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冒険者活動もしています。

 枯れ草色の短髪の髪に男物の服。腰には中剣を下げ、身体にピッタリ張り付くようなリュックサックを背負い、その上にジャケットを着る。

 冒険者としては珍しくない姿で、8級冒険者ルルはソロで活動していた。活動はだいたい月2回以内たが、4月になってから活動回数が増えている。


 家にいたくなくて、シャーリーは冒険者をしていた。護衛がついているかどうかはしらない。冒険者として浮かない姿で活動する様になってからは、誘拐未遂も起きていなかった。

 それが上手く擬態できているからなのか、知らないところで危険は排除されているかは教えられていない。


 伯父との約束は2つ。冒険者活動を許可するから、冒険者として活動する事を伯父には隠さないこと。困ったことが起きたら相談することだ。


 使用人通用口から冒険者の格好で伯爵邸を出て

路面列車に乗って外門へ向かう。冒険者ギルドで依頼を受けることは滅多にない。

 そのせいで8級で昇級は止まってしまった。

 7級以上になりたいなら常設依頼以外の依頼をこなした実績がそれなりにいる。おそらく無理だと、そこはあきらめていた。


 膝下まである皮のブーツで町の外を歩く。今の時期だと花や実を中心に採取する。手をいためないように手袋もして、魔術で切ったり穴を掘ったりしながら森へ向かう。


 魔物はなるべく相手にしない。糸操魔術なしで持って帰るのは大変なので襲われない限りこちらからは手を出さないようにしていた。


 離れの側をうろつく弟。最近は離れの使用人が護衛を呼んで本邸に送り届けている。シャーリーと出会わないようにしてくれているだけで、あちらは寄ってこようとしていた。

 鳳雛の学校の側にいたこともあったらしい。


 それだけやったなら、こっちは会いたくないのだと気づいてほしい。そして、弟は平民で姉は貴族だと理解してほしかった。


 兄弟でも立場が違う。不敬罪は成立すると弟は理解していなさそう。それをやると、人生レベルで大変なことになる。

 別に弟を不幸にしたいとか、恨んでいるとかではないのだ。もうとにかく、関わりたくないだけ。

 関わっていたら、きっと恨むようになるだろう。不幸を望んだとき、それを成せる立場にもある。


 関わらないのがお互いのため。


 言わなきゃ伝わらないけれど、そのために接触するのもイヤ。


 3歳だった弟を悪くないと思おうとしても、うらやみ、ねたみ、そねむ気持ちはある。

 普通の家に生まれて、まっとうに家族に愛されたかった。前世の家族がまともだったからこそ、今の母の異常さをより理解してしまう。


 直接の原因は弟ではないし、3歳児に姉の苦労を理解しろっていうのが無理がある。それは8歳に成長したところで同じだ。

 せめて弟が成人して、人生の挫折とか苦難をいくつか経験した後なら歩み寄れるかもしれない。

 伯父のいうとおり、歩み寄るのは今じゃなかった。母に愛された8歳児にシャーリーは歩み寄れない。


 木に登り、木に咲いた花を採取し、袋に入れる。誰にも見えないように袋の中で花を糸に変える。採取直後に糸にするのが楽でいい。保存方法を気にしなくてすむからか手間も減る。

 糸操魔術で作った糸だから勝手に売り買いできないので全部自分用になるけど、使い道は色々あるので問題ない。


 木登りは慣れた。魔術で身体強化すればかなり動けるし、滅多に使わないけれど腰の剣を重たいと思わないくらいには身体も鍛えている。

 今からでも、安宿でその日暮らしをする冒険者にならなれるだろう。贅沢になれた身では辛いが、弟のそばよりはいい。


 家出、しちゃおうかな。


 冒険者暮らしするよりは、鳳雛で奨学金を取って寮生活の方が現実的か。生活水準的にもそっちの方がいい。


 隣の木の葉っぱ色が綺麗だ。枝から枝に飛び移り、色鮮やかな若葉を袋に入れていく。色を活かすために属性は付けないで糸を生成する。


 朝から活動して、昼前くらいに知り合いを見つけた。


「スルス先輩、そろそろ昼休憩とる?」

「あー、もうそんな時間か」

「ルルちゃんちょっと奥に来すぎだよ」

「この辺り、狼より危険なのいるからね」

「1人でご飯食べてるよより安全かと思って、来ちゃった」


 飯食べたら戻れよといいながら、鳳雛上級学校の先輩たちは休憩に混ぜてくれる。

 それなり話したことのある相手でなければ混ざりにはいかないし、嫌な顔をされたらすぐ去るようにしていた。


 同じ場所にはいるけど、食事の準備は各自でするのが冒険者のルール。シャーリーは家から持ってきたサンドイッチと水筒に入ったお茶で、お昼にする。

 先輩たちは何か朝のうちに狩ったようで、串焼きをつくるようだ。森の中で串焼きは戦力的に余裕がないとやったらダメな行為になっている。


 食事中の見張りはエクラスルスの生得魔術で使役されている魔物がおこなう。人間より広範囲を見張れ、索敵を得意としている。

 伝令に使うように鳥も有しており、シャーリーは時々抜けた羽をもらっていた。


「スルス先輩、羊系の魔物使役して下さい。毛は買うので」

「オレ、君の為にデカい蜘蛛育ているの忘れてないか?」

「冒険者するよりいい収入になっているでしょ?」

「親兄弟には使役魔術は畜産魔術じゃないって嫌がられてるけどな。まあ、現役引退した連中はノリノリやってるからありがたいけどさ」


 最初は冒険者のスルスと冒険者のルルのやりとりだったが、今や使役魔術一門と糸操魔術一門の取引に発展している。

 エクラスルスは未だに蜘蛛だけだが、一門の取引では、芋虫の糸もやりとりされるようになってきていた。


「いい素材があると糸の質が違いますから。芋虫の方は食べ物で属性が変わらないか試験中なんですよね?」

「かなり微妙な変換みたいだけどな」


 そんな話をしながら食事をして、羊系の魔物を使役してほしかったら野生の羊を生捕にしてきてくれと言われてしまう。

 王都周辺には残念ながらいない。遠方の地で捕まえてくるよりは、放牧している所から買ってくる方が現実的なではある。

 ただ、わざわざ使役魔術一門がやらなくてもすでに飼育されているため、一門同士のやりとりにはなりそうになかった。


「食事中止、何か来るよ」


 敵がやって来る方向を示し、警戒をうながす。


「猪ぽいな」


 この世界の猪は大きい。四つ足で立った状態で成人男性より高い位置に視線がある。


「親子集団か」

「魔術撃っていい?」

「親は状態気にしなくていいから一撃で仕留めて」


 親猪が1頭と子猪が6頭が見える位置まで来た。突進してくる猪をよく引きつけて、エクラスルスの指示で雷の魔術を放つ。数歩動いてから倒れた。

 シャーリーは邪魔にならないように木の上に逃げる。そのまま先輩たちが子猪を倒すのを待った。


「ルル、降りてきていいぞ」


 討伐が終わったようで、木の枝から飛び降りる。


「ルルちゃんマジ優秀」

「もう少し冒険者をやれるならパーティーくみたい」


 ちょっと褒めてもらって、取り分をどうするか話し合う。


「持って帰ることを考えると、牙と爪と魔石かな。皮は重そうだし」


 食用にもなるが、皮以上に肉は重たい。


「なら、皮はもらっていいか?」

「解体、そっちでしてくれるならいいよ」

「面倒なとこ押しつけてきたな。まあ、皮もらうからいいけどな」


 食事を終わらせ、解体されるのを待っている間、シャーリーは近くて採取をする。

 巨木を見つけ、ロープを枝にかけて登る。外で糸操魔術は禁止されているが、ロープで誤魔化しておけば許容範囲内のはず。


 数百年以上生きた巨木の枝の上には、地上とはまた違う植物が芽吹いている。こちらは根こそぎ採取してしまわないように注意して、得る物と残す物を選択していく。


 夢中で選んでいたら、エクラスルスのメモを足につけて鳥が飛んで来る。シャーリーはするするとロープを使って地上に降り立った。

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