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逃げるか否か

不定期ですみません






「お逃げ下され〜!」


 ファーストコンタクトを行うべく後ろを振り向くと初老に差し掛かった

お爺さんが御者台から叫んできた。


 いやいやいや、乗り物に乗った状態で逃げろと言われても不可能でしょ。

というか何で逃げてるの?


 そう思い、馬車の更に後方に注意を向けてみるとかなり大きめのハイエナの様な獣が

追いかけてきていた。


 なぜ、モンスタートレインの真似事を・・・


 思わず姉さんがよく使うゲーム用語思い出したじゃないか、まあ今はアレを何とか

しないと僕も危ないな、・・・今度こそ()の出番か。


 スキル発動【学習意欲】の加速演算、倍率5倍


 スキルの発動が行われると思考がクリアになり、周りの景色が全て

緩やかになった。そこから俺は馬車の進行方向に向かって全力疾走を始める。

だが、思考が加速しただけで自身のスピードまで加速する訳では無いようだ。

したがって、緩やかに時間の流れる世界で体を必死に動かし続ける。

やがて馬車が隣に着いたタイミングですかさず飛び乗り、スキルを解除して

声をかけてみる。


「失礼、相乗りさせて頂いても?」


 馬車の御者台まで移動し、会話を試みる。

呆けた顔でこちらを見てきたので、畳み掛けてる用に質問する。


「この馬車には魔法を使える人はいらっしゃらないので?」


 遠距離攻撃の手段があるならそれに越した事はない。

安全策から考えるのは比較的まともな方法だ。


「旦那様が火属性の魔法をお使いになられますが・・・」


 猛スピードで走る中、お爺さんは質問に答えてくれる。


「ご苦労」


 情報提供に感謝の言葉を投げかけ、そそくさと馬車の中へ移動する。


「失礼、旅の者ですがご同行しても?」


 このスタイルは崩さない、危機的状況に突拍子もない事をやるのは割と

落ち着かせるのに効果がある。経験則で学んだことだ。


「ああ、構わないが、退いて貰ってもよいかな?」


 そこにいたのは細身のお爺さんと怯えてうずくまっている少女だった。

お爺さんの方は手に長い杖を持っていおり、いかにもといった魔法使いの

様相を呈していた。


「倒せますか?」


 緊急時なので馬車の中に入りながらも簡潔な情報のやり取りにしようとする。


「五分と五分といったところかのう」


 同じくお爺さんも外に出ながら答えを返してくれた。

のんびりとした様子だが焦っている事には変わりないのか、そそくさと

馬車の外に身を乗り出した。


「それではお手並み拝見いたしましょう」


 やれると言うならやらせてみる。

まあ、それに手を出さないのは他の理由がある。


「ふぅ、我、火炎を御して矛と為す、焼き払わんとする焔よ、一点に収束し、

 貫き給え!」


 詠唱を終えたらしいお爺さんが魔法を発動する。

すると、馬車から半身乗り出した片手で持つ杖の先から炎の槍が飛び出して

ハイエナもどきに一直線に向かっていった。

 しかし、それを事前に察知していたかのごとく左右にステップを踏み

回避されてしまう。


「むぅ、やはり当たらぬか」


 馬車の中に戻って来たお爺さんは落胆した様子であった。

最もまだ手が残っているかの様な顔をしていたが・・・


「で、お次は?」

 

 まだ、手が残っているなら働いてもらわねば・・・

わざわざ危険に飛び込むのは馬鹿がやる事だ。


「もうない、だがお嬢さんならこの状況を打開できるのでは?」


 この爺さん、かなりのやり手か・・・


 確かに俺はあのハイエナもどきを殺す手段は確かに持っている。

だがそれには俺自身も多少は身の危険を覚悟せねばならない。

 それ故に可能ならばこのお爺さんにやらせたかったが、この爺さんは

そこまでの実力は無かった様だ。


 さらに付け加えて、今の出来事で俺の手札が増えた。


 爺さんを対象にこっそり対象観察を発動し、魔力に関する情報を読み取らせて

頂いた。お陰で魔法発動のプロセスの模倣とコントロールの方法も理解した。

 これによって、あのハイエナもどきを安全に殺す手札は揃ったと

言っていいだろう。


「確かにできない事はないですよ」


 しかし、無償で助けるつもりは毛頭ない。

 この爺さんが狸であるのは今のやり取りで把握できたので、下手に助けて

面倒事になるのは避けたい。しかし、見捨てては俺のプライドに傷がつく。


 そこで折衷案・・・


「おお、それは頼もしい!して、お助け願えませんか?」


「いいですよ、しかし条件があります、事が済んだら頼み事を一つ請け負って

 頂いてもよろしいですか?」


 対価を要求しておけば後々強気には出られない筈だ。

交渉のテーブルに着ければ、後の事は後で頑張ればいい。


「心得た、報酬は弾ませてもらおう」


 よし、手は打った それではハンティングを始めようか。

 馬車から出て屋根の上に登ると杖を取り出し、詠唱を始める。


「我、水流を御して矛と為す、巡り還る激流よ、広く拡散し、散り給え」


 予想通り、詠唱に正解は存在しなかった。


 杖から水が噴出し、ハイエナもどきに降りかかった。魔法発動の段階は魔力を

喉に集中させ、発した言葉通りに現象を引き起こす。そして現象の指向性を杖を

補助や増幅器として用いながら放つ。


 この過程で魔力の操作は第3の手の様な扱いとなる。


 両手でペンを扱うのが難しい様に魔力の操作中に別な行動を取る事が難しい。

だが、現状はほぼ固定砲台となっているので考慮する必要はない。

それに加えて魔力の操作は第六感で感知しなければならない。余談だが、この世界

の感覚は五感だけではなく六感や七感が存在する。それは魔力やそれ以外の

超常的エネルギーを感知するが感覚器官が存在しないのでどうやってるのかは

不明だが、出来ることは出来てしまう。同様に感知した魔力は思考で操作できた。

不明極まりないがそれは追い追い考えれば良い。


 次に詠唱についてだ、魔法の詠唱に決まりはない。だが、声を出さない訳には

いかない。無詠唱は別な過程を経る必要がある。

 したがって、詠唱は独自のものとなり多種多様なものが存在する。

その魔法の詠唱だが、地域によって一定のパターンが存在する。

方言や言語の違いによると手帳には記されていたが、個々人によって教師や学び方

に差異が存在するからだとも考えている。


 という訳でここからは俺の勝手にさせて頂こう。

多少は力を見せてもお爺さんには手を打っている。

それでは異世界初の魔法戦闘といきますか。


 杖を左手に持ち替え、腰から取り出した木刀を右手に持つ。


「あかねさす、紫電纏うは、劔なり、雷撃もって、我が敵を討つ」


 木刀に杖を重ね、その刀身に電気を付与する。

確信があった訳では無いが、使える気がした。

おそらく、スキルの影響だろう 【役割自在(ロール・プレイ)】の汎用技巧と万能適正

の恩恵だと考えられる。そして追加でもう一つ魔法を発動する。


「風切り音切り鳴き喚け、響く音色は鳴子が如く、四方八方騒めき給え」


 魔法が発動すると風切り音が聞こえ始めた。


 ・・・これで準備は整った。


「かっかっか、それじゃあ、虐殺させて頂きましょう」


 そして不自然に立ち止まって頻りに左右を確認しているハイエナもどきに

雷を纏った木刀を投げつける。木刀が当たった途端にブルリと震えると倒れて

動かなくなった。


「討伐完了っと、もう大丈夫ですよ〜」


 御者の方のお爺さんに聞こえるよう叫ぶ。

流石に猛スピードのまま屋根の上にいるのは気が進まない。

 やがて徐々にスピードが落ちていき馬車は停止した。

完全に止まって事を確認して屋根から飛び降り、木刀の回収に向かった。

念には念を入れ、魔法で回収する事にした。


「我、土石を御して巨腕となす、我が意のままに動き給え」


 杖を向けた地面から土の腕が生え、木刀をこちらへ放り投げた。

難なくそれを掴み取り、僅かばかりついていた土を払う。

 これだけやって動かないなら死んだか気絶したか、どちらにせよ脅威は去ったと

考えていいだろう。



 さてと、街へ行くために馬車に戻るか・・・






やっと話が進む・・・

ご意見ご感想あれば是非是非お願い致します。

作者はポンコツなのでアイデアとか文章表現とか指摘頂けると頑張れるので・・・



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