出るつもりでしたから」
「よし、じゃあ行くよ」
「はい。お願いします」
少し遅れたが、4人は伯爵家の門を閉めて城に向かった。
銀子が運転し、後ろにアンヌマリーが乗り銀子に抱きついた。
サイドカーにはお竜と花子が。
ここは日本ほど、道路が舗装されていない世界。
銀子はオフロード経験者だが、他は違う。
アンヌマリーなんか初めての乗り物だ。
ガタガタの砂利道を、ヘルメットを着用し両手でバイク縁を掴み移動を続ける。
(花)「ちょっと、もう少しゆっくり行けないの?」
(銀)「何、言ってんだよ。チンタラしてたら夜中の12時まわっちまうだろが」
(竜)「そうだな、そのまま頑張ってくれ」
(ア)「すみません、皆さん。大丈夫ですか?」
(花・銀・竜)「「「大丈夫だ。任せろアンヌマリー!!!」」」
知らずと合わさる声に、アンヌマリーも応える。
「はい。お願いします!」
みんな一番の良い笑顔だった。
(銀)「おっし、跳ばすぞ。皆口開けんなよ、舌噛むから」
わはははっと、加速する銀子。
青ざめる他3人。
そして城へ到着。
バイクは草陰に隠し、息を整えて城に入る。
勿論門兵に止められるが、慌てる素振りは見せない。
「こんばんは。私はサミュエル・キリアンが長女アンヌマリーです。今日は大事な舞踏会なのに、遅れて申し訳ありません。本人確認の証拠は、父の伯爵家継承権届けと私の継承権手続き書類ですわ。今後12時回れば行方不明の父の後を継いで、成人足る私が伯爵となる手続きをする予定です。どうぞご確認下さい」
余裕の笑みで圧をかけるアンヌマリー。
確認し、引きつる門兵。
(なんでこんな物まで用意してるんだよ。……そうか。継承を邪魔させないように、持って来たってことか。それより次期女伯爵に喧嘩なんて売れないぜ。ってことで)
「確認いたしました。どうぞお入り下さい」
門兵は頭を下げた。
ありがとうございますと、入城するアンヌマリーと花子。
銀子とお竜はそれぞれ燕尾服とドレスに着替えていたが、従者と言うことで外で待つことにした。何かあればアンヌマリーを逃がす為の待機だ。
母が生きていた頃に、子供のお茶会で一度だけ訪れた王城。
手をひかれて2人で見た中庭。煌びやかな廊下。
正確には室内には入城していないが、暖かい思い出だった。
そして花子と共にホールに足を踏み入れた。
「わあ、花子さん。素敵なドレスの方がたくさんいます。皆綺麗ですね。女性も男性も、おめかししてますね」
「ええ、本当ね。日本も明治時代に、近代化をアピールする為に鹿鳴館を建てたと言うから。権力の象徴なんでしょうね、舞踏会は」
「花子さんは博学です。そう言われると、ただ楽しむだけではない場所だと理解できます」
真剣に返してくるアンヌマリーに、焦る花子。
「ちょっと、顔暗いわよ。今日は楽しむんでしょ? まずはご馳走を食べましょ、ね」
「はい。そうですね。行きましょうか」
二人で立食式のテーブルに向かう。
所狭しと溢れる料理を見渡し、好きな物を頬張る。
「美味しいわね、ここのお肉。町に売ってるのは、何か物足りない感じなのよ」
「ええ、本当に美味しいです。………それに私、お肉数年振りです。父がいなくなってから、野菜くずばかりのスープしか飲んでないので」
「あら、そうなの。じゃあ、たくさんお食べ。今度はいつこんな良い肉にありつけるか解らないからね」
「はい。食べ尽くします」
「ふふっ、ほどほどにね」
そう呟きながら、次々に肉を頬張る花子とアンヌマリー。
小声で呟く2人の会話は聞こえないが、優雅な2人に周囲は興味津々である。
アンヌマリーは本来、亜麻色の髪と琥珀の瞳のわりと地味目の色合いであるが、目はくりくりと大きい可愛い子である。
それをゴールドプラチナの髪に変え、いつもより眉尻を上げて頬にシャドウを入れるだけで、知的美人に早変わりである。
ドレスだって、短時間でお竜が渾身込めた逸品だ。
強度こそ低めだが、荘厳さは誰にも引けを取らない。
正体がばれないための、逆の発想である。
対する花子は妖艶なぽったりした唇に、胸間を強調した魅惑ドレス。30~40代の美熟女にしか見えない。
視線を二分作戦である。
ここに入れるのだから、伯爵家以上のご令嬢とご夫人の筈だが当然誰も知らないのだ。声の掛けようもない。
それでもチャレンジャーはいる。
ジゴロで有名なハレンチナ侯爵だ。
「失礼レディ。美しい貴女のお名前を聞いても良いかな?」
美形で背も高いが軟派な顔や雰囲気で、絶対碌でもない奴だろう。濃密な人生経験の中で、花子は閃きを実践した。
外野の野次馬達から、軟派男がハレンチナ侯爵だと耳に入り彼の耳元に囁く。
「酷いですわ、ハレンチナ様。あんなに愛し合った夜をお忘れになったの? ああ、奥様もいらっしゃるかしら? 大変お世話になったと、ご挨拶に向かわねば」
悲哀を込めた熱っぽい顔で、ハレンチナ侯爵を見つめてからキョロキョロと首を振る。気まずそうに侯爵が向いた方向にロックオンする花子。
(あの女性ね!)
すぐさまハレンチナ侯爵が立ちはだかり、歩みを止めさせようとした。
「悪かった。もう声を掛けないから、許してくれ」
焦燥した様子の侯爵に、「最初からほおっておいてくださいな。さようなら」と耳元で囁く花子。
そうしてその場を後にし、新たなる肉とスイーツをむしゃぼるアンヌマリーと花子。
名を答えずに、貴族の証明をした花子である。
まあ花子は、正真正銘貴族ではないが。
こちらに声を掛けたくても掛けられない男性は、ハレンチナ侯爵へ詰め寄るだろう。何処の令嬢と夫人かを。でもハレンチナ侯爵は答えられない。全く知らないから。
時間稼ぎは出来た。
そのやり取りをホールの上段から見ていた、国王と王子は悟った。
(あのご夫人と何かあったな。今は声を掛けるべきではないと)
それでも王子はどうしても、アンヌマリーの名も知らぬのに惹かれてしまったのだ。
後で侯爵に詳細を聞こうと思う王子だった。
そして何も起きぬまま、夜中12時の鐘が城に響き渡る。
ご馳走に満足したアンヌマリーと花子は、ハレンチナ侯爵に近づきある封筒を手渡した。
「ハレンチナ侯爵様、お願いがあります。これを手続き役の官吏にお渡し下さい。私共は早急に隣国に用事があり、これから渡ります。もうこの地には戻りませぬ。………ですが、もしこの書類が紛失でもされた時は、再びもどり奥様に全て暴露します。一度関係した女を忘れ、再び声を掛けたことも。ですので、よろしくお願いします」
花子は一言の反論もさせず、ハレンチナ侯爵に頭を下げて懇願した。すぐ横に立つアンヌマリーもすぐ頭を下げた。
元々は、アンヌマリーが手続きしなければならないことだ。
まさにおんぶに抱っこ状態。
花子に目をやると、任せろと口元が動く。
頷くアンヌマリー。
花子の先制から僅か10分でやり取りは、完了した。
ハレンチナ侯爵は、必ず官吏に渡すと約束しその場を去った。
絶対失くせないとの恐怖感から、夜勤の官吏に書類を渡し明日一番に手続きしてくれと願い脱力し、膝を着いた。
そして花子の威圧感に、今更ながら震えたのだ。
(いったい、いつだ。あんな雰囲気のあるおっかない女。本当に? 俺、本当に致しちゃったの? 酔ってたの? 昔の俺ー、今の俺苦しんでるぞ! まるで母上みたいな気だったぞ………まさかなぁ、同年代じゃないよな。ないない、たるみ一つないもの。はあーっ、怖っ)
この夜一人の遊び人が、よく解らない出来事で全うな道に戻った。
そして合流する4人。
(竜)「本当に一緒に来るのかい? きっともう、ここに来るのは数年先だよ」
(ア)「はい、元よりそのつもりです。お竜さん達が来る前から考えてましたから。それに爵位の継承まで手続き出来るなんて、夢みたいです」
(花)「でもあんた。その継承権の証明書だっけ、国に保管して貰うことにしたんだろ? せっかくだから継いでから、継母達を追い出せば良いのに。優しいんだね」
(ア)「別に優しくないです。今のままなら、きっと家は没落しますから」
(銀)「何で? 伯爵って金持ちじゃないのか?」
(ア)「父がいた時は、貿易業で潤ってはいました。でも義母が継いでから事業のお金を私用に使い始めたことで、役員と揉めまして。その結果話し合いもせず重役を追い出したことで、事業も回らず赤字決済も増え横領もし放題らしく。その中でも生活水準が落とせない義母達は借金し、家事にお金をかけたくないので私を使用人として働かせていたのです」
(銀)「そうか。でもその情報は、何処から?」
(ア)「父がずっと依頼していた会社の会計士さんからです。このままではお嬢様の家が潰れますと言われたんです。それで売られたりしたらいけないから、逃げなさいとお金を渡してくれて」
(竜)「そうなのね? 味方もいたんだ。良かったよ」
(ア)「はい。商店の奥さん達も、話をよく聞いてくれました。いつも平民だから助けられなくてごめんねと、心配してくれてました」
(花)「日本でも貴族制度があった時は、そうだったらしい。最悪無礼だからと殺されたそうだ。貴族は怖いからな」
(ア)「はい。だから私は、話を聞いて貰えるだけで嬉しかったんです」
(銀)「じゃあ、行こうか? アンヌ、あんたが暮らしやすい場所に着けば、そこでお別れだ。良いな」
(ア)「はい。よろしくお願いします。お金は貰ったものしかありませんが、父がいなくなる14歳までは経理も手伝っていましたし、4年間家事をしておりましたので、その部分はお役にたてるかと」
(花)「本当に! 助かるよ。私達、仕事はほどほどだけど、食事作ったり掃除とか全然駄目でさ。いつも屋台食で参ってたのよ。なんせ、婆だからさ」
(ア)「お任せください。私もこれから3人様の技術を、学ばせていただきたいので」
(竜)「良いわよ、仕込んであげる」
(銀)「着いて来いよ。落ち着いたら、ツーリングしようぜ!」
(花)「お化粧はどの時代でも必須よ。これだけでメイドになれるかもよ。いや侍女もいけるか、女伯爵だもんね」
(ア)「さすがに、伯爵の身分は言えないですね。遠面はもし聞かれても、伯爵令嬢でいきますよ」
(竜)「まあ、そうよね。それに爵位は国に預けたんだっけ?」
(ア)「はい、そうなんです。あのまま家にいれば良くて金持ちの後妻、悪くて娼館行きでしたし。身分は捨てて逃げようと思ってましたから」
(花)「そうか。逃げ出せて良かったわね」
(ア)「はい、ありがとうございます。それに父に爵位を残せて良かったです。あのままならきっと、爵位も売りに出されたと思いますから。父はきっと生きていると思うんです。どっかの未開の土地で連絡が取れないだけで、そのうちイカダとかで戻ると思うのです。それが希望と言いますか…………」
終始笑顔のアンヌマリーだったが、父親の話になり表情を曇らせた。泣いてはいないが辛そうだった。
(銀)「大丈夫だ! 商人ってのは、勘が働くもんだ。きっと船が沈む時に、ネズミと島に泳ぎ着いてる筈だ。あたいらに出来るのは、病気せずに戻れるように祈るだけだ。強気でな。弱気は駄目だ。女はいつも度胸だ、良いな!」
(ア)「はい、度胸です!」
(銀)「そうだ。いいぞぉ!」
(花)「ヤバイわよ。この子ヤンキーにされちゃうわ」
(竜)「………たぶん大丈夫でしょ。私じゃ止められないし、アンヌマリーに抗ってもらうしかないわね。それかあんたが止めれば」
(花)「無理に決まってるでしょ? 痩せてんのに喧嘩強いんだから。合気道、違う? あ、極真空手か!大山倍達先生の」
(竜)「あ、じゃあ年齢関係ないわ。死ぬまで心を鍛えて強くなるのか」
(花)「まあ、良いじゃないの。か弱い婆に力は必要だわ」
何て言いながら、馬を2頭と馬車を買って隣国へ向かう一行。
運転は銀子。本当何でもできる(昔競馬が好きすぎて、厩舎でのアルバイト経験あり)。
《舞踏会翌日》
その頃の伯爵家には、王家からの便りが届いていた。
「どれどれ。もしかしたら、娘が王子の婚約者になっちゃったかしら」
なんて呑気に手紙を開くと、驚愕の声が出ていた。
「何じゃこりゃあー、嘘でしょ!?」
手紙の内容はこうだった。
「サミュエル・キリアン伯爵が、貿易船ごと行方不明になってから4年が経つ
そこで申し入れがあった通り、成人したアンヌマリーを当主と認めることとする
尚アンヌマリーは、父の捜索の為に旅にでるとのことで、もしサミュエルと入れ違いになっては困るからと、王家に継承権書類を預けたいとの申し出も承諾した
当主不在であり、事業は元々アクアリネ夫人が継いでいたのでそのまま継続していく
当主の代理で、王家から定期的に監査を行う
もし借金等で経営が不振となれば、屋敷と領地を返して相殺もできる
見通して借金が上回る時は、全ての資金がなくなる前に監査員に相談して立て直しを図るか、現状残る資産を夫人に渡し伯爵邸を去ることもできる
尚前伯爵は安否不明であり、現伯爵も捜索の旅に出ていつ戻るとも解らない
その為、離婚はアクアリネ夫人の希望通り行える
尚、今後何も選ばずに借金を続ける場合は、責任は夫人らに適応され王家は手出しせぬことになる
以上、継承権変更の確認書類とする」
「何なのこれ? アンヌマリーは何処よ。勝手に書類を持ち出したのね。鍵をかけていた筈なのに」
執務室で書類を探すが、あった筈の継承権書類が消えていた。
そしてアンヌマリーの部屋には、たたまれたお仕着せと手紙が1枚置いてあった。
「私は父を探す旅に出ます
邸はお好きにしてください
さようなら」と、それだけが書かれていた。
憤怒の顔で怒声を出すアクアリネ。
「あの女、馬鹿にしやがって! 成人した今月中に、ガツガツナ・リキーン男爵の妾にする約束だったのに。どうすんのよ、どうすんのよ! もうお金使ってないわよ」
叫び声を聞いて集まる娘達。
「お母様、何事ですか? それより、アンヌマリーが洗顔の水を持って来ないし、着替えもできないのです。お腹が空きましたのに」
「本当にそうなのですよ。あの愚図、叩いて躾ないと駄目ね」
我が儘と醜悪な発言しかしない娘達。
でもどちらかを妾に送らなければ、借金等返済できない。
「貴女達聞いて。アンヌマリーは父親を探すと言って、出ていきました。そして伯爵の継承もしたので、私達は前伯爵夫人と前伯爵夫人の連れ子となるわ」
「ええーっ、じゃあ私達は平民なの? そんなの嫌よ」
「私も嫌よ。貴族と結婚したいわ」
現実が見えていない娘達。
そしてそれは自分もだと、やっと悟るアクアリネ。
「カナート、ジュミニ。残念だけど、今月中にどちらかにリキーン男爵の妾になって貰うわ。もう既にお金は使ってしまって、妾の約束をしていたアンヌマリーはいないの」
姉妹は目を剥いて、擦り付けあう。
「い、嫌よ。リキーン男爵なんて、40過ぎのおじさんじゃない。それにとても太っていて、醜男よ。妻だって嫌なのに、妾なんて絶対嫌よ」
と、姉カナートが言えば、
妹のジェミニも反論する。
「いつも高いドレスを作ってたのはお姉様でしょ。たくさんお金を使った方が行くに決まってるわ。それにお姉様はデブだし、どうせお嫁なんかに行けないわ。釣り合いが取れているもの、良いじゃない」
「何よ、あんただって太ってるじゃない。顔だって大差ないわよ」
「そんなことないわ。私はお姉様より2歳も若いし、精々ポッチャリよ。嫁の貰い手は私の方があるわ」
最初は口論だったのに、どちらからともなく手が出て殴りあいになった。結局痣だらけで、妾に出せない顔になっていた。
アクアリネはリキーン男爵へ、1月ほど待ってくれるように謝罪へ向かうと、アンヌマリーでなければ借金を返して欲しいと言われた。
娘2人がいくら生娘だとしても、太り過ぎて醜悪過ぎると言うのだ。
(自分のことを棚に上げて、何てことを。痩せれば私のように美しくなるのに)
そう考えているのが顔に出たのか、リキーン男爵が言う。
「あんたなら良い。歳はいってるが、美人だし。何よりその生意気な顔を歪ませるのは楽しそうだ」
醜悪に笑うリキーン男爵だが、既に選択肢はないのだった。
そしてその月に、アクアリネは離婚届けを出してリキーン男爵の妾となった。連れ子の姉妹も伯爵邸には住んではいられず、アクアリネに与えられた小ぢんまりした家で、一緒に暮らすことになった。
閨ではアクアリネが抵抗し嫌悪の顔を見せるほど、リキーン男爵は喜んだ。征服欲と言うものだろう。
カナートとジェミニは贅沢もできず、かと言って平民と結婚することも拒んだ。
この頃になると2人とも体重は落ちて、アクアリネには及ばぬが美しく変貌していた。
そして姉のカナートが夜間寝ていると、リキーン男爵の次男が布団に入ってきたのだ。止めてと必死に抵抗するが、止まることなく純潔は散らされた。
無理矢理に犯されたと言っても、仮にも世話になっている人の息子だ。騎士団に訴えることもできない。
幸い?にも次男がカナートを気に入ったことで、結婚することはできた。ただ無抵抗な女に夜這いする男だ。毎夜女遊びをして、気に入らなければカナートを殴るのだ。
そのうちに産まれた子を、カナートはたいそう可愛いがり、アクアリネも真っ暗な生活の中での唯一の希望となった。
子供に与えなかった分のように、慈しんで孫に接していた。
そんな2人を見てきたジェミニは、平民の商人と結婚。
痩せたジェミニは、かなりの美人になっていた。
夫とも表面的には相思相愛だと言う。
自分が優位な立場になると、途端に母と姉を馬鹿にし始めた。
「私は好きな人と結婚したのに、姉は碌でもない男と結婚して母は妾だ。全く恥ずかしい」と言って。
アクアリネもカナートも何も言えなかった。
ただアクアリネは、自業自得だと反省していた。
もし姉妹が喧嘩せず太っていなければ、何も考えず妾に出しただろうと。ただカナートは自分が妾だったので、男爵の次男が容易に家に侵入してしまった。自分のせいでもあると後悔していたのだ。それなのにカナートは、自分を責めないのだ。
きっとカナートも思う所があるのだろう。
カナートはちゃんと娘を教育し、躾ていた。
自分とは違うと、アクアリネは思った。
ある日、リキーン男爵から妾奉公の終了を言い渡された。
金貨を10枚やる代わりに、この町から出て行くことを条件に。
アクアリネは応じた。
そしてカナートも一緒に来ないかと誘えば、娘フランと行くと言ってくれた。
このまま成長すれば、自分の娘も同じ道を辿りそうだからと。
アクアリネとカナートがいなくなっても、誰も探す者はいなかった。リキーン男爵の次男はさっさと離縁の届けを出し、今までと同じ生活を続ける。ただ家にカナートがいなくなっただけ。
アクアリネ・カナート・フランは、隣の隣の町に移り住んだ。追っても来ないようで、役所で確認すると既に離縁もされていた。
3人は長屋に住み、内職や魚売りの行商等をして、フランの将来の為に懸命に貯金し生活していた。そのうちにカナートの賢明さを見初めた真面目な大工が求婚し、再び所帯を持った。今度は幸せに笑うカナートに、アクアリネも嬉しくなった。フランのことも大事にされ、妹も生まれた。
仲良く育つ姉妹を見ると、アンヌマリーのことを思い出す。
どうしてあんな子供に、酷いことをしたのだろうかと。
今となっては後悔ばかりだ。
最後に見たアンヌマリーは、舞踏会に行く私達を羨ましそうに見ていたなと。
「ああ。あの子も一度くらい舞踏会に連れて行けば良かったなぁ。行方不明の人を探しに行くなんて、よっぽど家が嫌だったのよね。当たり前だよね、本当逃げてくれて良かったよ」
そしてジュミニのことも思い出す。
「あの子は私に似ているから、同じことを繰り返さないと良いな」
そんなある日、仕事に出てこないアクアリネを訪れた同僚が、冷たくなっているアクアリネを発見した。穏やかな笑顔で、きっと突発的な心臓の発作だろうと医師に言われた。
カナートもフランもフランの妹も、カナートの夫も同僚もみんな悲しんでくれた。
きっとアクアリネも満足したんだろう。
死に顔はとても優しい笑顔だった。
そして風の噂で、アクアリネの死を知ったジェミニ。
「何で死んだの? はあ、私に黙って死んだの? そんなの嘘よ」
信じらない知らせに、思わず怒りを乗せて自室で呟いてしまう。
アクアリネとカナートの前では、自分は不幸ではないと虚勢を張っていた彼女だが、姑や夫の支配的な態度に時々苦しくなっていた。息子は2人いても姑の味方で、ジェミニを下に見てくる。実際にこの店を継ぐのは息子達だから、しょうがないと飲み込むも誰にも弱音を吐けない。理想の妻・嫁・母を笑顔で演じるも、下に見られてばかりで吐き出す場所がない。仕事が忙しく姉の元にも行けない。妾だったからと、母の墓参りさえ行けない。
これから自分は、どうしたら良いのだろうか?
前途が絶望に染まる気がした。
そして王子は、アンヌマリーを暫く追い求めるがついに見つけることは出来なかった。
ただ門の草むらに、彼女が履いていた靴が見つかった。
中は布製で、外が見たこともない軽い金属で出来た物だった。
だからこう思うことにした。
月のような輝く髪と、星のような不思議な靴。
そして闇夜のような深青のドレス。
「きっと彼女は、天女か女神だったのだ」と。
そんなアンヌマリーは、南方の暖かい国で暮らしていた。
結婚し子供も生まれ、孫もいる身だ。
なんと3婆もまだ一緒。
ゆうに30年は経っているのに、あの時と状態は一緒なのだ。
これには深い訳がある。
最初にこの国の女神が呼ぼうとした人間は、巣鴨商店街の3婆ではなく、桜舞う六義園のカフェの3人組だった。
とても清楚な若い女性達。
その時空間が繋がり、さあ呼ぶとなった時くしゃみが出てしまった。なんと女神は花粉症だったのだ。その瞬間、空間を繋ぐ指先が巣鴨の3婆を捉えた。そしてこの世界に転移したのだ。
女神はまだ5万年しか生きておらず、新人だった。
その為、正直に言えば許されると思っていたのだが…………
お竜さんには「謝らなくて良いから、早く戻せ」と、無表情。
銀子さんには「間違って翔ばすんじゃねえよ。さっさと戻せ、競艇始まるだろが!」と怒声。
花子さんには「デートに遅れちゃう」と、泣かれた。
恐々戻れないと言えば、
お竜さんは「ああ。年寄りはここで、こんな訳の解らんとこで死ねと。死んでもたいしたことないと。ええ、そうですか」
銀子さんは「腐れボケ。お前なんか神ちゃう。使えんから便所紙より下じゃアホ。殺すんなら早うせえ、死後にあんたの上司に報告したるさかい。はよ、殺れや!」
花子さんは「こんな者が支配する未熟な世界。可哀想に、発展させる聖女を呼ぶこともできず、腐っていくのね。私も肥料になるのね、こんな所で! ああ、可哀想な世界。可哀想な私。シクシク」
まあ、婆ですから。
悔いのないように喚きました。
いつ死んでも良いように。
…………でも女神は、なにぶん打たれ弱く、婆と交渉?したこともなく。
崩れ落ちて泣いた。
「どうすれば良いんですか? 出来る範囲で何でもします」
お竜「じゃあ、若返らせて」
「無理です」
お竜「チッ」
銀子「競馬場作って」
「女神は介入できません」
銀子「使えんな」
花子「若い彼氏が欲しい」
「女神は介入できません」
花子「えー、ケチ」
そんなこんなでいろいろ話し、「ここで生きていく為に前職に使っていた物を、今お持ちの収納風呂敷・リュック・バックから取り出すことができることと、怪我・病気で死なない加護を付けます。後は貴女達を見ても、誰もが即受け入れられる加護。相手も加護持ちで受け入れられない場合は、認識されない加護を付けます。これがあるとですね、どんなに怪しくてもまあ良いかと思われるですよ。若しくは認識されないので攻撃されないのです。良いでしょ?」と、どや顔をしてきた女神。
はぁ?である。
「貰うもんは貰うけどやっぱり反省しとらんし、上司にほうこくやな」と銀子さんと頷く2人。
すると女神は、「そんなこと言っても、無理なもんは無理ですー」と言って、アンヌマリーがいる地に飛ばしたのだ。
なんだかんだで交渉術のある婆だ。
着物や服を売ったり作ったり、機械を直したり、化粧品を売って、宿屋に泊まり散歩していた。アンヌマリーに出会い、退屈していた婆達は大喜びだった。
アンヌマリーはあの時馬車を見送り、「お腹空いたなあ。お城で腹一杯、美味しい物食べれて良いなあ」と、飢えていた。そして家を出るところだったのだ。
3婆は踊らなくて良かったのか?と気にしていたが、良かったのだった。全く問題なし。結局、念願のお肉はたらふく食べたし。
そしてアンヌマリーが可愛くて心配で、ずっと一緒にいるのだ。
アンヌマリーは、こう思っていた。
「きっとお婆ちゃん達が、聖女様なんですよ。私が死んでも孫達をお願いしますね」
(竜)「馬鹿言わないでよ。そろそろお迎え来るってば」
(銀)「そうさ、その前に競馬場大きくするぞ(既に出来上がり済み)」
(花)「そうね、死ぬ前に俳優の、イケメンの、格好良い人とデートしなきゃ」
なんて言ってたが、「皆さんに出会えて幸せでした」と手を握り、他の家族と同じように言葉を交わしたアンヌマリーを老衰で見送ったことで、彼女の発言が真実味を帯びてきた。
(竜)「冗談でしょ?」
(銀)「嘘だー」
(花)「ええっ、どゆこと?」
女神はお竜達に力を与えすぎて、エネルギーが枯渇していた。
なんと言っても、まだ若い女神だからねえ。
「もうちょっとエネルギーが貯まって、若い聖女を呼ぶまで待っててよ。結構貴女達って面倒見良いし、職業の道具でちょっとづつ文明も発展させてんのよね。そう所謂オーパツ的な感じで。後、死んで上司に報告されるのも地味に辛いし。暫くこのままでも良いんじゃない? ねえ」
※オーパツとは、発見された場所や時代にそぐわない出土品のこと。
女神はお竜達がすっかり忘れていた暴言を覚えいて、地味に怯えていたのだった。
『勇気、やる気、逃げ足』
これが座右の銘。
そう彼女らは、この世界の隠された聖女。
商店街の夫人の♪サンババア♪なのだった
事実この3本柱は、多くの人々を救ってきたのだ。
さあ君も、悩みがあればサンババアに相談だ!
最終的に、太陽◯隊 サンバ◯カン的な感じに寄せたかった。
できていないです(^_^ゞ
1/26 日間ローファンタジー(短編)部門 8位でした。
ありがとうございます(*^^*)
3/8 日間ハイファンタジー(短編)部門 57位でした。
ありがとうございます(*^^*)
3/9 21時 日間ハイファンタジー(短編)部門 51位でした。
ありがとうございます(*^^*)
3/10 8時 日間ハイファンタジー(短編)部門37位でした。
ありがとうございます(*^^*) ランキングアップだぁ♪