第十二話 オリヴィエ先生からの奴隷のいろは!脳筋はお呼びじゃないので帰りたい
続きです。ついでに前話の話数がひとつズレていたので修正しました。
大金を支払い奴隷を得たカインとベロニカはギルドを目指して町中を歩いていた。
何故か通りすがりの人達がこちらを見ているのが気になった。
一時間程歩いて無事にギルド前に到着し、建物の中へと入る。
ギルド内では人が減っており、受付で待っている人はいなく、オリヴィエがカイン達に気づいたのか、視線が合った気がした。
カインが先頭に歩き、ベロニカ、フィリス、リリィの順で着いてくる。
「カインさんにベロニカさん! もうお仕事を終えられたんですか?」
「ええ、まぁ。ただちょっとトラブルがありまして……。」
おっとりした態度からキリッとした歴戦の受付嬢の顔つきに変わる。
「詳しく聞きましょう」
何故か目が細まり、机に肘をつき手を組み顎を乗せ、変なポーズを取り出す。
「えっと、教えて貰ったルートの半分ぐらいまでは順調だったんですけど、そこで問題が発生しまして――」
そこで一旦言葉を切り、フィリスとリリィを自分の前へと引っ張り出す。
「彼等がスライムの大群に襲われていて、僕とベロニカが援護に入り討伐したんですよ」
「そうそう。もうウジャウジャいて気持ち悪かったよー」
僕の説明にベロニカが自身の感想を合わせてくる。
しかし、そこでオリヴィエさんの動きが固まり、反応しなくなる。
「あの、おーいオリヴィエさん? 大丈夫ですか?」
「八ッ! 滅多に御目に掛かれない金狐族を見た気がしましたが気のせいでしたか」
「いや、目の前にいるじゃないですか」
「なぁあんでええええええ!? 獣人の奴隷の中でも金狐族はかなり珍しいんですよ!?」
オリヴィエさんの話によれば、獣人の奴隷とは貴族にとってはステイタスであり、装飾品のようなものらしい。連れている獣人の種族やステータスで貴族の格を図る場合もあるんだとか。
「そうなんですね。でも心配しないで下さい、この二人は僕とベロニカで購入してもう奴隷契約も済ませていますので」
「むしろ心配しかありませんよ!? なんですか! 実はカインさん貴族のお坊ちゃんだったんですか!? 結婚します!?ピチピチの18歳がここに居ますよ!?」
大分混乱しているらしい。オリヴィエさんの言っている意味がまるで分からない。
後ろにいる筈のベロニカから冷たい視線を感じる。この話は長引かせるとまずそうだ。
「僕もベロニカも只の平民ですよ。偶々大金を持っていて、勢いで彼等を買ったんです。話を戻しますけど、彼等を助けた後探索を続けて依頼を終えた後に奴隷商で契約の手続きをしたといったところです。」
「ほえー、珍しい事もあるものですねー。取り敢えず先に依頼の件を済ませてしまいましょうか。ギルドカードの提示をお願いします。」
オリヴィアの指示に従いカインとベロニカはカードを渡す。
「はい、確認が取れましたのでこちら、報酬の1500リンです」
「有難うございます。後、可能でしたら奴隷についての基本みたいなもの教えてくれる方はいませんか? 急な購入でもあったので奴隷制度の事しか説明を受けていなくて」
「なるほど――丁度もう少しで今日の私の業務時間が終わりますので、それまで時間が問題なければ私が説明してあげますよ」
「それは助かりますけど、いいんですか? オリヴィエさんの時間を潰してしまうんじゃ?」
流石に業務外でオリヴィエさんに迷惑を掛けるのは気が引けるしなあ。
「ふふっ、構いませんよ。私も落ち着いて金狐族を見てみたいですから役得というものです」
「まあ、オリヴィエさんがそう言うなら――――。」
「あっ、奴隷でも冒険者登録は出来ますが、奴隷の二人は今後、冒険者になる予定はありますか? 登録する予定があるならこの際、一緒に手続きもしてしまいますが」
「うーん、フィリス、リリィ。君達の登録をしてしまおうと思うけど、問題はないかい? もし嫌なら他の手立ても考えなきゃいけないけど」
「「お願いします!!」」
僕が念の為フィリスとリリィに確認すると、二人は目を輝かせて登録を懇願してきた。
この国では獣人のみでの新規登録は認めておらず、奴隷か誰かの推薦がなければ冒険者にはなれないらしい。どこまでも獣人の地位が低い扱いで気が重たくなる。
ベロニカも同様なのか、獣人の扱いのひどさに憤りを感じているようだ。
「一度登録さえしてしまえば、後は実績を積み重ねて文句を言わせないようになればいいんですよ。まあ、私個人としては余りこういう扱いは好きではないんですけど、規則ですのでね」
「いえ、そこはオリヴィエさんが気を病む事ではないですから気にしないで下さい」
そうこうしている内に手続きを済ませ、僕達はカウンターを離れて端にある椅子に腰を落とす。
そこで何故かフィリスとリリィが床に座り込む。
「どうしたの二人共? 椅子に座ればいいじゃない」
「いや、奴隷の俺達が主である二人と同じ立ち位置に立てないだろ」
「そうです。基本奴隷は主人より視線より下か後ろが基本だって聞きました」
ベロニカが疑問に思い二人に尋ねると、予想もしていなかった返答が来て困惑する。
そんな中、業務の引継ぎを終えたオリヴィエさんがやってきて椅子に座る。
「さて、それじゃあ話をしよっか」
「その前にオリヴィエさん、フィリスとリリィの二人が床に座るのは奴隷の常識だと言ってるんですがそれは本当ですか?」
少し納得がいかない僕はつい語気を強めてオリヴィエさんに尋ねてしまう。
「うーん、何も知らないなら困惑するでしょうね。けど、大変言いにくいけど彼等の言っている事は本当よ。獣人の奴隷は愛玩具か装飾品として扱われる事が多い関係で、常に主人を立てるように調教されていると聞くわ。」
「どうしても同じ目線でいて欲しいならそう命令するしかないわ。主人の命令は設定内であれば絶対厳守のはずだからね」
僕とベロニカは顔を見合わせ、お互いに頷く。
「リリィ命令だ。僕達同様椅子に座れ」
「フィリス命令よ、私達と同じように椅子に座りなさい」
すると、のそのそと二人は立ち上がり椅子に座る。何処か落ち着かなさそうだが慣れて貰うしかない。
「よし、じゃあ何が知りたい?」
「まずはこの国の獣人の扱いについてや街中で気を付ける事、後は戦闘訓練が出来る場所とかですかね」
「獣人についてはわかるけど、戦闘訓練はどうして? 獣人は幼い頃から戦闘訓練を積んでいるはずだからそれなりに戦えると思うんだけど」
「現時点では僕やベロニカと実力に差があり過ぎます。それにスライムの大群にも対策が出来ていなかった。そこで戦闘の基礎知識を教えて貰える場所がないかと思いまして」
なるほど、と納得したのか、オリヴィアさんがうんうんと頷く。
「戦闘に関して基礎知識を学習しようとするのはとても大事な事よ。幸いギルドには新人冒険者に対しての戦闘講習というシステムがあるの。一通りカリキュラムをこなせばF級なんてすぐに昇格できるようになるわ」
「そんなものもあるんですね。じゃあ明日にでも僕達四人受講できますか?」
「いいわ、手続きは簡単に書類を纏めるだけだからこっちでやっておいてあげる」
「「「「お願いします」」」」
話を聞かせて貰えたお礼に夕飯を奢り、四人で食事をした。その際にも奴隷の二人は中々食事を口にしようとせずひと悶着があり、最後には泣きながら夕飯を食べていた。
宿に戻るとカートス村の三人はそれぞれ住み込みで働く場所を見つけ、今日からそちらで泊まるからと部屋を出て行ってしまったので、折角なので僕達四人でベッドを使う事にした。
フィリスとリリィはベッドで寝る事にまたしても感涙の涙を流していた。
――――翌日。
僕達四人は身支度を整え、冒険者ギルドへと訪れた。
相変わらず人で溢れており、窓口で新人講習の事を尋ねる。
「すみません、昨日オリヴィエさんに新人講習をお願いしていた者なんですが」
「はいはい、君達が噂のブルジュワ新人君だね~?聞いてるよ。私はカルディナ、よろしくね」
「僕はカインです。よろしくお願いします」
「私はベロニカ! よろしくね!」
「フィリス……だ、です。」
「リリィ……です。」
お互いに自己紹介を済ませると、カルディナさんが着いてきてと歩き出し、僕達は後を追うように歩き出した。
少し進むと、大きな広場になっていた。辺りを見渡すと壁には様々な武器が掛かっており、広場の中央には何故かギルマスであるゴンザレスさんが腕を組んで立っていた。
「よく来たなカイン少年、ベロニカ嬢。そしてひよっこの子狐共」
僕達四人は困惑していると、カルディナさんが止まらずスタスタとギルマスの下へと歩いていく。
「何子供を威圧しているんですか、むさくるしい!」
と言い放ち、流れる動きでボディブローを決めた。
「ごふっ!」
「全く。昨日オリヴィアからカインさん達から新人講習の受講希望があったと聞いて、無理矢理担当を変わったと思ったら何アホな事をしているんですか」
「いや、こうでもしねえとあいつの弟子と戦えねえじゃねえか」
「知りませんよそんな事! あの方の弟子という人に気持ちを高ぶらるのはわからなくもないですが、きちんと仕事はして下さい!」
「ああ、それは勿論だ!」
話が纏まったのか、二人は喧嘩を辞めてこちらに振り向く。
「改めて、今回の指導官であるゴンザレスだ。ドンと胸を借りるつもりで突っ込んで来い!」
「不本意ではありますが、サポート役のカルディナです。一応このむさい男の弟子でもあります」
ちらっと隣を見ると、呆然としているベロニカ達。凄い不安なんだけど、帰っていいかなぁ……。
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あつまれどうぶつの森を買ってきて夢中になってました。




