表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

リストランテ・トンド

作者: A26

ジャンル:ほのぼの

唯:♀

まる:不問

唯「はぁ・・・今日も終電かあ。(息を吸う音)・・・いい匂い・・この辺のお家、かな。いいなあ、私もあったかいごはん食べたいなー・・ん?何だろこの看板。『リストランテ・トンド』・・・え、24時間営業?!・・・(唾を飲み込む)」

ドアを開ける

唯「す、すみませーん・・・」

まる「ベンヴェヌータ!こんばんは、お嬢さん。」

唯「ベ、ベン・・・?」

まる「ベンヴェヌータ、ようこそって意味だよ。僕の生まれ故郷の言葉さ。」

唯「へ、へえ~・・日本語凄くお上手ですね。」

まる「ありがとう。長く住んでいたからね。さあさあ、お腹空いてるでしょう?とびっきりのディナーをふるまってあげるよ!」

唯「あ、ま、待ってください!私今そんなに・・その・・・」

まる「もしかしてお金のこと?あーダメダメ!そんなの全然心配ないよ!僕は君からお金を取る気はさらさらないんだからね。」

唯「え?!待ってください、それってどういう意味・・・」

まる「もーとにかく、ほら!ここに座って!」

唯「わわ!わかりました・・・」

まる「さて、君のお気に入りは『お味噌汁』だったかな?」

唯「メニューにあるんですか?!・・・リストランテってイタリアの・・・」

まる「難しいことは気にしない!僕は作りたいものを作るし、僕の作りたいものは君の好きなものだからね。それに、僕もお味噌汁の具が大好きなんだ。」

唯「ふふ、そうなんですね。」

まる「そ。だから何にも気にしなくていいよ。ちょっと待っててね、すぐに準備するから。」

まる「お待たせ!一人で寂しくなかった?」

唯「はい、お店の素敵な内装を眺めてたらあっという間でした。」

まる「はは、褒めるのが上手だね。嬉しいよ、僕なりにこだわったんだ。じゃあ、もうひとつ僕のこだわりを見てもらおうかな。」

唯「わあ・・・美味しそう・・!」

まる「君が好きそうなものを詰め込んだ渾身の和食。リストランテで和食ってちぐはぐだけど、それもまたいいでしょ?」

唯「・・・・・」

まる「ん?どうしたの?もしかして苦手なものとか入ってた?」

唯「いえ・・・私の好きなものばかりです。」

まる「そう?それならよかった。」

唯「私・・・最近コンビニのお弁当とかインスタントばかりで。勿論それもおいしいんですけど、人が作ったものをたべるのがすごく久しぶりだなって思って・・・」

まる「そっか、泣いて喜んでくれるなんて嬉しいよ。」

唯「え、あ、ごめんなさい!わたし・・・」

まる「いいんだよ!そんな君もとってもキュートだしね!でも、笑顔の方がもっと可愛いと思うな!」

唯「え、ええ・・・?(ちょっと照れて)」

まる「ほら、冷めないうちに召し上がれ?僕の料理は冷めても美味しいけど、温かいうちに食べるのが格別なんだ。」

唯「はい・・・。・・・ん、美味しい・・・不思議、私が昔食べてたお味噌汁と同じ味がする・・・」

まる「ふふ、世界一嬉しい言葉だね。」

唯「(少し笑って)私が一人暮らしをする前、実家でお母さんがよく作ってくれたなあ・・・、うちで猫を飼ってて、その子がよく料理の邪魔して具材を食べちゃったりして」

まる「・・・へえ、猫かあ。なんて名前をつけたんだい?」

唯「まるっていうんです。捨て猫だったから拾った時はやせ細ってて・・・まるまる太って欲しいっていう意味を込めて」

まる「ああ、そういう意味のまるだったんだね?なるほど。・・・実はね、ここの店の名前もまるなんだ。」

唯「そうなんですか?」

まる「リストランテ・トンド。トンドっていうのは丸っていう意味でね。太ってる、とは違うんだけど。」

唯「へえ!すごい偶然ですね・・・!」

まる「本当にそうかな?」

唯「えっ?」

まる「さあて!ディナーの邪魔しちゃあ悪いから僕は厨房にいるね!何かあったら声をかけて!」

唯「あの、本当にいいんですか・・・?少しだけでも・・・」

まる「いいのいいの!最初に言ったでしょ?僕は君からお金を取るつもりはないんだよ。」

唯「でも・・・」

まる「まったく君のそういう律儀なところ嫌いじゃないけどね?ちょっとは甘えてくれてもいいんじゃないかい?」

唯「で、でも初めて会った方にそんな・・・」

まる「初めて、ね。僕は君と初めて会った気がしてないからなあ」

唯「な、なんですかそれえ」

まる「ふふ、本当だよ?・・・それじゃ、気をつけて帰ってね唯。さようなら。」

唯「ありがとうございました!また来ますね・・・!」

唯「あれ・・・私の名前、言ったっけ・・・?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ