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初めての町 ソラール

 九麗亜は、ミーリンの案内で『ソラールの町』の門のところまで来ていた。門の前には、町に入ろうとする人たちが列を作っていた。


「ねぇ、ミーリンさん。この町に入るのに、こんなになるまで並ぶ必要があるの?」


 九麗亜は、どうして町に入るのに列を作るのかが気になり、ミーリンに尋ねる。ミーリンは、冷静な表情を崩さず、


「それは、町に犯罪者や、不利益をもたらすものたちをはじくためです。誰彼構わず入れていて、崩壊した街の例がいくつもありますから。」


「町に入るのに、何か必要なものとかあるの?」


「特にございません。ただ、税として、一人1000ルクス支払わないといけません。一人銀貨10枚ですね。そのあと、町の中でクランに所属すれば、以降、町に入る際の税は免除されます。報酬の中から天引きされるそうです。」


 九麗亜とミーリンが話していると、どうやら列の順番が回ってきたようだ。


「次の方。この町に来た目的は何ですか?」


 受付の係員から質問を受ける。九麗亜は、落ち着いて。


「この町で、探索者クランに入ろうと思ってきました。それに、この子を養わないといけないので、しばらくはこの町で暮らそうかと思っています。」


 九麗亜は、ミーリンを指して言う。ミーリンは、少し顔を赤くしてうつむいている。係の人も、納得したのか、


「わかりました。それでは、入街税として銀貨10枚をお支払いください。」


「あれ、この子の分はいいんですか?」


 九麗亜は、税金が一人分だったので、不審に思い訪ねてみた。


「この町への入街税は、奴隷には適応されません。しかし、主人がしっかり世話をして、ほかの方に迷惑にならないようにしていただければ構いません。奴隷が他人に危害を与えた際は、主人の方にバツが言い渡されます。」


「なるほど、わかりました。では、代金の銀貨20枚です。申し訳ありませんが、私は彼女を奴隷としてみていませんし、彼女が他人に迷惑をかけることなどないでしょうから。」


 九麗亜は、いら立ちを見せながら、カウンターの上に銀貨を20枚たたきつける。係員はびっくりしながらも、


「わかりました。それでは、二人分の入街証です。これがあれば、ほかの施設でもしっかり対応してくれます。また、クラン証を作成したら、係りの者に渡してください。入街税の半額が、払い戻されます。」


 係員の説明を聞き、入街証を受け取る。そして、二人は街に繰り出した。


 町を歩いている間、九麗亜は様々な店に目移りしていた。美味しそうな肉を焼いている屋台。何やら薬のようなものを売っている店。武器や防具が展示されている店。様々な店が並んでいて、九麗亜は、クラン支部に着くまでずっときょろきょろしていた。


「ふふ、ご主人様、何やらかわいらしいですね。」


 そんな様子を見ていたミーリンにからかわれてしまう九麗亜だった。


 町を回りながら、九麗亜たちはこの町のクラン支部にたどり着いた。大きな大理石のような石造りの建物で、多くの人たちがその建物に向かって歩いている。


「ご主人様。あれがクラン支部です。あそこでほとんどの者が仕事をし、賃金を得て生活しています。ご主人様と私でしたら、探索者が一番なりやすいかと思います。他の職業は、体のほかに、信頼や、金銭、推薦が必要になってきますから。」


「わかったわ。もともと、探索者になるつもりで来たんだし。いまさら、方向転換も無理でしょう。」


 九麗亜は、ミーリンの案内でクラン支部に入り、探索者のブースで登録の受付を探した。すると、一つのカウンターが開いておりそこにいる受付の人に話しかけた。


「すみません。探索者の登録をしたいのですが。」


「ようこそ、そーらすのクラン支部へ。私は、エリア・スワードと申します。このたびは、クランへの登録、誠にありがとうございます。探索者の説明は必要ですか?」


 受付にいた女性、エリア・スワードは、九麗亜が話しかけると明るい顔であいさつをしてくれた。


「はい、よろしくお願いいたします。」


 九麗亜は、説明を請い、カウンターに備え付けられている椅子に腰かけた。ミーリンも隣に腰かけるように促す。


「ではまず、クランについてです。クランは、この世界の国と相互扶助の関係を築いている独立した組織です。クラン所属の方たちは、クラン員と呼ばれ、大まかに4つの職業につきます。その職業は、騎士、探索者、生産者、商人です。

 職業名である程度分かると思いますが、騎士の仕事は、町の治安維持と、緊急時の避難誘導、対処が主な仕事です。基本的には、所属したクランのある街の騎士として働きます。

 探索者は、いわば『何でも屋』です。その仕事は多岐にわたり、素材の収集、魔物の盗伐、貴族、商人などの護衛など、例を挙げてもきりがないくらいです。探索者は、クラン支部に拘束されず、クラン証さえあれば、どの町で活動しても問題ありません。

 生産者は、おのれの持つ技術を用いて様々なものを生産し、販売する職業です。薬師、鍛冶師、錬金術師、針子など、さまざまな種類があります。基本的に、所属したクランのある街を拠点とし、例外がない限り、ほとんど拠点を変えません。

 商人は、生産者や、探索者から様々な物資を買い付け、それを販売することで利益を得るものです。子の方々がいるので、町の流通はスムーズに進みます。また、行商人としても働き、町から町へ渡り、各町の特産品などを別の町に流通させてくれます。この方たちも探索者と同じ、クラン証さえあれば、どの町で活動しても問題ありません。

 職業の説明は以上です。何か質問はありますか?」


 エリアの説明を聞いて、九麗亜はこのまま探索者になるかを迷ったが、自分に商人はできないし、何かを作れる技能もない。やはり、探索者しかないなと一人で自己完結し、


「特に質問はありません。探索者になるつもりなので、今度は探索者の説明をお願いします。」


「わかりました。探索者に関しては、先ほど説明したとおり、仕事内容は多岐にわたります。そして、すべての探索者にはランクが与えられます。ランクはクラン証の色で判別し、一番最初から、

 Gランク→白

 Fランク→赤

 Eランク→青

 Dランク→緑

 Cランク→黒

 Bランク→銅

 Aランク→銀

 Sランク→金

 となります。九麗亜さんとミーリンさんは登録した手ですので、お二人ともGランクからになります。

 また、クラン員としてのルールですが、

・依頼は、依頼者としっかり密に話しておく。

・依頼内容を確認した時点では、依頼を拒否することができ、違約金も発生しない。

・内容を確認し、続行した場合、完了できなければ失敗とし、ペナルティーとして成功報酬の半額をクランと依頼者に支払う。

・ただし、依頼内容が全く異なる場合は、その限りではない。会話を録音できる魔道具をクラン登録時に一つ支給するため、確認可能。

・クラン員同士の諍いは、決闘にて決める。クラン支部に備え付けられた決闘上で、クラン従業員の立会いの下に勝敗を決め、反故にすればクランを脱退、奴隷落ちとする。

・依頼主、および、一般人に危害を加えた場合、その日がクラン員にある場合は即刻奴隷落ちとする。

・探索者は、ひと月に1回以上、自分のランクと同じ難易度の以来の達成、および、一つ下のランクを持つ魔物の討伐をしないと、クラン資格をはく奪する。

・探索者は、納税しなくてよい。以来の達成報酬から、支払わなければならない金額を少しずつ差し引いている。また、満額支払い終われば、その年は差し引かれない。


とまぁ、こんなところでしょうか。」


 エリアは、やっと一息ついたように説明を終えた。


「なるほど、一度に覚えられないので、登録はしますが今の内容が書かれた書類でもいただけないですか?」


 九麗亜は、苦笑いしながらお願いした。




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