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7/8

就職出来そうです

不定期ですいません







「さてと、まだ自己紹介もしていませんでしたね」


 木刀を回収し、馬車に戻ったところで重い疲れがのしかかってきた。

恐らく【学習意欲】の加速演算の反動だろう。脳に負荷があるという

あの記述から察するに倍率を上げる程負担が大きくなると考えられる。


 今後は発動を控えておいた方が賢明だな……


しかし、今はこのお爺さんとの交渉を行わなければならない、だが先程は

緊急時とはいえ 余りにも無骨な対応ではなかっただろうか?

そうなれば悪印象を与えてしまった事になる。それは避けておくべき事だ。


 となれば、封印したアレを使うしかないか……


()はナライと申します、しがない旅の者ですが以後お見知りおきを」


 やや、大仰な礼をしながら名を名乗る。部活で練習したよく分からない執事の

それっぽい礼を行う。何かあっても最悪、道化という事で押し通せばいい。


 ……()……昔、姉さんに散々女装させられた時に身についた一人称で

過去の黒歴史保持数が最も多い自分である。余りにも板についているのは

姉さんが調子に乗って、ゴスロリドレスを取っ替え引っ替えして遊ばれたので

危うくそちらの世界に目覚める所を姉さんお友達に助けられたからである。


 その時、若干間に合わなかったので身についてしまったのがこの一人称で、

正直言えば消したいのだが、癖で取れなくて困っている。己の(サガ)が恨めしい……

余談だが、お助け頂いた姉さんのお友達は僕を襲おうとした人と同一人物である。

襲われそうになった時は本気で姉さんの交友関係がどうなったのか気になったが

もっと危険な人が出てきたらと思うと怖かったので結局聞かずじまいになった。


 最も、自分も知り合いを探すと碌でもない人間にぶち当たるので人の事は

言えなくなってしまったけど……姉弟は似る定めなのだろうか?


 まぁ、今はそんな事を気にする時ではないけど。


 まぁ それ以来、潜入 変装 罰ゲーム等で使う内に数多の恥ずかしい過去を

生み出したので本当に必要に迫られた時のみ使う事にしているのである。


「私はメロウィング家 元頭首 アウグスト ヴァン メロウィング、以後お見知り

 置きを術士殿」


 術士、魔法使いの俗称みたいなものか……。


「これはご丁寧にどうも、それで…そちらのお嬢さんは?」


 お爺さんの背後で隠れているつもりなのかヒョコヒョコ顔を出したり

引っ込めたりしている少女について尋ねてみる。頭隠して尻隠さずといった

表現がよく似合う様相を呈しているので微笑ましい、というか可愛らしい感じ

ですね………私は一体何を考えているんでしょうか?歳は食ってない筈……


「あの、えっと……ユリア……です」


「この子はユリア ヴァン メロウィング、縁あって当家の養子として預かる事と

 なった子供にございます」


 可愛い可愛い、恥ずかしそうにする姿がこれまた可愛いらしい!

しかし、お爺さんの腰がやたらと低いな……。さっきの光景がよほど効いたか?


「あの、アウグスト殿 ここで立ち話もなんですし、街へ向かいませんか?」


 しめしめ、あわよくばこのまま自然な流れで相乗りさせて頂きなしょう。


「おお、そうですな、しかし死獣喰らいの毛皮は良かったのであれは

 なかなか高く売れますぞ」


「いえ構いません、今はそれよりこの場を脱する事が重要ですおそらく

 この臭いを嗅ぎつけた他の獣がやってくるやも知れません」


 お生憎様、金には困ってないし万一無くなっても稼ぐ手段は幾らでもある。

それよりもさっさとベットで寝たい、スキルの反動で頭が痛い、てか眠い……。


「そうですか、では移動しましょう カジャン 街へ向かうぞ」


 よし、だけどもう限界……馬車で寝るか。


「了解しました旦那様」


 こうして馬車に乗り込み安心しきったら睡魔が今まで以上にのし掛かってきた。

座ったら最後、ウトウトどころかグッスリと眠ってしまった。



 そして、目が醒めるとベットの上だった。

今度は知らない天井だけどココはどこだ?天井だったら良かったと言ったけど

前言撤回、これはこれで恐ろしい、知らない人の家にいるのがどれ程怖いか

よくよく身に染みて理解しました。


「起きたおねーちゃん?」


「起きたけど……もしかしてここで待っててくれたの?」


「うん」


 健気………なんか申し訳ないな。


「ありがと、アウグストさんはどこにいるか知ってる?」


 多分ここはメロウィング家の屋敷だろう。

となれば、お礼とお詫びを兼ねてあのお爺さんには会っておかねばなるまい。


「うん、今呼んでくる」


 いや呼ばなくても…………行っちゃった。

しかし、このままの状態はマズイな…………。

昼日中なのに倦怠感で体が動かしづらい寝起きにしちゃ酷過ぎる。

貧血か……体が変わった影響か、あるいは別な何かか。


「おぉ、目が覚めましたかナライ殿」


 早っ!?

なにこのお爺さん、出待ち 出待ちなのか!?


「ええお陰様で、ここはメロウィング家のお屋敷ですかな?」


「いえ、私の別荘ですよ本邸は現当主が住んでおります故」


 なるほど、あっ お礼言ってない


「そうですか、あとここまで運んで頂きありがとうございます」


「いえいえ構いません、貴方のように可愛いらしいお嬢さんを街中に

 放り出す訳にも行きませんので」


 嘘だぁ〜、絶対裏があるだろ。でも正直なところ可愛いのかな〜なんて……。


「ふふふっ、さて前置きはここまででいいでしょうそういえばユリアちゃんは

 どこに行きましたか?」


 呼んでくると言った割には戻ってこないな?


「あの子はお昼寝してますよ貴方が起きた分かったら私の部屋で寝てしまい

 ました 始めて馬車で疲れていたのでしょう」


 そうか、まだまだ小さな子供だからね。


「そうですか、それでは私をお招き頂いた理由を伺っても?」


 早いとこ済ませてこの気疲れを癒そう……ユリアちゃんで。


「そうですな、では早速 ナライ殿、ユリアの師となってはくれませんかな?」


 師?それってつまり………


「早い話がここで住み込みで働かないかという事でよろしいですか?」


「そう捉えて頂いても構いません」


 どうやら、当面は安定した生活が保障されそうだ。


「是非、こちらこそお願いします」


 あれ程健気な子指導ができるとは幸運な事この上なしって感じかな。

しかし、あの子は何故ああも淀んだ目をしているのだろう……。

まるであの時の岬のような目を………。


 ただ一つ言えるのは、あの子の先生となるには()だという事、

その事実のみが心の中に渦巻いていた……。







今は少々立て込んでますのでしばらく不定期です。安定したら週一に更新します。

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