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第三話 魔王御一行様、お帰り下さい

筆が乗ったのでもう一話どうぞ~

 勇者一行からの弟子入りを一刀両断したカインだが、それ以降しつこく弟子入りを懇願された。


 畑を耕していれば

 「いよう、カイン!精が出るなあ、むっ、こうか? こうか!?」


 とソドルスがカインの真似をしてきて。


 昼食を摂ろうと休憩していると

 「お疲れ様ですね、カイン君。私の膝でよければお借し致しますよ?」


 と、妖艶な表情と仕草でマルタが寄ってきたり。


 「どおりゃああああ」

 「次は腹筋500、その次に腕立て500ですよ!」


 半強制的に育成プランを考えさせられてそれをこなすマルスとサーフェイス。


 正直、カインとしては騒音以外の何者でもない。どうしてもメリットを探せと言われれば――


 「凄いわカイン! 勇者様達のトレーニング風景が見れるだなんて私達幸運ね!!」


 このようにベロニカが大喜びしている事ぐらいだろうか?

 一応、僕がソドルスさんに勝った事は黙ってくれているようで、村の人達には旅の疲れを癒すための長期滞在という事になっているらしい。


 村への対価として、村に隣接している森にいる魔物の駆除を引き受けているそうだ。


――――そんな日から一月が経とうとしていた時


 「な、なんだ!? 森の奥から途轍もない強力な魔力を感じる」

 「こいつぁ並の魔物じゃねえぞ……油断すんなよお前等!」

 「なんて禍々しい魔力なんでしょう」

 「もしや魔族でしょうか……?我々の行動を警戒して牽制に来た?」


 勇者パーティは各々の武器を構えて警戒を高める。

 この日はカインも同行しており、四人の後ろで庇われる形になっている。


 「ふっふっふっ、貴様等が予言にあった勇者共か」


 強大な魔力を持った存在がカイン達の前に現れ、勇者達を威圧する。


 「ぐっ、貴様何者だ!? 名を名乗れ」


 「我こそは魔王ダグラス。 魔国を統べる者也」


 魔王。それは人族とは違い、強力な魔力を持って生まれる種族、魔族達の王。

 有無を言わせぬ威圧さと力強さを感じさせる男がそこには居た。


 「魔王だって? まさか俺達を殺しに来たのか!?」

 「ふん、貴様等如き人間なぞ我が四天王だけで事足りるわ」


 パチンと魔王が指を鳴らすと、魔王の後方に魔法陣が展開される。


 「お呼びですか、魔王様」

 「あらあ~、随分可愛い子達ねぇ~」

 「魔王様、ご命令を」

 「あぁぁぁぁ……眠い、寝かせてくれぇえ」


 明らかに一人やべー奴がいる。顔面隈だらけだしどう見ても不眠症だ。


 「うむ。少し気晴らしに人間側の地に足を運んでみれば興味深い者を感知してな。有能な者ならば誘致しても良いかと思って貴様等を呼んでみたのよ」

 「我を支えてくれている貴様等の意見も聞いてみたいと思ってな」


 なるほど、と呼び出された魔族達は納得したのかこちらを観察してくる。


 「ふーむ、魔王様。お言葉ですがこの者達は噂に聞く勇者どもでは?」

 「あ~、確かそうだわ~。手下達から挙がってきてた報告書の特徴と一致するわねえ」

 「むっ、ではこやつらは敵か」

 「どうでもいいから寝かせてぇぇぇえ」


 四天王と思われる連中から勇者一行への評論会が行われている。


 「貴様等の眼は節穴か? 勇者どもの後ろにいるではないか。我に匹敵する実力者が」


 ピリッと緊張感が走る。四人の視線が一斉にカインへと注がれる。

 その視線を感じ取ったカインもまた警戒レベルを数段上げる。


 「……これは予想しておりませんでしたな。」

 「あらあらあら……あの子すっごい私好みなんだけど」

 「ぬう……強い、な」

 「……警戒レベルを最大に設定。気をつけられよお三方」


 「くっくっくっ、ようやく気付いたか。小僧、名はなんと申す。名乗る事を許そう」

 「……カイン。僕の名前はカインだ」

 『私はシャルロットだよ~』

 

 カイン(と一応シャルロット)が名乗りを上げると四天王達も返名してくる。


 「我は魔王軍参謀グラハス」

 「私は魔王軍魔法兵団長メリベルよん」

 「我が名は魔王騎士団長ガレオン」

 「余の名は魔王軍経理師団長ヨグルス」


 「さて、互いに名乗りを終えた所で本題といこうか。カインよ、我が元へ来る気はないか?」

 「お断りします」

 『だよね~』

 

 カインは即答で魔王からの勧誘を断った。シャルロットはカインなら断るのは当然だと頷く。


 「ほう。この魔王からの誘致を断るとは中々肝が据わっているではないか」

 「それはどうも。だけど、どうも貴方の下へ行くと苦労しかしない気がしてならない」


 四天王が全員ピクリと反応する。


 「どういった根拠でそのような事を述べているのだ」

 「なんでって……貴方の持つその魔杖が物凄く警告してきてますので」


 そこでずっと黙っていたマルスが口を挟む。


 「おい、ちょっと待てカイン!まさか魔王の杖にまで精霊がいるのか?!」

 「ええ、聖剣や聖杖が光の精霊だとすれば、あちらは闇の精霊ですけどね」


 傍から聞いていた魔王がにやりと嗤う。


 「ほう、面白い小僧だ。ならば問おう。我が魔杖は貴様に何と告げている?」

 「えっ、3徹は当たり前、我儘な政策三昧で四天王は胃薬が友達、特に経理師団長は一週間寝ていないとか?」

 『正直精霊でもドン引きなぐらいブラックでした。本当に有難うございます』


 カインの言葉を聞いて四天王は全員が愕然とする。カインの述べた内容は全て事実であり、それは傍でも続けて来た者しか知り得ない事だからだ。

 闇の精霊からの警告に流石のシャルも真顔にならざるを得ない。


 「ふっはっはっはっ!いや、すまんな。まさかそこまでピタリと答えられるとは思わなんだ」


 先程までの強烈な威圧感が薄れ、勇者一行は全員が肩で息をしている。


 「そんな訳で、僕は貴方の下へ行くつもりはありません。どうぞお帰り下さい」

 「しかし貴様のような面白い人材をはい、そうですか。と切り捨てて帰る気にはならぬ」


 先程以上にビリビリと威圧感がぶつかり、空気が振動する。


 「そうだ、手始めに勇者共を手に掛ければ貴様は我に降るか?」

 「そんな事させる訳がないでしょう。彼等は僕なんかと違って人々の希望。そう易々と手に掛けれると思わない事です」

 『そーだそーだ、やっちゃえカイン~!』


 次の瞬間、二人の距離は一瞬で縮まり互いの武器がぶつかり合っていた。

 四天王達も勇者達も衝撃の瞬間後方へと距離を空ける。


 幾度となく斬撃が交差し、あっという間にカインが持つ剣は寿命を迎えへし折れる。

 元々が並外れた剣戟のぶつかり合いだったのだ。行商人から購入した何の変哲もない鉄の剣ならよく保った方である。


 「さぁ、どうする?貴様の獲物は失われたぞ?」

 「仕方がない……ちょっと疲れるけど――『精霊憑依(トランス)』」

 『ひゃっはー!久しぶりのカインとの合体だー!』


 戦いを見届けていたシャルが僕と同化する。

 戦闘時の僕の奥の手だ。ぶっちゃけ凄く疲れるので余りやりたくないが今はそうも言っていられない。


「ぬっ!? なんだ? 小僧の魔力が跳ね上がっただと!」

 『「おりゃあああああああ」』


 先程までの拮抗が嘘のように魔王が押される。

 しかしカインの怒涛の攻めもそう長くは続かない。


 『「はぁ、はぁ、はぁ」』

 「ふぅ、ふぅ、ふぅ」


 「全く、面白い小僧だな。我がここまで全力を振り絞ったのはいつ振りか」

 

 とても楽しそうに笑う魔王。そうこうしている間にカインの『精霊憑依』も解けてしまう。


 「どうやら貴様の奥の手とやらはそう長くは続けられなかったようだな」

 「まだまだ未完成な技でね。追々完成に近づけるさ」


 お互いに満身創痍。最悪共倒れになりかねない。

 しかし、そこは王。引き際は弁えていたらしい。


 「我が部下達よ、我はこの者を手中に収めれば我が陣営は盤石になると思うがどうか?」


 「私としましてはここで始末しておきたく存じますが……止めておきましょう。私では勝てそうにありません」

 「いいじゃない、いいじゃな~い!私は増々気に入ったわ!!」

 「魔王様と互角に渡り合える者がいるとは予想外。我等が陣営に降るならその力、魔王軍にとって強力な矛となろう」

 「心から魔王様に忠誠を誓う成らば歓迎しよう。しかし矛を向けるならば全力で私が相手となろう……あっ、やっぱりなしで。ラブアンドピース!」


 最後の一人は本当に何を言いたいのかわからない。

 しかし、雰囲気的にこれ以上戦闘をするつもりはないようだ。


 「カイン、貴様は我の……いや、俺の物にする。心して待つがよい」

 「ホモはお断りです。魔王一行様、とっととお帰り下さい」


 対話が終わると、魔族五人の足元に魔法陣が浮かび上がり姿を消した。


 「はー……疲れた」

 『全くだね~。今後はお尻も守らないとだね!』


 それは嫌だ。物凄く嫌だ。寒気がする


 「カイン、君はとんでもねえ奴に目を付けられたな」

 「全くですよ。早くあの変態をやっつけて下さいよ勇者様」


 溜息混じりにカインはマルスに愚痴を零す。

 マルスは苦笑いしつつ、自身の仲間に視線を移すと――――。

 

 「あのメリベルって魔族カイン君を狙ってる? 許せないわ、カイン君の初めては私のモノよ」

 「ガレオンって奴とは剣を交えてみてえなぁ。その為にも強くならなくちゃいけねえな!」

 「魔王軍参謀グラハスですか……知恵比べをするには相手にとって不足なしですね」


 残りの勇者パーティの思考も混沌と化していた。

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