五話 ニューファイター?
夜中一時に寝ずにゴロゴロとベットの上を右へ、左へと行き来するのは時森拓真である。
彼は今日一日を振り返る。
今日は時森拓真にとって衝撃の一日であった。
まず最初にクラスのマドンナ天星ルアが拓真の推し歌手『パピー』であると確定する。
そしてその秘密保守のため付き合う事になる。
その日の間にお弁当の食べさせ合いっこをする。
そして一緒に下校し家が間隣と気づく。
「なんだか全てが出来すぎてる気がする」
拓真はつぶやく。
「だってそうだろ。
今まで彼女というものと縁もゆかりも無かったこの俺が一日でリア充になる。
しかも推しと付き合うんだぞ。
なんだか出来すぎてる…でも、可愛かったな〜」
拓真は疑うべきが素直に喜ぶべきかと迷うがひとまずは一つの結論に達する。
「寝よう」
その結論が出たの裏には二つの理由があった。
一つはいくら考えてもどうにかなる訳じゃない。
そして二つ目がもしかしたらコレは全て夢であるかも知れない。
だから一度寝ればその結論が出る。
「これぞまさに一石二鳥」
クーラーの効いた部屋で拓真は布団をかけひとまず寝る。
翌朝、拓真の母親が起こしに来る。
「拓真! そろそろ起きなさい。あんた今日学校やろ」
「はーい…」
母親に眠たそうに答える。
トボトボと朝ごはんを食べに降り、ジャムを塗ったトーストを一枚とコーヒー一杯を口に流し込み歯を磨き髪をセットする。
制服に着替え家を出る。
「行ってきまーす」
ガチャと家の扉を閉めると拓真より少し高い声が耳元をくすぐる。
「遅いよ」
そこに居たのは天星ルア。
「昨日の約束覚えてないの? あれ、どうしたの。固まちゃって」
拓真は自分が夢だと思っていた事が否定され自分家の前で待っている天星ルアが可愛くて、愛おしくて拓真は固まってしまっている。
「あ、いや…ごめん」
「もう、しょうがないな。行こう、遅刻しちゃう」
天星ルアは拓真の腕にガッチリ絡まり引っ張りながら学校へ行く。
学校前まで来ると他の登校する同級生に会う。
「おい、あれ見ろよ。天星ルアがなんかモヤシと一緒にいるぞ」
「本当だ、モヤシといる。あいつら付き合ってるの?」
ザワザワと噂され始める。
だが拓真にとって噂されるのは別に悪い気はしない、特にこんな美女とセットの噂はむしろ大歓迎。
だがモヤシと呼ばれるのはやはり癪に触る。
「あれ、ルアちゃん? ヤッホー」
どうやら天星ルアの友達が天星ルアに会いに来たらしい。
「あ、由美ちゃん! ヤッホー」
相変わらず拓真の腕に絡んだまま笑顔で答える。
「ルアちゃんもしかしてこのモヤ…この男の子と付き合っているの?」
(おい、テメェ今モヤシって言いそうになったな)
拓真は一瞬イラッと来たがさすがに自分の彼女の友達にキレるのもどうかと思い気を鎮める。
「そうだよ。ね、拓真くん?」
「う、うんそうだよ」
いきなり話を振られて拓真は一瞬ドキッとする。
「へーそうなんだ。ルアちゃんってこんな子が好みなんだ」
天星ルアの友達、由美は拓真の顔を覗き込むと「じゃあ、お邪魔しちゃ悪いね」っと手を振って由美は小走りに先に学校へと行く。
拓真達も由美に少し遅くをとって学校に到着。
噂が回るのは早い。
だがその噂の回った速さはきっと天星ルアと拓真という意外すぎるコンビだからこその速さだとも言える。
もう拓真と天星ルアが付き合っているという噂は学校内、皆んなが知っている事実となっていた。
だが到着間も無くしてチャイムが鳴る。
「はーい、皆んな席についてー。授業始めるよ」
数学の授業が始めり皆んなの注目が黒板へと移る。
それは拓真とて今回ばかりは例外では無い。
一週間後、期末テストだと『彼女』に教えてもらい拓真は睡魔に抗いながら先生のチョークを追う。
だが今まで授業を全くついて行って無かった拓真からすると先生の言う事は魔法の呪文の様であった。
「えーとそれだからして。そうだ、珍しく授業中起きている拓真にこの問題は解いてもらおう」
「ふぇ?」
拓真はいきなり当てられ変な声が出る。
「お前だぞ拓真。それともとうとう目を開けながら寝れるようになったのか?」
先生にイジられ周りの生徒からは笑い声がする。
「あ、いえ起きてます」
「そうかじゃあ答えろ」
拓真は何度も問題文を読み直すが全く意味が分からない。
拓真にとってそれは外国語。
中国語、はたまたフランス語か?
そんな事を考えていると先生が急かしてくる。
「おい、まだか? これくらい答えられないとお前今度の期末赤点だぞ」
拓真は焦って適当に答えをいう
「えーと…x=46?」
「正解だ」
まさかの適当に言った答えが合っていて拓真は胸を撫で下ろす。
だがその緊張が途切れいつもに増して睡魔が荒々しく襲う。
それに抗えず拓真は睡魔に敗れる。
だが抗えなく敗れてしまった拓真は先生にその後バレてしまいこっ酷く敷かれてしまう。
そして差し掛かるは昼休み。
今度はしっかり拓真は自分の弁当を手に取り昨日みたく天星ルアと昼食を取ろうとした時一人の男に止められる。
「拓真、ちょっとコイ。話がある」
その男はクラス一のイケメン剛田竜二。
拓真とは今まで関わりが無かったことから最近の事、つまり天星ルアに関する事だと察し拓真はそれに同意し天星ルアに後で合流すると残し竜二と教室を出る。
体育館の影に入ると竜二が話し始める。
「拓真、お前最近調子に乗ってないか?」
「いや、別に」
拓真は何のことか何となく察しながらもとぼける。
「いや、いや、乗ってるだろ。お前最近天星ルアと付き合っい始めただろう」
「まぁ、最近というか昨日から」
「何をした?」
「?」
「拓真、お前は天星ルアを何で脅した!」
竜二は鬼の形相で拓真の方を睨みつける。
「拓真、お前が天星ルアと付き合えたのには何かしらの理由があるはずだ。
お前と天星は一才今まで関わりが無かった。
なのにいきなりお前達が付き合い始めた。
だがまだお前がイケメンなら頷けたが今までことごとく色んなタイプのイケメンから告白されは断ってきた彼女がお前を選んだとは思えない」
拓真はやっと竜二の言いたい事が理解できた。
「なるほど、つまり彼女は俺みたいなお世辞にもイケメンとは言えない俺と付き合えるわけが無いから俺が彼女を脅して付き合ってると思ってる訳だ」
「あぁそうだ。さぁ吐け、お前はどんな汚い手を使って彼女を脅した?」
「いやいや竜二くん、それは理不尽すぎないかい。平均顔の関わりのない奴が美女と付き合うとそれは脅したって事になるの?」
すると竜二は少し考えるように間を開ける。
「いや、まぁ別に必ずしもそうとは限らないけど君の場合そうとしか考えられない」
その返答に拓真はとうとう痺れを切らし声が少し荒々しくなる。
「お前のはただの綺麗事。
それはお前がそうで合って欲しいただの願望。
俺は自分の努力でここまで達した。
お前が知らないだけの運命的な出会いをしたと思う。俺は推しが愛おしい!」