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推しを愛して何が悪い  作者: SHKA
第一章 推しは誰よりも可愛く誰よりも尊い
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九話 ジェントルマン

 ファミレスでバイトをしているのは時森拓真である。



 彼は今注文を取りに向かった先のお客に対して驚いている。

 彼の前に座っているのは黒い帽子を被り私服姿の自分の彼女兼推しの天星ルアが居たのだから。


「エヘヘ、来ちゃった」


 照れながら言う彼女は可愛すぎて拓真は、その場で倒れそうになるが平常心を保ちつつ仕事として。


 定員とお客という立場として天星ルアと接する。


「ご注文はお決まりでしょうか?」



「お決まりですよ! このマンゴーパフェ下さい」



「畏まりました。マンゴーパフェ一つですね。以上で宜しいでしょうか?」 


「はい、宜しいです」


 拓真は顔が赤いのが周りの同僚にバレないようにそっとその場を離れる。


 少ししてパフェが出来上がり客である天星ルアに持っていく。



「お待たせしました、マンゴーパフェです」



「わーお! 美味しそう」


「では御ゆっくり」


 拓真はテーブルを離れ別の業務に当たろうと移動をしようとすると袖を天星ルアに引っ張られる。


「拓真君、これちょっと多いかも。一緒に食べない?」


 そっと小声で尋ねられたそれは平時の拓真であれば即刻承諾していたであろう。


 だが拓真は今は出来ない。


 今は仕事中であるからだ。


 そのため紳士に、そしてここのファミレスの従業員として接しなければならない。


「すみませんお客様。現在私は職務に当る必要があるためお客さまのご要望にはお応えできません」



 すると天星ルアは目をウルっとさせる。



 その目は拓真を射止める。


(ずるすぎるだろ)


 拓真があたふたしていると拓真の先輩である山口さんが話しかけてくる。


「よう、拓真。


 今実は休憩室には誰もいないんだ。


 そしてスタッフ一同はこれから五分間ほど目が見えなくなる病気にかかっちまうからよ、もしお前ら二人が休憩室に勝手に行っても分からないよな。


って、あれ? なんだか目が見えなくなってきたな〜、わー」



 山口さんは二人は単なる友達とかそういった関係でない事を一瞬で見抜き彼なりに拓真達を応援したいと思ったのだ。



「え、先輩?」


「拓真くん、先輩さんは見えなくなっているらしいから今のうちにいこうよ」


 天星ルアはニコニコと拓真を誘う。


 拓真は先輩の応援と天星ルアの笑顔を無駄にすまいと天星ルアの手を引き休憩室までいく。


「フフ、いい先輩持ってるね」


「お節介大好きの山口さんだよ。まぁなんだかんだ言って可愛がって貰ってるよ」


 ちょっと照れながら言う拓真にパフェのバニラアイスとクリームが乗ったスプーンが差し出された。 


「はい、アーン」


 それに対して拓真はさらに顔を赤くして答える。 


「んむ……美味しい」

「そう? 良かった。拓真はキッチンの方には行かないの?」 


 拓真は口に運んでもらったアイスを飲み込む。


「いや、俺は行かない。俺はホールがメインだね。キッチンに行く時は基本的に料理を取りに行く時とか限定した時だね」


「ふーん」


 天星ルアは少し悲しそうだった。


「拓真君にご飯作って貰いたかったな……」 


 ボソッと放たれた言葉は近くにいた拓真にはしっかり聴こえた。


 それと同時に拓真の顔は、ポッとさらに赤くなる。 


「今度暇な時に俺の家で何か食わせてやるよ」 


 すると一気に天星ルアの顔が輝く。


「本当に! やったー! 拓真君、大好き!」


「ありがとう、、ルアの事も大好きだよ」 


 彼女の輝かしい笑顔を前に拓真は照れっぱなし。 



 最後に何口か天星ルアにパフェを食べさせてもらい拓真は仕事を言い分にルアを休憩室に置いてホールに戻る。  


「あれ? ナイトくんはもう戻ってきちゃったの?」

ホールには山口さんが拓真を待っていた。



「いや、僕も仕事なんで。あんまり長くあそこに居ても皆んなに迷惑ですので」


「そんな事ないよ。それよりお前トマト並みに顔が赤いぞ。そんなに二人の時間が良かったのかよ」



 山口さんはニヤニヤしながら拓真に問う。


 それに対して拓真はソローっと目を逸らす。


 業務を淡々と拓真と山口さんはこなしていると「お会計お願いしまーす」とレジの方から声が聞こえる。



 拓真はレジに立ち顔を上げると天星ルアがお会計を済ましにきていた。




「お会計は0円になります」

 



「え?」


 天星ルアは定員(拓真)から言われた金額が信じられなかった。


「お会計は0円になります。こちらレシートになります。またのご来店お待ちしています」


「え?え? え? いやいやちょっと待って。0円なんてあるわけないじゃない」


 だが天星ルアは返されたレシートと定員(拓真)の表情を見て理解した。


「ふーん、ありがとう。じゃあまた今度は私が何か奢ってあげるね。じゃあまた明日!」


 拓真は天星ルアのパフェ代を自分の財布から彼女がくる前に先に支払っていたのだ。

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