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第六話 貴族令嬢に魔法指導?面倒事はお帰り下さい

続きです、どうぞお楽しみ下さい!

 なんだかんだと揉めたが、ベロニカにお仕置き(折檻)を食らわせて落ち着いた。


 出発の前日まで唯一の貴族男子は、僕がソドルスさんの師匠であるというベロニカの言葉を信じなかったので、ベロニカの提案により日課の模擬戦を見せる事になった。


 「てやあああっ!」

 「ほいっ、甘い甘い」


 カンカンと木剣の音が鳴り響いているが、カインとベロニカは互いに身体強化を使っている為、一般人では出せない身体能力を駆使している。

 ベテランの二人はきっちり目で追えているらしく、真剣な表情で模擬戦の動きを観察していた。


 「なあジェームズ、お前あの子達の動きに着いて行けるか?」

 「全力で走ってなんとか……けど、1分保てばいい方だな」

 

 貴族組の少年、少女達がギョッとした視線を送っている。

 彼等は王都から遥々カートス村までの道のりを歩んできたのだ。その間、魔物に襲われたり盗賊に狙われたりなどという事は一度や二度では済まなかった。


 勿論、貴族の子供達もトップグループという事もあり、十分戦力となっていたがベテランの二人から学ぶ物は沢山あったのだ。その二人から戦闘面だけとはいえ、1分保つのが精一杯という言葉を聞けばどれほどカインとベロニカの二人が異常なのかを身に染みて感じた。


 「見ろよ、ロバート。ベロニカのお嬢ちゃんは完全に息切れしてるのにカインさんは全く息が切れていない。」

 「確かに。さっきから続いてる二人の動きを見ても、ベロニカちゃんは全力だが、カインさんは全然余裕があるように見える。」


 唖然としながら見ていた護衛陣であるが、その中で一番頭の回転が速いカタリナがカインの事を『さん』付けで呼んでいる事に気づいた。自分達貴族の事を『様』と呼んでいた彼等だが、そこには心からの敬意はなく、一種の義務として呼んでいるように感じていた。

 この村にきて僅か数日で彼等の心を掴んでしまったカインに僅かながら嫉妬心を覚える。


 程なくしてベロニカが力尽き、カインが介抱する。

 決着が着いたのを見届けた護衛組が一斉に近づいてくる。


 「流石カインさんだな。けど、ベロニカちゃんも凄いな」

 「ああ、冒険者になれば戦闘面だけならB級でも十分やっていけるぜ」


 「本当ですか!? やったー!」

 「余りベロニカをおだてないで下さい。調子に乗ってしまいます」


 なにをー!とカインに汗を拭かれながらぷんすこと怒るベロニカ。

 そこに貴族組の四人が声をかけてくる。


 「お、お前、本当に強かったんだな。俺はこのゴリラ女が最強かと思っていたんだがな。」

 「誰がゴリラ女ですか失礼な! それに、私はベロニカって名前があるんですー!」


 「う、五月蠅い!お前なんかゴリラ女で十分だ! お前、カインって言ったな。僕はリーベ・シュヴェーアトだ! お前には負けないからな!!」


 カインにずびしっと指差し、謎の宣言を告げて宿でもある村長の家へ向っていく。

 ぼーっとその後ろ姿を眺めていると女性陣三人が話しかけて来た。


 「初対面の時は大変失礼致しましたカイン様。私、アリーナ・シルトと申しますわ。短い間ですが、明日からの旅を楽しみにしております」

 「では、私からも。カイン様、私、サブリナ・アルミュールと申します。以後よろしくお願いいたしますね」

 「……癪ですが、貴方が敬愛あるお兄様が仰っていた者であると認めざるを得ません。故に、一度しか言いません。しかと心に刻みなさい! 私はカタリナ・グリモワール。代々王国に仕える誇り高き魔導士ですわ!」


 「ええっと、アリーナさん、サブリナさん、カタリナさん、僕はカインです。短い間であるとはありますが、よろしくお願いします」

 「ベロニカです! 将来の夢は冒険者になって師匠みたいな英雄になる事です!」


 アリーナとサブリナはベロニカと打ち解け、和気藹々とお喋りをしている。


 「ところで、カイン殿。貴方、お兄様がこの村に滞在していた頃何やら手ほどきをされたそうですね? お兄様からの手紙には、それ以降高度な魔法を放つ時の負担が大幅に軽減したとか、威力が劇的な変化を齎したとか。――――これは魔法を代々研究し続けている我がグリモア―ル家にとってとても意義のある課題です。そこの所、貴方はどうお考えかしら?」


 その視線には教えないなんて在り得ないよなぁ? アァン!? という迫力に満ちていた。

 だからこそ、僕が言う答えは一つだ。言え、言うんだカイン!


 「カタリナさん達は護衛任務でこの村へ来られたんですよね? 貴族のお嬢様に手ほどきとか恐れ多いのでお帰り下さい。それでは」


 ふっ、決まったな。平凡な村人はクールに去るぜ……。

 そう思っていたのだが、後ろからガッ!と肩を掴まれた。


 馬鹿な! 足が縫い付けられたかのように動けないだとぅ!?

 おまけに掴まれた肩がミシミシと嫌な音がしている。この人本当に華奢なお嬢様なのか?


 「逃 が さ な い ですわよ! まさかこんな所までお兄様の手紙通りの殿方とは思いませんでしたわ! この二週間、絶対に指導させて見せるんですから覚悟しておくのですわ!」


 こちらも謎な宣言をされ、ふんすふんすと鼻息荒く、村長宅へと歩いて行った。

 サーフェイスさん一体僕の事どんな風に説明していたのやら……。

 アリーナさんとサブリナさんもベロニカとの会話を切り上げ、カタリナさんの後を追うように去って行った。


 「カタリナ様は王国の中でも魔法の名門の一つ、グリモワール家の次女で学院の中でも有望株なんだってよ」

 「へ~、そうなんですね。そっか、周りの期待に応える為にあれだけ必死に技術を磨こうとしてるんですね。ちょっと僕にはわからない世界ですけど……。」


 ジェームズが近づいてきてカタリナの事情を語る。


 「ああ。それにその兄が賢者様だろ?鼻が高いが、その分自分も追い込み気味な性格になっちまったらしい。自分にミスがあれば尊敬する兄の名前に泥をかけちまうってな」

 「二年間一緒に過ごした限りでは、サーフェイスさんはそういうの気にしない人だとおもいますけどね」


 「例え本人がそうであっても、周りの連中がそう判断するとは限らねえのさ。特に貴族って連中はな」

 「なんだか堅苦しいですね。僕だったらすぐに投げ出して逃げちゃいますよ」


 俺もだ、と笑うジェームズさんはいつの間にやら模擬戦をしているベロニカとロバートさんに混じっていく。

 貴族に深く関わるもは面倒だとはいえ、絶対あの様子だと放っておいてくれないよなぁ……。


 『ねえ、カイン。あの子、風の精霊に凄く好かれてるぽいけど気づいていないのかな? ずーっとあの子の肩の上に座っていたでしょ?』

 ふわりといつもの定位置に覆いかぶさりシャルが話しかけてくる。

 

 ――――やっぱり見間違いじゃなかったか。実を言うと、最初から気づいていた。

 

 だって、カタリナさんの肩の上にいたあの子、僕の事ずっと見ていたしね。ちなみに、サーフェイスさんには火の精霊がくっ付いており、魔力操作の指導のついでに精霊の存在も教えてあげたのだ。


 正直、あの時のサーフェイスさんのテンションはヤバかった。普段のクールなイメージがぶち壊しになるくらい興奮していたからなあ。


 『あの子にも精霊の存在を教えてあげればいいじゃない。きっといいパートナーになるわ』

 「まぁ、探求心は凄そうだから、認知できるようになれば励みになるかもしれないな」


 精霊は本来、人間の傍には近寄らない。自然に生きる彼等は人込みを嫌い、自然の中で伸び伸びと生きる事を好むのだそうだ。基本自然と共に暮らしているエルフやドワーフという亜人種は例外として精霊との親和性を持ちやすいんだそうだ。


 故に人族に精霊が傍にいるのは極めて稀であり、僕自身そういった人を見るのはサーフェイスさんに続いて二人目だ。


 『ふふっ、こうしてカインの成り上がり冒険譚が綴られていくのであった!』

 「やれやれ、面倒事はお断りなのでお帰り下さい」

 

 これからの二週間、どうなるやら不安だ。

読んで頂きありがとうございます。


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