三話 ラブラブは尊い
皆んなは彼女いた事ありますか?
僕は可愛い彼女が欲しいです
机に突っ伏して寝ているのは数時間前からクラスのマドンナ天星ルアの彼氏である時森拓真である。
拓真は授業の終わりを告げるチャイムのたんびに一度体を起こし次の授業が始まるとまた寝るというのを繰り返していた。
何度目かのチャイムが鳴る。
授業の終わりを示すチャイムが鳴るが拓真は今度ばかりは爆睡している。
周りが騒がしくなっても気づかない。
それは時々おきる事である。
いつもは竹本が起こしに来るが今回ばかりは違った。
「拓真くん、起きて。お昼だよ」
優しく透き通るような声で起こしに来てくれたのは、拓真の彼女、天星ルア。
「ん? どうしたの?」
拓真の目の前には普段は一切映らない美しい光景が広がっていた。
「お昼食べよ」
天星ルアは拓真の手を引き屋上へと連れ出した。
「屋上が好きだなルア」
「フフ、そうよ。私は屋上が好きよ。だって誰も居ないし静かじゃん?」
微笑んだ天星ルアは白薔薇のような美しさを宿っていた。
「お弁当は?」
「ルアに強制的に連れて来られたから鞄の中だよ」
「あ、そっか。」
天星ルアは少し天然ぽいところがあるよう。
それも可愛く拓真の目の保養になる。
「じゃあ私と食べよ。戻るのも面倒くさいしね」
天星ルアは座り込み弁当を広げる。
スティックに刺したタコさんウィンナーを一個とると拓真の顔近くまで持ち上げる。
「はい、アーン」
「えぇぇ」
拓真は少し顔を赤くして困った顔をする。
「私達カップルでしょ? だからこれくらい、いいじゃん」
拓真は自分を納得させてそのウィンナーを口に入れる。
何故だかいつもより美味しく感じたそのウィンナーを味わっていると二人が屋上に来た時に潜り抜けた扉から物音がする。
「何かしら?」
「見てくるよ。」
二人の時間を邪魔されたと思い少し怒りながら拓真は扉を開けるとそこに居たのは良く知るシルエット。
「竹本、それに山田達も! お前ら何してるんだよ。」
4人ほどうずくまって居る少年達は皆んな拓真の友達と言える奴らだ。
「えーとこれには訳が合ってですね――」
「理由って?」
拓真は少しキレ気味に聞く。
拓真は夢のようなひと時を邪魔したのがこの四人だと知りなおさら怒りが激しくなる。
「実はと言いますと、あんだけクラスの女子に興味を示さなかった拓真がクラスの美女、天星ルアと一緒に屋上へ向かって『アーン』なんてして貰っているもんでツイツイ見入ってしまって。
決して邪魔する気は無かったんですよ。
信じて下さいよ〜」
チッと舌打ちすると拓真は扉を閉めようとする。
「あぁ、ちょっと待って!」
「何?」
竹本に止められさらに拓真のイライラは高まる。
「もしかして拓真、お前天星ルアさんと付き合ってるの?」
拓真は少し赤くなる。
それは怒りから成るものではなく照れているからである。
「そ、そうだよ」
そう言って拓真は扉を閉め天星ルアの横に座る。
だがその時、竹本達は閉められた扉の裏で会議が開かれていた。
その会議のテーマは
『果たして本当に拓真は天星ルアと付き合っているのか』
今さっき出された答えがあってもやはり竹本達はなかなか信じられなかった。
そんな答えの決まっている会議をしている間、拓真は幸せを噛み締めていた。
「ねぇねぇ、私にもアーンってして」
天星ルアからのおねだりは拓真を動かすのに十分すぎた。
「はい、アーン」
拓真は卵焼きをとり天星ルアの口に入れる。
そんなラブラブな空気が流れる。
それは拓真が経験した事のないほど幸せなひと時であった。