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おしゃべり銀行6

作者: すずめのおやど

東京都江東区住吉駅そばにある「トークバンク」という喫茶店。ここにはいつも悩めるお客さんが訪れママに話を聞いてもらっている。


  千代まま編part5

 

 千代の咳は相変わらずで浅井先生はあまり飲ませたくないんだけど…と言いながら、オプソというモルヒネ系の、チューって飲むシロップのような薬を処方してくれた。この薬は看護師さんの管理のもと、6時間に1度飲む薬で千代ままがいる時間では2時に飲むことになった。


 6月に入ると、千代ままの1日が決まってきた。

朝8時頃、病院に来て身体拭きしてやり、11時にお昼の買い物に出かけ、お昼ごはんを食べ2時にオプソを飲ませ、3時におやつで、ビーフジャーキーやあたりめや、スニッカーズが入ったおやつ袋から食べたい物を選んで、冷蔵庫の飲み物と一緒に食べさせる。そしてすぐに夕ごはんで、千代が食べたい物をまた買いに行き、5時に夕ごはんを食べさせ、8時までのんびりして、千代に

「あと10分いいでしょ?」

と言われて、後ろ髪引かれる思いで帰る。とこんな1日だ。

千代が

「おかあちゃん最近腰のお医者さんにいってないね?」

と言うので、

「おかあちゃんは毎日千代の顔みれば元気、元気。」

と言うと

「上の引き出しに湿布入っているから取って?」

「湿布なんていいから。」

と言うと

「いいから!」

と上手くない貼り方で千代ままの腰に張り

「早く良くなれ。早く良くなれ。」

と、千代は、何度もさすってくれた。


「ねぇ、千代ちゃん、明日髪切りに行きたいんだけど、身体拭きおやすみでいい?それとも看護師さんにお願いする?」と千代ままが聞くと

「看護師さんは絶対嫌だ。いいよ。きれいになってきなよ。渋谷に行くの?」

「渋谷に行くよ。」

「んじゃ、東横のれん街で、なだ万かなんかのお弁当が食べたい。」

千代が食欲あるのは嬉しいので、

「迷子にならないといいんだけどね」

と答えた。

次の日、髪を切りそのまま東横のれん街まで行き物色したが、なだ万は高いわりにあまりおいしそうじゃなかったので美濃吉でお弁当と茶碗蒸しを買った。

千代は喜んでお弁当をぺろりと完食。茶碗蒸しも千代ままの分まで食べた。千代ままはやっぱり病院食だった…。


 もう6月の終わりになっていた。

ある日千代の友達の愛と、結婚したばかりの優がお見舞いに来てくれた。千代ままはデイルームから椅子を1つ借りて2つ並べて用意して、自身はデイルームで控えていた。

千代ままは、友達の健康さがうらやましかった。優の玉の輿も羨ましかった。なぜうちの子だけと思うと切なかった。


 浅井先生が、また「うさうさ」をもってきて、手際よく準備した。

「これで効いてくれるといいんだけど…。」

と言ってナースステーションに戻って行った。

しばらくしたら、千代の様子がおかしい。すぐナースコールした。ばたばたと点滴は外された。アナフェラキシーショックだった。不安がる千代を抱きしめ

「大丈夫だからね。何でもないからね。」

と千代に言ったが、自身にも言い聞かせていた。


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