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短編

どうやらタイムリープをしているらしかった(コンマで)

作者: ささななぎぎぎ

 気がついたら不思議な世界にいた。

 いやそれはいつもの登下校で通る道なのだが。

 じゃあ何が不思議かって、歩き出そうとしているのに、全く動けないんだ。

 空中に浮いた片足が少しだけぴくぴくと前後しているから頑張れば動けるかもしれないが。

 ……あと気になっていることがある。

 電線の上にいる鳩だ。


「ポポポポポポポポポポ」


 ずっと変な鳴き方をしている。


「ポポポポポポポポポポ」


 正直うるさいし、気味が悪い。

 あれ、本当に鳩だろうか?

 目だけはなぜか自由に動かせるので観察する。

 確かに見た目は鳩だった。

 周りをみてみる。

 人がいるなら助けてくれるかと思ったが、いないようだ。

 僕は一人で固まって足をぴくぴくさせるのみ。

 ……どうすりゃいいのさ。


〜〜〜〜


「ポポポポポポポポポポ」


 時間はかなりたったと思う。

 どのくらいかはわからないが、体感だと一時間。

 その一時間で気がついたことは、鳩の鳴き声と僕の足のぴくぴくがほぼ同じリズムを刻んでいること。

 あと足を前に出した動作は目に見えるのに、後ろに下がる動作が見えず、瞬間移動するように後ろに下がっていることだろうか。

 ちょっと実験をしてみようと思う。

 前に足を出すのではなく横に出そうとしてみた。

 無理やりだったが意識している間は足を横にぴくぴくさせることができた。

 今度は足を上げようとしてみる。

 足は上下にぴくぴくした。

 動かそうとしなければ前後にぴくぴくする。

 ……どう動かしても、同じ場所に戻ってきて、動かすことになってる。


 今度は鳩を観察した。

 壊れたように鳴いているが、じっと見つめていると僕のようにぴくぴくしていることがわかった。

 ……これ、コンマ単位でタイムリープしてないか?

 はっはっはっ。

 こんなん、どうすりゃいいのさ!


 とりあえずがむしゃらに前に進もうと全力で踏ん張るが、すぐに同じ場所に戻される。

 めげずになんとか前へ!

 あっ、さっきより前に進めたんじゃ?

 でもすぐに戻ってきてしまう。

 とりあえず、家に行けるように頑張ろう。


〜〜〜〜


 コンマ数秒で家に行けるほど俺は超人ではなく、なんども試したが全く前には進めなかった。

 体感ではもう何日も、何ヶ月も、何年も経っている気がする。

 相変わらず鳩は壊れたように鳴いていた。

 俺も声を出せば鳩のように鳴ける。


「ポポポポポポポポポポ」


「わわわわわわわわわわ」


 わぁあああ、と叫ぼうとしているつもりだが、こうなってしまう。

 鳩さん、お揃いっすね。

 ほぼ止まってしまった世界で、俺の友達は鳩だけだ。

 せっかくだからあの鳩にはポポさんという名前をつけよう。


「ポポポポポささささんん」


 普通にポポさんと呼ぼうとしたのにこんなんになってしまった。

 全く、コンマでタイムリープなんてアホじゃないのか?

 やれることもなく、ただぴくぴくしている。

 一生このままだったらどうしよう。

 というかこれ死ねるの?

 死ねなくね?

 コンマでどうやって死ねばいいの?

 動いてもすぐ戻るのに、さらに死ぬためになんかするとか難易度高すぎ。

 永遠にこのまま?

 ま、まさかね?


 ポポさんを見る。

 ずっと同じように鳴いている。

 ……どうにかして、このループから抜け出さないと。



〜〜〜〜



 ループから抜け出そうと試みるものの、ほぼ動けない状態では何も出来ることはなく、ただひたすらに家へ向かおうとする以外に出来なかった。


「おおおらららららあああああ!」


「ポポポポポポポポポポ」


 十センチも進めてないと思う。

 涙が出そうになるが、ループのせいですぐ引っ込み、涙を流すことも許されない。


「たたたすすすけけけてててて」


 ポツリと言葉が漏れる。

 誰もいないこの世界で、誰にも届かない心の叫びだった。


「世界のバグを発見しました」


 機械的な女の子の声が聴こえてはっとした。

 声がした方向をみる。

 でもそこには誰もいなかった。

 まさか、幻聴?

 ますますやばくなってきたんじゃないか?


「バクを修正します」


 また聞こえた。

 それは上からのように聞こえた。

 視線をそちらに向ける。

 息を飲んだ。

 そこには女の子が浮かんでいた。

 恐ろしいほど純白の肌に、薄く虹色がかった灰色の瞳、左目の下にはカラスの羽が描かれており、その羽を真っ二つにするように額から顎までにかけて切れ目が出来ている。

 服装も普通ではなく、いわゆるゴスロリ。だが、ふわふわした感じは全くなく、黒い金属で出来ているのでと思ってしまうほど光沢があった。

 そして何よりも目立つのが背中から生えるその翼はまるで堕天使。

 しかし服のように光沢があるわけではないが、カクカクとしていてやはり印象は機械のように冷たかった。

 女の子は、まるで銅像に色をつけたかのような不気味な容姿である。

 唯一柔らかな印象を受ける銀色の髪が揺れていた。


「十パーセント……二十パーセント……三十パーセント」


 彼女の周りに不思議な模様の光が浮き上がっていく。

 その光は少しずつ世界を埋め尽くしていった。

 世界が白い。

 何も見えない。

 でもなぜか眩しくはなく、その光を見て癒されている俺がいた。


「百パーセント、修正が完了しました。……意識があるものよ。必ずまた会うことになる。これからよろしく頼むぞ」


 その声と共に世界の色が戻る。

 そして俺は顔面から地面に向かってずっこけた。

 ……動くことが出来るようになっていた。


「ポーポーッポポー、ポーポポッポポー」


 ポポさんが鳴く

 ああ、ループから抜け出せたんだ。

 動く世界が素晴らしすぎて、俺は鼻血を出しながら涙を流した。

長編として書くかは検討中。

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