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第六十三匹:ろくでもない世界。


「ちっがう! 俺じゃなくて、あの幼女神が考えたであろう作戦がそれなんだよ! なんで同じ聖槍が四本もあるのか。それは四方を囲んで一斉に聖的槍突(アスト・スラスト)を打つことで奴の心臓を貫く為なんだよ!」

「ですが、ユーコに聖槍を持たせたところで、足りないじゃないですか!」

「聖槍が必要なの? あるわよ。もう一本」

「え、ミーナさん。そんなのどこにある……って」


 ミーナの歩く先、庭の片隅に見慣れないものが鎮座している。

 触覚のような髭を生やした小鬼を女性が踏みつけている立像だ。

 その女性が誰をかたどっているかは言うまでもないが、やたらプロポーションが良くなっている。

 

「……いうか、その前に私の屋敷の庭にどえらいものがあるんですけど」

「あら、気づいてなかった? ちょっと前に造ったのよ。良いでしょ」


 ふんすと小鬼が持つ槍を引き抜けば、それを持っていた手まで一緒についてくる。

 眉間に皺を寄せながらその手を乱暴に台座にぶつけて砕き、ミーナは槍だけ手にして戻ってきた。


「これも聖槍なんでしょ? 武器に罪はないし、廃棄してしまわないで良かったわ」


 これで、聖槍が四本。

 あとの問題は技だが。


「おい幼女神ッ! どうせ見てるんだろ!? 二人も技が使えるようにしろ!! ……これで良し」

「いやいや蚊ーさん、いくらなんでもそんなお手軽さは」

「どの口で言ってんだよ。お前がどんな状況でこの技覚えたと思ってんだ」

「あれは確か、グリフォンとの死闘の最中……」

「そんな素敵な思い出はねえよッ!! 俺も欲しかったよ、そんなイベント!!」


 実際のところは、俺に一撃喰らわせた後、喋っている最中にさらっと覚えていた。

 何のイベント性もない。昨日の晩御飯を思い出すように会得したのだ、手軽でないわけがない。

 

「あら?」


 ミーナが不意に不思議そうな声を上げ聖槍を掲げる。

 ユーコも同じように怪訝な顔をしていたので尋ねてみれば、二人とも頭の中で聖的槍突(アスト・スラスト)という言葉が浮かんできたそうだ。

 自分で指示しておいて何だけど、インスタント食品より手軽でほんとに良いのかよ。


「よし、ヘルシスは以前に覚えてたみたいだし、これで必要なものは揃った」


 後やることは二つ。一つはヘルシスに作戦を伝えること、もう一つは……。


「蚊ーさん、やっぱりいくらなんでも無理ですよ! いきなりミーナさんとユーコにも聖槍で戦ってもらうなんて」

「あら、そんな話になっているの? 私様、魔術師なのよ? 槍で戦うなんて無粋なのやりたくないわ」

「頼む、あれを倒すにはそれしかないはずなんだ! 四本の槍で挟み込んで攻撃するしかないんだよ!」

「そうは言われても、魔術師としての誇りというものもあるし……あら?」

「ミーサさん……蚊ーさんの声が聞こえるんですかッ?」

「姉様、私も聞こえるようになりました」

「あ、蚊ーさん、もしかして……」


 その通りだ。もう事前に合意を取るなんてやってる場合じゃないからな。


「ミーナ、背中を触ってみろ。俺達がびっしりついてるから」

「ぎ、ぎやあああああああああッ!?」


 振り払われた俺が一斉に飛び立つ。

 憤怒の顔で俺を睨みつけるミーナだったが。


「あ、くっ、くあっ、かゆううういいいいいいいッ!?」

「今のタイミングだとそうだろうな。もう少し血を吸えば、治癒力が勝って嘘みたいに痒みが引くぞ? どうする? 参加するっていうなら、もう少し血を吸うけど」

「あんたあああああッ!! お、覚えてなさいよおおおッ!!」


 小声で「うわあっ」と自分の日ごろの行いを棚に上げているフィーユの横で、ユーコはじっと吸血されるがままに立っている。やはり十分にやる気のようだ。


「あとはヘルシスだな。だけどあんな暴れられると近づけない。たぶんほんの僅かな時間しか稼げないだろうが、俺達に行ってもらう。その間にヘルシスに伝えるんだ」


 フィーユにそう言いながら、俺は上空に待機していた俺の群れに合流する。


「悪いが頼む」

「まあ仕方ないよな、俺」

「ここまで来たらやるしかないだろ、俺」

「どうせ不死身だし、なんとかなるさ、俺」

「それぐらいしかもうやることないしね、俺」


 さすがに俺、物分りが良い。

 全員がどこか諦めた様子なのは我ながら物悲しくもあるが。


 再びフィーユの許に戻ったところで、群れが旋回を始め、そのまま一挙に魔王に突き進んでいく。

 そして一瞬の隙を見て真上から黒いベールが魔王を包み込み、同時に肩に俺を乗せてフィーユがヘルシスの許へと走った。


「ヘルシスさん、魔王は不死身なんです。このままじゃ決着は着きません。だから一斉攻撃をします。手を貸してください」

「もうっ、あたし途中で邪魔されるの好きくないのにぃ」

「すみません、でもこのままじゃいくらやっても無理なんですよ」

「まあ確かに。全然手ごたえがないのよねえ。……それで? 一応聞いたげる」


 フィーユが手短に作戦を説明しそれを聞いて頷いていたヘルシスは、話の終わりになって小首を傾げた。


「どうしたんですか?」

「あのパパッて出る技だよね。あれ、もう使っちゃったんだけどお?」

「えっ? 魔王にですか」

「ううん、前に適当に」

「はい、……はい? 一回使ったらダメなんですか?」

「だってぇ、一回使った技って次使うとより上手く使えるじゃない? だからおもしろくないじゃない?」

「全く理解が追いつかないんですけど」


 ……そうか。

 カナイ村でヘルシスが竜に負けたと聞いて、ずっと不思議だったんだが、そういうことか。


「縛りゲーだ、フィーユ。上手く使えると強くなりすぎて戦いがすぐ終わるから面白くないって言ってるんだ。このアロサウルスは」

「……え? あのヘルシスさん、ずっとそれで戦ってきたんですか」

「そうよ? 前にね、覚えた技をそのまま使い続けたらねえ、なんか街一つ分吹き飛ぶようになっちゃって、全然おもしろくなかったの。それからずうっと、こう」

「フィーユ、青ざめてる場合じゃない。なんとか聖的槍突(アスト・スラスト)だけ使ってもらえ。くれぐれも他の技は使わせないようにな? たぶん星ごと割れるぞ」


 渋るヘルシスに当たらなければと面白くないだろうとなんとか説得し、続いて吸血鬼化の話しをしたが、それはあっさりと了承された。

 本人曰く、血が(たぎ)って良い感じらしい。


 ただ戸惑うのは俺だ。力を与えすぎたら一撃で街が、いや星や銀河が消し飛びかねない。

 しかしそれでももう、選択肢はない。


「よし、お前ら!」


 ミーナとユーコの血を吸って腹を膨らませた俺の一団が続いてヘルシスの許へ。

 ちょっと俺も吸わせてもらおうかと思ったところで、破裂音と共に魔王を襲っていた俺達が散り散りに吹き飛ばされた。


 舞い落ちる蚊の残骸の中、ジロリと鋭い眼光がこちらを捉える。

 焦り、もしくは苛立ちの色を浮かべ、次の瞬間すさまじい速度で突進。

 気付いた時にはフィーユの首めがけて手刀が繰り出されていた。が、その手が止まる。


 同時に、衝撃波と空気のうねりに俺とフィーユは弾き出され、そのまま吸血鬼化したヘルシスと本気になった魔王の攻防戦が始まり、俺は目では追えず、ただ音と荒れ狂う空気の流れでそれを知るばかりだった。


「合図は!」


 合間にヘルシスが叫ぶ。


「俺が!」


 返事はないが、それまで引きつけておいてくれるのだろう。

 これで、全ての準備が整ったわけだ。







「ユーコ、本当に考えは変わらないんですね」

「私は、姉様の妹ですよ?」


 最後の最後まで反対していたフィーユも、その言葉には何も言い返せず嘆息しながらも頷いた。

 そして、作戦が開始される。

 ヘルシスと魔王が戦闘を続ける中、三人はそれぞれの配置につき、俺と俺の群れは再度上空へ。

 

「いいか、俺達で魔王の動きを止める。攻撃すると奴は自動で霧と化すだろう。だから攻撃はするな。ただ目隠しをするだけでいい」

「俺、合図やりたい」

「そこは俺に譲ってくれよ」

「じゃあ突撃の号令なら良いだろ」

「ああ、それはまかせるよ」

「よし」


 一匹の俺が先頭へと飛び叫びを上げる。


「いいかお前ら! こんな身体にさせられて、やっと目的を果たせる時だ! 奴の穴という穴を俺達で埋めてやるぞおおおおおおおッ!!」

「おおおおおおおおッ!!」


 微妙にキャラが違っている俺の号令で、群れが動き出す。

 それを見てヘルシスが魔王を突き放し、その隙に一斉に取り付く。

 魔王の目に、魔王の鼻に、魔王の口に、魔王の服の内側にと、蚊がなだれ込む。

 俺も必死で視界を塞ごうと振り払おうとする魔王にしがみ付いた。


 魔王の口が蚊の残骸を吐き出しながら獣のような叫びを上げる。


「今だ!!」

聖的(アスト)――」


 四方から踏み込みながら、四人が息を合わせる。


「――槍突(スラスト)ッ!!!!」


 星空のように輝く無数の刃が、俺の群れと魔王に一斉に襲い掛かり、ほとんどの俺が細切れにされ、一部の俺が霧と化し、そして魔王は。


「やったか!」


 誰かがそんな余計な言葉を吐いた。

 俺と共に切り刻まれた魔王の断片が、ぐにゃりと歪む。


「避けろ!!」


 千切れた腕の手刀でミーナが槍を折られ、再生したばかりの脚が横薙ぎに振られた鎌のごとくユーコを蹴り飛ばし、一人攻撃を避けたもののヘルシスは吹き飛ぶユーコをなんとか救出し、そしてフィーユには再生途中の魔王の首が襲い掛かる。


「このお……ッ!?」


 槍で防ごうとするが、その腕を宙から生えた魔王の手が掴んでいて動かせない。

 間に合わない、そう覚悟した表情でフィーユは左腕を掲げ盾とする。


「くっ、あああッ!!」


 盾が、魔王の牙に容易く噛み千切られた。

  

「フィーユ!!」

「大丈夫です。さすがですね。ほら、もう治っていきますよ」


 確かに噛み千切られた傷口がみるみる内にふさがっていく。

 しかし流した血は戻らない。

 これ以上攻撃を受けると、いくら吸血鬼化させているとはいえ危うい可能性もある。

 そしてなによりも、目の前に絶望的な事実があった。


「なんで……なぜだッ!?」


 それ以外に方法なんてないはずだ。

 今のが当たりじゃないなら、あの幼女神だって技を二人に使わせていないはずだ。

 予定通りに攻撃は奴の肉体に当たった。

 どころか霧に変わる前にばらばらに出来たのは確認した。

 これ以外に、方法なんてあり得ないはずなのに……。


「魔王、お前何をした! 対策をとってやがったな!!」

「それの何が悪い。当たり前のことだろう。それに、ここで定番ならば種明かしでもするかもしれないが、お前らは常識も定番もどうでもいいのだろう? 言ってやる義理ももうない」


 いちいち正論だ。

 対策をとるのだって、そりゃあ普通のことだろう。

 ただ対策をとれば回避できるような弱点だなんて、そんなものどうすればいいんだよ。

 他に決め手がないんだぞ?


「まずいですよ、蚊ーさん。ミーナさんの聖槍折れちゃいましたし、ユーコはヘルシスさんが守ってくださいましたけど、そのせいでヘルシスさんも少し調子が悪そうですし……」

「くそっ!」


 俺達の身体が再生していく中、魔王はもっと早い速度で肉体を取り戻していく。

 ばらばらになった身体も霧と化し寄せ集まり、何事もなかったかのように元の身体を形作る。

 その中で魔王は、口元を歪めたまま、あからさまに敵意に燃えたその目を異様なほどギラギラと輝かせている。


 やはり当たりではあったんだ。

 だからこそ、魔王はこれから全力で仕掛けてくる。

 今の状態じゃあ、それを防ぐことはできない。


「ちくしょう、考えが甘かった! あいつはこの世界の住人じゃない。弱点を放っておくなんてことするわけなじゃねえか! それを、そんなことを俺は見落としたのか!!」

「蚊ーさん……」

「フィーユ……ちょっとごめん」

「なんですか蚊ーさん……って、こっちの蚊ーさんですか? 同じ声だからややこしいですね。どうしましたか」

「俺の足が髪にくっついてて取りたいんで、ちょっと動かないでもらえる?」

「え、えぇ、わかりました。お早くお願いします」


 別の俺が身体を回収しようとフィーユの髪の毛をよじ登る。

 この世界で生まれた俺は、ほぼ同じなものの少しずつどこか違っていて、どうも人格面である意味この世界的な影響を受けているらしい。

 どこかろくでもなかったり、暢気だったり、短絡的だったり。


「あ、これ俺のじゃねえや。……ところで俺」

「なんだよ!」

「イライラしたってどうしようもないぞ? まあそれは良いとしてだ。そんなことより、さっき別の俺ともちょっと話したんだけどさ」

「だからなんだよ」

「なんか、数が減ってないか?」

「……?」


 魔王の方が治癒速度が早いとはいえ、しかしこちらは身体が小さい。

 ほとんどの俺は再生を済ませ集まっていて、未だそれができないのは自分の手足がどこに行ったかわからなくなっているもの達。

 それを含めて見ても、確かに少ないように見える。

 半分とは言わないが、群れとして飛んでいた時のシルエットと比べると七割程度の大きさにしかならない。

 吹き飛ばされたとしても、すぐに戻ってくるはずだ。

 しかしその姿はなく、約三割が忽然と姿を消した。不死身なはずの俺が。


「さあ、良い子は物語の終わる(おやすみ)の時間だ」


 再生を終えた魔王がゆっくりと歩み寄る。

 頭に血が上ってるのか知らないが、ずいぶんとノリに乗った台詞を吐いてくれる。

 しかも理想の吸血鬼になってたら俺が言ってみたかったような台詞だ。


 羨ましさでジッと見つめて、そしてふと気付く。

  

「フィーユ、魔王の目、なんかおかしくないか」

「なんですかこんな時に! 今魔王の顔面偏差値を計ってる場合じゃないですよ! 確かになんかてらてらしてますけど」


 誰がそんなもん気にしてるか。

 でも気のせいでないことは確認できた。


 魔王の目が妙に光りすぎなのだ。具体的にいうなら、光の反射がおかしい。

 大げさにいうならミラーボールのように光を反射している。

 それは普通の眼球には不可能な反射の仕方に見えた。


「ああ、そうか。そういうことか……ッ! だったら……。フィーユ、もう一度だけ俺を信じる気は……あるか」

「何を今さら。最初から私はあなたを信じてますよ」

「どこがだよ。最初無視して話も聞かなかったくせに」


 「そうでしたっけ?」ととぼけて見せるフィーユを見つつ、俺は群れの許へ向かおうと飛び立つ。


「フィーユ、ありがとう」

「いえ、こちらこそ……?」


 きょとんとした顔のフィーユに一つ依頼をし群れに合流。

 足を取りにフィーユの髪をよじ登っていた俺も続いてやって来た。


「さっきは悪かったな」

「気にすんな、俺だろ」


 ああ、心底わけがわからない。

 なんで俺は、俺と喋ってんだよ。

 しかも俺の産んだ俺だよ。意味がわかんないよ。


 ほんとに、ろくでもない世界。

 でも、それでも……別れるならばやはり寂しくはある。


「全員聞いてくれ。おそらく最後の手だが、まだ仕事を終わらせるチャンスがある」

 

 せめてもの救いは、全俺が賛同してくれたことだった。







 魔王の攻撃にフィーユは防戦一方で、攻撃を繰り出す隙も間合いを取る隙も与えられない。

 例え少し離れたところで、魔王は攻撃をものともせずにフィーユの懐に飛び込み、連撃を見舞ってくる。

 槍の間合いを取らせず、自分に有利な肉弾戦に持ち込むなんて、なんて合理的なんだろうと少し関心してしまった。


「誰かまた号令やるか」

「あれ、そういえばさっき号令やったやついないな」

「先に行ったってことじゃないか」


 誰も号令をやろうというものがいないらしく、俺達の視線が俺に集まった。

 コホンと咳払いを一つして先頭へ。


「それじゃあ行こうか。あいつにさらに思い知らせてやろうぜ。このくそったれな世界の酷さを!!」


 各々に叫びを上げて、俺を先頭に群れが一斉に前進を始める。

 もう作戦もなにもない。

 ただ一気に降下し攻撃を受けようが受けまいが、とにかくただ必死に魔王に群がるだけ。


 そんな必死な俺達に構いもせずに魔王はフィーユへの攻撃を続けるが、その身体をびっしりと俺達が覆ったところで、


嘆きと怒りの天刑シフトワン・ブラック・スクリーマーッ!!!!」


 強引に距離を取ったフィーユの全力の一撃が地面に叩き込まれる。


 邪魔くさそうに手で俺を振り払いながら魔王は動きを止めた。

 攻撃が自分から若干離れた位置で打ち込まれた為に、何らかの罠である可能性を考えたのだろう。


 土煙と共に砕けた大地が礫となって魔王を一斉に襲うが、焦ることも避けることもせず魔王はその勢いにされるがままに全身を白い霧と化し四散し、そして何事もなかったように割れた地面の上で凝縮して実体を取り戻す。


「なんの真似だ」


 魔王の問いに、フィーユは答えない。いや答えられない。

 目を点のようにしてただ池の鯉のように口を開閉させていた。


「勝てないと知り自暴自棄にでもなったか? いや違うな。あの女と同じ血を持つなら、そんなまともであるはずがない。今度はどんなおふざけだ!! 忌々しい!!」


 眉間に皺を寄せ不平を訴えながらも、口元には苦笑いを浮かべるという困惑の極みにあるような表情で、フィーユは軽く挙げた手の先でそれを指差した。


 指差されたのが自分だと気付いた魔王は、苛立ちを露にしながら突進しようとして、僅かにバランスを崩す。

 ぐらりと揺れた身体を確かめながら、やっと魔王はあるものに気付いた。

 

「な、なんだ、なんだこれは」

 視界の中、目の下からヌッと伸びた棒状のもの。さらには視界を覆うように枝のようなものも額から伸びている。

 それに触れ、辿り、魔王は手を震わせ怒号を上げる。


「ふざけるなあああああ――ッ!?」


 魔王は悲鳴のような叫びを上げながら、何かをしようとした。

 それは攻撃方法が変わるだとか、本当の力を解放するだとか、最終必殺奥義を繰り出すだとか、ラスボスの定番なものだったのかもしれない。


 だが身動きが思うように取れなければ、何もできやしない。


 きっと所々で、俺とフィーユが作戦会議をしているのをこいつは待ってくれたに違いない。

 なにせそれが定番だから。

 定番なんていらないんだろ、とか言いながらも、こいつはきっとしきたりやお決まりをちゃんと守ってくれていたに違いない。


 だけどさ。


「この世界じゃあ、そんなもの意味ないんだよ」

「貴様ッ、貴様か!? 何をした。どこだ!!」

「……ここだよ。お前と同じところ。つまりは――」 


 辺りを見回したって見つかるわけもない。

 一匹残らず魔王に群がり、その身体が霧と化した瞬間俺たちも同じことをした。

 そして、その後どうなったかはこの姿が物語っている。




「――俺達はお前と合体したんだよ」




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