いざ、街へ!
長らくお待たせ致しました?
「姉さん何してんだか・・・」
まあ大体のやるべき事が分かったし、今後の行動方針は・・・
一、異世界の文明レベルの上昇 同時に元の世界への帰還方法の模索
二、性転換の魔法 もしくはそれに準ずる薬品の発見又は研究
三、姉さんの捜索
こんな所か、姉さんは文明レベルの上昇が元の世界への帰還に繋がるって
書いてたけど、どうにも胡散臭いからこっちでも探っておかないと・・・
あと、性転換の魔法 異世界だからあると信じたい いや信じてる。
もし無かったらせめてこの姿だけでも変えたい・・・
女の子のままとか絶対嫌だっ!男と付き合うのは真っ平ごめんです。
姉さんとはその内会えそうな気がするから優先度は低いかな、
それに手紙ではその内会えるって書いてあったし こっちは信用できると思う。
今後の方針も決まった事だし、まずは目先の問題から解決しないと。
そう思い、ハンガーに掛かったコートのポケットに手を突っ込む。
中から出てきたのは巾着袋だけだった。不審に思いもう片方のポケットを探ると
茶色い革の手帳が出てきた。
成る程、これが魔法の使い方を書いた手帳か・・・
早速 読もうと思ったが暗くて読めそうもなかったので明日に持ち越す事にした。
幸いな事に今夜の寝床は確保できたし。
「今夜は小屋で一晩明かすか・・・」
今日は疲れた。でも明日からはもっと疲れるだろうなぁ
呑気な思考だが、世渡りにはこれくらいの心持ちでいいって誰かが言っていた
ような気がする。ま、今は世渡りなんて言ってる場合じゃないけど・・・
「んっ〜〜」
よく寝たよく寝た。最近は睡眠あんまり取れてなかったかな?
「起きたらベットの上にはならなかったか」
まあ、予想はしていたけど状況に変化は無いか。
まあ、行動し始めないとそろそろマズイと思うし、なんてったって食料がない。
という訳で、街へ行こう。
思い立ったら即行動、やや危険な状況にある為、早めに動く事は望ましい事だ。
いつまでもここでチンタラしているわけにはいかないし。
◆
そんなこんなで昨日の街道に戻ってきた。
気温はやや肌寒い位で歩き回る分には支障はない。
しかし、人影が全くない。街道の規模を考えて昼ごろには往来が増えると
考えているけど朝早く出て来過ぎたかな?
街の影も形も見当たらない場所から歩き始めるのは無謀な行いだと思う。
したがって、街道のど真ん中で誰かが通りかかってくれるのを待っている
というのが今の僕の状態・・・
「まあ、仕方ないから二分の一の確率に賭けますか」
棒倒しはこういう時には便利だね。
そこら辺に転がっていた木の棒を手に取って放り投げる。
棒は左に倒れた。
「うっし、左に行きますか」
そういえば、スキルがどうこうって手紙に書いてあったな。
ぼちぼち歩みを進めながら、自分の状態について考えてみる。
姉さんの書いた手帳は大体読み終わった。その中には確かに魔法の理論
が書かれていた。だが、いざ使おうとしても魔力の運用法が分からなかった。
魔法と銘打たれているだけあって、魔力を循環?とにかく巡らせる方法が
感覚に依存するから生まれてこのかた魔力なんぞ扱ったことのない
僕にはてんで使えなかった。何か勿体無いと思ったけどここは素直に諦めよう。
だが、そんな僕でも超常の力を使える可能性がある・・・スキルだ。
昨日の一件でスキルが僕に与えられたって事は大体分かる。
ただ、こちらも使い方がてんで分からない。
念じればいいのかな?
スキル発動・・・【教育者】
《称号:[賢者]のサポートシステム〔閲覧〕を起動しました。従って【教育者】の
能力:対象観察を自身を対象に発動します。》
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名前: 師瞳 倣居
年齢:15歳
性別:女
職業:〈叡智持つ救い女〉
スキル:パーソナルスキル【教育者】・・・技能伝達、対象観察、適正診断
パーソナルスキル【学習意欲】・・・加速演算、完全記憶、技能習熟
パーソナルスキル【役割自在】・・・万能適正、汎用技巧
パーソナルスキル【自己犠牲】・・・万能耐性、負傷身代
称号:[賢者][聖女][教師][生徒][演者][正者][半陰陽]
状態:正常
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「・・・・・・・」
分かっていたけど性別、女なんだ。
ヒットポイント並々ならなぬダメージが入った。
まあ、スキルを使えると分かったのは良い発見だと言える。
だが、女だと証明されたのは悪い知らせだ。
この話はここまで、女になった事より先にスキルの事だ。
今の結果から見てスキルの発動条件は念じる事か?
頭の中にステータスの様な記述が思い浮かんだ。
それはステータスと呼ぶには余りにも簡易的だが、必要な情報が
ありありと記されていた。
成る程、スキルを複数所持しているのは吉か凶か・・・
さてと、ここまで情報が出てくるならもう少し詳細に出て欲しいな。
思い立ったら即行動。
スキル発動、【教育者】 の対象観察 対象は僕のスキルの能力
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【教育者】
技能伝達・・・発動した対象に自分の技能を一部習得させる。
発動条件として対象への一定以上の指導が必要。
対象への指導時間や内容によりどの様な技能を習得させるか
選択が可能である。
対象観察・・・発動した対象の情報を読み取る。
発動条件は無いが自己以上の存在への読み取りには格差がある程
読み取れる情報が減少する。
適正診断・・・発動した対象の潜在能力を読み取る。
発動条件として対象が自己以下の存在である必要がある。
対象への親密度の上昇により読み取れる潜在能力の範囲が広がる。
【学習意欲】
加速演算・・・発動により自己の思考速度を加速する。
発動条件は無く発動の瞬間は任意である。
加速倍率に制限は無いが脳への負荷が掛かるので
安定した運用倍率は最大で10倍である。
完全記憶・・・常時発動で自己が感じた感覚情報を全て記憶する。
常時発動の為 遮断は不可能である。
記憶は蓄積し続けるが思い出されるまでには情報により
差異が存在する。
技能習熟・・・常時発動で自己が学習した技能の熟練度の向上具合に
補正が行われる。
常時発動の為 遮断は不可能である。
【役割自在】
万能適正・・・常時発動で自己の潜在能力の幅を大幅に拡大する。
常時発動の為 遮断は不可能である。
汎用技巧・・・常時発動で自己の技能の活用範囲を強制的に拡大する。
常時発動の為 遮断は不可能である。
【自己犠牲】
万能耐性・・・常時発動で自己への攻撃に対するあらゆる耐性を持つ。
常時発動の為 遮断は不可能である。
負傷身代・・・発動により対象の傷を自身に移す。
対象は有機物 無機物を問わず
傷の定義は自身の認識に依存する。
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「成る程、成る程」
能力については凡そ理解した。
検証は追い追い行っていくとして、早いとこ 次の情報が欲しいな。
よし、次の項目を調べよう。
スキル発動、【教育者】の対象観察 対象は僕の職業と称号
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〈叡智持つ救い女〉
〈賢者〉と〈聖女〉の統合職、〈ーー〉や〈ーー〉などとは違い、{ーーー}に
対しての直接的接触を行う事は殆ど無いが、世界的文明水準の向上を見込まれた
存在。尚、統合職であるから〈聖女〉の条件で性別は女性とされ、〈賢者〉の条件
として肉体は常に20代前後で老化を停止させる。状態としては統合職では無く、
〈聖女〉〈賢者〉を個別で付与された状態である。
[賢者]
職業:〈賢者〉を付与された者に与えられる称号、この称号に付随する
サポートシステム〔閲覧〕を使用可能となる。〔閲覧〕はスキルの発動に際して
発動者の意向を汲み取り、任意でその補助を行う。
[聖女]
職業:〈聖女〉を付与された者に与えられる称号、この称号に付随する
サポートシステム〔救済〕を使用可能となる。〔救済〕は救いを求める者への
施しに際してその施しを任意で最適化する。
[教師]
他に教育を施す者に与えられる称号、教える事は常に先達であるのでは無く、
道を指し示す事だ。故に己の抱える信条を果さんとする事を美徳とする。
もし、自身に課した軛を払うのであれば高みに至る足掛かりとなろう。
[生徒]
常に学び続ける者に与えられる称号、学習する事はそれに対しての向かい方を
模索する事にある。故に努力と才能の住み分けを行おうとする。
もし、自身の過程と結果を認めるのであれば次の段階へ歩を進められる。
[演者]
己を偽り続ける者に与えられる称号、己の有り様を歪める為その本質は
全にはなるが、個になりえない事にある。故にその精神は千変万化であり、
本質が定まらない事に意義がある。
もし、その有り様が定まれば大きな変革が訪れる。
[正者]
正しさを求める者に与えられる称号、己を捨て去る為そこに残る
感謝や崇拝を受け止める事は決してない。故に縁を結ぶ人々は畏敬の念を抱き、
やがて誰にも理解され無くなる。
もし、その心の内を曝け出せば安寧の時が得られる。
[半陰陽]
存在を超越した者に与えられる称号、性別や種を改める行いは一つの
奇跡であり、{ーーー}に至る鍵でもある。身の内に宿す力は相反するもので
あろうとその矛盾を内包するに足る資格により整合性を与え操る事を可能とする。
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「・・・・・・」
より濃密な情報が出てきた。一体何をどうしろと?
あからさまに世界レベルで関わってきそうな職業と称号で
今までの自分とは完全に違った役割を求められてますね・・・
それよりも重要なことがある。
「姉さんは僕の付与される職業を知っていた?」
手紙の内容と職業の説明が一部酷似している。
この事から姉さんが僕がどの様な職業を付与されるか知っていた事になる。
やはり、文明を発展させるというのがキーワードか・・・
自身の置かれた状況に考察を巡らせていると後方から何かが迫る音が聞こえた。
音の大きさから考えて馬車であるだろうと推理する。
これは幸先いいのか悪いのか、うまくいけば街までは行けそうかな?
道すがらに出会えた存在との交渉に早くも思考をシフトチェンジしていた。
振り返る前に凡その考えをまとめて、初対面の印象操作を試みようとする。
しかし、この後またもや予想を裏切られることになろうとは思いもしなかった。
時折、思い付いた設定をゲロっていくんで矛盾があったら報告お願いします。
感想、その他諸々気長にお待ちしております。