冒険者ギルドへ行きます。
教養学校は最初の1週間、昼で終わる。次の1週間は昼食の後に終わりとなり、その次からは午後の授業が始まる事になっていた。
選択授業の選び方や特別教室の使い方を教わり、一般教養の授業が始まる。最初の授業でシャーリーはツライと感じ、単位認定試験を早々に受けることにした。
どうやら貴族籍の子はみんな試験を受ける。他にも何人かクラスメートで受ける子はいた。これなら悪目立ちする心配もなく、単位認定を受けて授業免除を手に入れる。
単位の取得はそれですむが、学期ごとにある中間と期末試験は受けなくてはいけない。学年順位を出すために同じ試験を受けなくてはならなくて、奨学金生はこの順位次第では奨学金を打ち切られてしまう。
そのせいか、授業免除になった貴族籍の子は順位を落としがちだと、注意がくる。
でも、1から100まで数を数えましょうとか、教科書の音読とか、勘弁してほしかった。入試があったのに授業がそこからなのがキツイ。
授業は魔術系だけでも出ようと思ったが、こちらはこちらで家庭教師に授業を先行され過ぎていた。
「1年次単位取得おめでとう。興味の持てる選択授業を見つけて授業に参加をする事をお勧めします」
担任先生のお勧めは芸術分野だ。刺繍や彫刻といった授業もあるので人形改造に活かせそう授業は参加してみたい。
芸術分野は生徒が少人数になりやすいそうなので、先生が合わなければ受講はとりやめる。
「授業の方はゆっくり考えてもらえばいいですが、来月鳳雛祭があります。授業免除になった子にはこちらの準備をしてもらいたい」
他の学年はもう準備を始めているそうで、新入生だけがなんの準備もしていない。授業時間も他の学年より少なく、授業中に準備時間も取れないため授業免除になった生徒が例年準備をしているそうだ。
生徒会室に過去の鳳雛祭の記録があるそうで、何をやるか決めるために資料を借りにいく。向かうのは貴族籍4人で、他の生徒は授業免除の時間だけ手伝いに参加するそうだ。
「これって、あれだよな。貴族籍のヤツらに決めさせたら文句をつけられないっていう圧政?」
「授業免除にして遊ばせたくないだけじゃない?」
「わたし、授業免除の間に学内アルバイトしたかったのに」
「調子に乗りやすい貴族籍の子どもの鼻っ柱へし折るための課題でなければいいのですが」
愛人の子から本家入り。第一夫人、第二夫人、第三夫人ともに娘しかいないため、唯一の男の子として異母姉と後継者争い中の伯爵令息。
伯爵の被保護者である伯爵令嬢。養子にするより被保護者にするのは手続きが面倒だが、被保護者には爵位継承権はない。
才能を見出されて領主の養子となった男爵令嬢。
第一夫人に敵視されている第三夫人の子である男爵令息。
令息2人が、常にお家争いからの暗殺を警戒しないといけない事情を抱えている。シャーリーが大変ね、とつぶやけば、不特定多数の変質者から狙われるよりマシ、と返されてしまった。
生徒会顧問の先生立ち会いで生徒会資料室にはいる。どうやら例年1年生は教室で展示パネル置いているだけの様だ。
「お仕事紹介か魔獣紹介パネルばっかだな」
「魔獣の紹介パネルは図書館で調べてまとめたものです。おそらく労力は1番かかりませんよ。お仕事紹介はその職業についている親の協力ですね。たまに貴族のコネを生かしてその職業の方を連れてこられることもありますが」
顧問の先生の話に顔を見合わせる。
「親に頼める人いる? オレはムリ」
「第一夫人が騒ぐのでムリ」
「そんなことで領地から出てきてもらえないわ」
3人の視線がシャーリーを向いた。
「頼めば可能かもしれないけど、何を頼むの? メイドか運転手なら頼みやすい」
「ほかに案がなければそれで」
「糸操魔術一門の子に頼んでそれはガッカリだよ。そうそう外に情報が出てこない一門なんだよ」
生徒会顧問の先生がなげく。
「糸操魔術は見世物ではないですから」
だから家庭教師たちは入試で生得魔術による加点があることを黙っていた。伯父としては勉強期間も短いため、入学できれば順位は何番目でもよかったらしい。
「ねぇ、冒険者のお仕事紹介にしよう。学校の規則で来年まで冒険者登録できないと思っていたんだけど、理由があれば登録できるみたいなの。奨学金生も冒険者登録狙っている人多いから、展示パネルにしたら役に立つ情報よ」
男爵令嬢の力説に先生が口をはさむ。
「その理由なら、冒険者ギルドに社会見学の許可は出せても登録の許可までは出ません」
「冒険者が実際にどれだけ稼げるのかを重点をおけば登録できるでしょ。新米冒険者の得た素材の活用方法でもいいし」
「そこは担任先生と相談して下さい」
この感じだと登録は不可能ではない様だ。
生徒会資料室を後にして、職員室に向かう。男爵令嬢は少し浮かれている様だった。
「保護者の許可が得られるなら構わないが、何かと狙われている3人は許可がとれるのか?」
「オレ、外より家の中の方が危険なんで」
「同じく、家よりは安全」
「家の中の方が安全な子、どうする?」
「相談はしてみますので、申請書は下さい」
1人だけ仲間外れは嫌だ。
「そうか。護衛をつけるならそちらも申請がいるからな。書類だけ渡しておこうか」
シャーリーは1人だけ複数枚の申請書をもらう。教室に戻り、冒険者の話をすると乗り気なクラスメートは多かった。
授業免除をいくつかとっているクラスメートは担任の先生に許可申請書をもらいにいき、単位取得試験を受けるかどうか迷っていたクラスメートも冒険者登録したいとやる気を見せた。
どうやらこの世界、冒険者は人気らしい。シャーリーは今までそんな職業があるとは知らなかった。だか、知ったことで、前世の厨二心が復活の兆しをみせている。
護衛の都合をつけてもらった2日後、社会見学としてクラスメート8人と冒険者ギルドへ向かう。移動は二つの伯爵家の車だ。
5人の護衛についてこられたシャーリーはクラスメートから静かにひかれていた。
「お前、それはないわ。大人しく学校にいろよ」
「君は伯爵令息のクラージュくんで合ってるかな?」
「そうですが」
「君の家のご夫人たちとお話しさせていただきました。今日、うちのお嬢さまと一緒にいる間は安全ですよ。ボヌールくんもね」
「ありがとうございます」
男爵令息はすんなり受け入れたが、伯爵令息は疑いの目を向ける。
「糸操一門の当主は侯爵さまですから。護衛の2人も侯爵家からの出向です」
「シャリーネってめちゃくちゃ大事にされてねぇ?」
「そうね。そうとれば、心の平穏を得られるわ」
他の白銀の髪持ちは侯爵家に属している。立場的に1番狙いやすいのがシャーリーであり、性格も大人しいくて囲いやすいと見られていた。
「護衛の数が増えるのは変質者が出た証なのよ。それで、大事にされていると喜べというの?」
「まあ、そのなんだ、強く生きろよ」
とっても軽い励ましの言葉をもらった。
冒険者ギルドは王都に複数ある。これから向かうのは王都の西外門近くにある冒険者ギルドだ。ギルド周辺には量と安さが売りの食事処や宿と魔物の素材を売る店や加工する店が混在していた。
伯爵家所有の高級車は完全に場違いで、トラックが並ぶ駐車場にクルマが停まると、遠巻きに見られた。
慌てた様に冒険者ギルドの職員が出てくる。
「鳳雛教養学校の皆様、本日は社会見学にようこそ」
ギルド職員は出迎えには不釣り合いなほど大声で歓迎し、遠巻きにしている人たちに事情を知らせて見せた。




