プロローグ
やっちまった
思い付きで投稿・・・
「先生、ここの問題はどうすればいいですか?」
僕の生徒が質問してくる。
あぁ、そこは・・・
「リボンの長さの違いから考えたらいいよ、いつも言ってるけど
先に図を作った方がいいって、視覚的に解かないと。」
算数の特に図形の問題は数字の羅列にならないように注意する必要がある。
その為に、式を組み立てる前段階で問題文にある数字を分かり易い形にするのが
僕の考える最適解だ。
「分かりました。ありがとうございます。」
素直だね、ちびっ子はあんまり生意気言わないからね。
「あの、先生・・・」
次の生徒か 今度はどこかな?
「今日はここまで、じゃあまた明日」
「「「「ありがとうございました」」」」
小学生は元気だね。
おじさんには眩しいよ、高校生だけど・・・
僕の名前は師瞳 倣居高校一年生だ。
さっきまでは塾講師として授業をしていた。
かなりグレーな職場だけど給料がいいし、ここの塾長は知り合いなので
四月から勤めさせてもらっている。
僕が塾に勤めている理由 それは僕は子供が好きだからだ。
上昇志向強い親の都合、勉強し足りないという欲求不満、友達がいるから、
そんな十人十色な理由で子どもたちがやってくる。
こんな感じの塾という場は色々な子供達がやって来るので色々とうってつけだから。
そんな子どもに道を示すのが僕の仕事、とてもやりがいがある。
と言っても今は小中学生の問題の答え合せと質問を聞くだけのバイトであり、
まともに教鞭を取ったことは無い。
はぁ、はやく授業したいなぁ。
と 無駄な思考に耽っていると教室に誰かが来たようだ。
バックスペースに居ても教室のドアが開く音は聞こえるから
来客の有無はよくわかる。
しかし忘れ物かな?
だったら教室に行く必要はないかな、多少のポカは見逃しておこう。
だが、僕の楽観的予想は嫌な方向に裏切られた。
突然 教室につながるドアが開けられ、
先程授業を終えたばかりの生徒が戻ってきた。
「はあ はあ 先生!みいちゃんがみいちゃんが!」
女子生徒が息を切らしながら何かを訴えかけようとするが
気が動転しているのか同じ言葉を繰り返し続けるだけだ。
「どうしたんだっ 梓!岬に何かあったのか!?」
生徒の肩に手を当てながら名前を呼びかけ正気に戻るよう促す。
しかし、悠長に構えてはいられない この焦り方は只事ではない。
「あぁっ、みいちゃんが怖い大人の人達に連れていかれそうになって!」
かなり取り乱しながら僕に縋り付いてくる。
塾に戻ってきたという事は事件は近場で起こったに違いない!
「塾長の側に居なさい!」
あの爺さんはやや人格に問題があるが、何かあった時は頼れる人だ。
この子の保護はあの人に任せておいた方がいいだろう。
そこからの行動は速かった。
教室の隅に立て掛けておいた木刀を取り、駆け出す。
木刀は中学生を脅す為のものだが今回は別な用途になりそうだ。
外に出ればは雨が降っておりいつもより暗い 幼子を拐すには絶好の状況、
チクショウ、生徒の安全に気を配っていたのに!
早めに授業を終わらせればよかったと嘆く、
しかし過ぎてしまった事を嘆いても仕方ないと思い 行動を始める。
雨が降る中 必死になりながら探し続ける。
走り回りながら部活の先輩に電話して協力を仰ぎ、GPSをオンにして
早めに合流できるようにする。分かれて探した方がいいのは自明の理だが
手遅れなっているいなければまだ梓を付け狙う連中がいると思われるので、
行動を共にした方が僕らの安全に ひいては見つけた時の岬の安全につながる。
◆
そして数分の後 路地裏の奥で隠れていた生徒 ・・・岬を見つけた。
その姿は雨に濡れているのに加えて、走り回ったのか疲労が色濃く見える。
「大丈夫・・・じゃないな、とりあえず帰ろうか。」
手を差し伸べ、安心させようとする。
「先生、後ろ」
怯えるようなか細い声で言った言葉を僕は確かに聞き取った。
瞬間 僕はなんの躊躇いもなく木刀を後ろに向かって横薙ぎに払う。
「遅い・・・」
振り切ったと思ったが、途中で止められていた。素手で・・・
そこに居たのはずっしりとした体格の男だった。
完全にヤバイ、手慣れていやがる!何がかというと色々!
まず奴の手 ステゴロやってる人御用達のナックルリング
それに加えて、革ジャンの左右のズレ、おそらく凶器の類を持っている。
服が垂れ下がるって事は拳銃かナイフほどの重さのもの、
どちらにしても普段持ち得ない危険な代物であることに違いない。
「先に言っておこう、今すぐここから失せろ そうすれば見逃してやる。」
はん、言ってくれるな!
全くもって嘘ばっかじゃねえか、逃げ出そうとしたらお前さんの足が
俺をすっ転ばそうとしてるのが見え見えなんだよ!
第一僕が いや、俺が生徒を見捨てるとか有り得ねぇ!
「断る!」
俺の生徒に手を出すな!ってな
先手必勝、奴が重心を傾けた足を狙って木刀を振る。
弁慶の泣き所、要はスネを狙って振り払う。
恐らく、いや ほぼこいつには勝てない。
この男の見た目が虚仮威しにしろ本物にしろ、
小柄な俺ではアドバンテージがない 更に、奴は一度 俺の攻撃を止めた。
実力は奴の方が上なのは間違いないだろう。
それに加えて先程の梓の言葉、岬を付け狙う連中は複数人いる筈だ。
だから時間を稼ぐ、奴の足を潰せば岬が逃げる時間をつくり出せるからだ。
尚且つ 足をやられたら増援を呼ぶだろう。
敵兵の足を潰し、増援に来た敵兵を延々と殺し続ける。
スナイパーがたまにやる手口だが、今回の目的はここに一人でも多くの人間を
引きつけることにある。
「ぬるい」
またもや木刀を止められてしまう。
今度は木刀を踏まれて止められてしまった。不味い、得物を奪われてはただでさえ
短い俺のリーチが更に短くなってしまう。
だが、手離さなければやられてしまう。
そう思い、木刀を手放し一旦距離を取る。
「岬、荷物を置いて逃げろ!あとコレ持っていけ!」
そう言って、スマホを投げ渡す。
上手くいけば先輩と合流出来るはずだ。
「はっ、はい!」
(ごめんね 岬、たぶんもう会えない)
心の中で謝っておく。
岬は慌てながらも言った通りにしてくれた。
さてと、覚悟を決めねば
ここで死んでも岬を生きて帰す。
そう決めると自然と力が湧いて出るきがした。
岬が残していったバックからテキスト数冊と鉛筆を取り出し、
武装する。やはり、こちらの方がしっくりくるな
「いいのかこんなにのんびりさせて?」
「構わん、お前が負けるただそれだけだ」
随分たいそうな自信なことで・・・
だがその自信 俺がブチ壊してやるよ!
テキストをばら撒きながら踏み込む、鉛筆を突き刺そうとするも
敢え無く避けられてしまう。だが狙いはそちらではない、
刺すべきは鼻、喧嘩の基本だ。
鼻鉛筆というものをご存知だろうか?
真新しい鉛筆を一本へし折り、相手の鼻に突き刺す鬼の所業のような
行いだ。だがこれは拷問の一環であり、決して戦闘中に使う様なものではない。
故に狙いは意表を突くことただその一点に尽きる。
敵はプロだ ならそのプロのセオリーを逆手に取ればいい。
カッカッカ、驚いていやがる。
鼻狙うなんて普通は考えないしなっ!
「驚いた まさか私にナイフを抜かせるとは」
は?
腹に走る激痛、下を向けば右側に見えるナイフ。
あ、無理だわコレ、肝臓やられたわ。
ナイフが刺さった勢いで突き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
血が止まらない、太い血管がやられたみたいだ。
「行かせねぇ」
どうせダメならとことん抗ってやる。
気合いと根性で奴の足に摑みかかろうとするが蹴り飛ばされてしまう。
あぁ、意識が・・・
「お前の心意気を汲んで娘は見逃してやろう」
「随分と・・・気前がいいな・・・」
「目的は果たしたからな」
目的?岬ではないのか?
奴は岬が残したバックにぶら下がる鈴を無造作に引きちぎり、
ポケットに入れた。
「そんな物の為に・・・」
あぁ、起きてらんねぇ
ここで俺が死んでも岬は助かる 結果オーライってとこか、
後のゴタゴタは先輩に丸投げするしかなさそうだな。
奴は仕事は終わったと言わんばかりの態度で去っていく。
仕事が終わったさっさと撤退ってか・・・一人になったな。
全てが終わったかと思うと後悔と達成感がない交ぜになった感情が
僕の中を渦巻き始めた。
姉さん、悪い 約束守れそうにない・・・
そっちに今 行くよ・・・
《英雄的選択を確認しました。これより転移処理を開始します。》
見切り発車なのでやる気が消えたら
ぷっつり消えますので・・・それでは
梓と岬の記述を修正しました。ごちゃごちゃしちゃってすみません