1話 俺の席は占領されている
初投稿のすみいです。
今回書かせてもらうのは、はっきりいうととあるゲームの影響を受けています。
かといってパクリでもなく、自分なりの作品に仕上げていけたらいいなと思っています。
一応最初のほうは1日1~2話ペースで投稿していく予定です。
よろしくお願いします。
「ねー、夏休みどうしよっか!夏休みが受験前最後の遊ぶチャンスだよ~」
「いや、受験前なんだから勉強しなよ...」
「息抜きよ息抜き~。人間、根詰めてばかりじゃ疲れちゃうよ~」
「私は海行きたい!2人とも新しい水着買いに行こうよ!」
俺が教室に帰ってくると、クラスの中でもひときわ目立つ女子たちの声が聞こえてきた。
彼女たちがしゃべっているのは俺の席の周り、つまり一言でいうと占領されていた。それ自体はよくあって慣れてはいるが、悪目立ちはしたくない以上、おとなしく俺の席が解放されるのを待つのが良策だ。
「大変だねぇ、藍斗くんも」
ふいに後ろから声をかけられた。一瞬誰かと思ったが、よく考えるとこの教室で俺に声をかけるもの好きは1人しかいない。
「そう思ってるならあの席を奪い返してきてほしいんだけどな」
そういって声の主のほうを向く。すると、予想通り小悪魔的な笑いをしている少女であった。
「それは別にいいけど、藍斗くんに言われた~って言っちゃうよ?」
「...やっぱりやめてくれ、俺がどんな目で見られるか分かったものじゃない」
俺のクラスでのヒエラルキーは下の中ぐらいである。目立つわけでもなく友達が多いわけでもないが、かといっていじめなどの対象であるわけでもない。一方、俺の席を占領している女子たちはクラスの中でも上の上。つまり俺なんかが意見をした日にはめんどくさいことになるのがわかっているのだ。
「まあいいよ、ほかでもない藍斗くんのためだから私が人肌脱いであげましょー」
そういって小悪魔少女、清川天音は俺の席のほうへ歩いて行った。何を隠そう、彼女は俺の席を占領している女子のグループの一員、つまり上の上の人間なのだ。
そんなやつがどうしてなのかいまだわからないが、よく俺に話しかけてきていた。
「りっちゃん、りっちゃん、そこ、誰かの席だろうしそろそろ昼休みも終わるからだおいてあげた方がいいんじゃない?」
清川は俺に宣言した通り、どうやら解放しに行ってくれたようだ。
「あ~、もうそんな時間か。そろそろ歯、磨きに行こうよ」
りっちゃんと呼ばれた女の子のその一言で昼休みの談笑タイムはいったんお開きとなり、グループ4人でぞろぞろと教室を出て行った。
こうして俺の席は占領から解放されたのであった。
一つ問題があるとするならば...りっちゃんのお尻のぬくもりが机に残っていることであろうか。
そのぬくもりで一瞬躊躇したが、俺は残りの昼休みを体力回復に使うべく、睡眠に使うことに決め、机に突っ伏した。
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side天音
私がトイレから教室に戻ってくると、入り口付近で悲しげな表情で自分の席を見つめる、1人の男の子がいた。
彼の名前は、辰巳藍斗。クラスの中でも存在感は薄いほうで、彼がクラスの人と話している姿はあまり見たことがなかった。
私と彼は中学のころから同じクラスで、なんと6年も連続で同じクラスという奇跡が起きていた。そのおかげか、人にあまり興味がない彼でも私の名前は覚えてくれていた。中学の頃は同じクラスでも全くしゃべったことがなくて、たぶん名前すら認識されていなかったけど、卒業の時にようやく話しかけることができて、高校に入って少しずつ私から話しかけるようになって、ようやく名前を憶えてくれるようになった。ここまでの道のりは本当に長かった。
いまでも仲がいいかといわれると微妙だけど、私としてはもっともっと彼と仲良くなりたいと思っている。
だって私は...彼が好きだから。
だからこそ私は今日も軽いノリで彼に話しかけに行く。少しでも彼が話しやすいように、彼の印象に残るように。がんばれ私!
自分に気合を入れて教室に向けて一歩足を踏みだし、彼に声をかけた。
「大変だねぇ、藍斗くんも」