仲間の力量
ミーリン、カリア、クルスは各々の得物を『コボルト』に対して振りかぶり向かっていく。
ミーリンは『フレイムエッジ』と『アクアエッジ』を巧みに操り、『コボルト』の防御を崩していく。『コボルト』も手に持っていた小剣で応戦するが、ミーリンの剣さばきによってその抵抗も無駄に終わる。
「ワウ、ワウゥゥ!!」
それでも、ミーリンに一矢報いようと拳を振り上げるが、ミーリンはその拳を左手に持つ『アクアエッジ』で肘から切り落とし、体を回転させ、右手の『フレイムエッジ』で首を落とした。
「ふう、こんなものですね。」
『コボルト』の死体から、討伐の証となる『コボルトの牙』と、魔石をはぎ取ると、主人がいる場所まで戻っていった。
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カリアの相手は剣をもったコボルト一『コボルトソードマン』だった。通常のコボルトとは違い、剣術スキルを持つ個体の総称で、個体によっては中級探索者に匹敵するものもいる。
力リアは、その『コボルトソードマン』を相手取り何合も剣を交えている。
「くっ、この『コボルト』、なかなかやるな。だが、私も、新たな主に見せる初めての戦い。無様な姿は見せれない。
セアァァァァァァァァ!!」
カリアは、剣劇をさらに激しくする。しかし、『コボルトソードマン』もそれに合わせてくる。元木氏であったカリアの剣術は相当練度が高いものであったが、『コボルとソードマン』の剣術もかなりの練度だった。
「っく、敵とはいえ、感服するまでの剣術だな。ならば、少々汚い手ではあるが、許せよ。『我が魔力を糧とし、風を纏え』」
カリアは、剣に魔力を流し込む。すると『緑風鉱の剣』が光り、風を纏いだした。『コボルとソードマン』は異変に気付いて、カリアを止めるべく斬りかかったが、
「残念だったな。」
カリアのほうが言って早く、『コボルとソードマン』の攻撃をかわし、体を回転させ、敵の首を切り裂いた。
「封、なかなかの強敵だったが、この程度で苦戦しているようではだめだな。もっと精進しなくては。」
カリアは、『コボルとソードマン』が使っていた剣と、牙、魔石をはぎ取り、九麗亜のところまで戻った。
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来栖の相手は普通の『コボルと』だった。来栖は『重魔のガントレット』を構えて『コボルト』に殴りかかっていく。
「とりゃとりゃとりゃ――――!!」
来栖の猛攻に、『コボルト』は防戦一方となっていた。しかし『重魔のガントレット』によるインパクト増強が、『コボルト』の防御をも崩していく。そこに、クルスの連撃がさく裂する。『コボルト』が、耐えかねて、膝をつくと、
「これで終わりなのです!!」
クルスが『コボルト』にとびかかり、マウントをとる。そして、その顔面に拳を振り落とす。その一撃を食らい、『コボルト』は、断末魔の声を上げるとこなく倒れた。
「これくらいとは、暴れたりないのです。」
来栖は、魔石と『コボルトの牙』をはぎ取り、九麗亜のもとに戻っていった。
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「いや~、3人とも強いね。私の援護必要なかったもの。」
後方で待機していた九麗亜が、自分の仲間を迎える。その顔は、みんなが無事で安心しているようだった。
「いえ、あれ程度の敵、問題ではありません。」
「そうだな。私の相手は少々協力でしたが、ご主人様に手間は欠かせません。」
「まだまだ暴れたりないのです。もっと殺るのです。」
「こーら、可愛い女の子がソンな物騒なこと言わないの。」
九麗亜は、危ないことを口走るクルスに、軽い拳骨を落とす。しかし、クルスは笑顔で、
「ごめんなさいなのです。」
と、返すのだった。
「さて、『コボルト』も倒したし、岩山へ行きましょうか。」
「わかりました、ご主人様。」
九麗亜はミーリンたちを引き連れて、岩山への道を歩き出した。
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「ったく、この道歩きにくいってもんじゃないわよ。」
九麗亜は、岩山のでこぼこした道に愚痴をこぼしていた。ごつごつした岩がそこらかしこに転がっており、気を抜くと躓いてしまいそうだ。
「お気を付けください、ご主人様。この辺りの岩陰は隠れられる場所も多いです。魔物たちの奇襲もあり得ます。」
ミーリンが短剣を構えながら、索敵を行っていく。今のところ、敵との遭遇はない。
「ミーリン、索敵してくれるのは助かるけど、無理はしないでね。」
九麗亜は、ミーリンにねぎらいの言葉をかける。しかし、先ほどの戦闘以外、魔物の影は見当たらず、一行の探索はおおむね平穏だった。
「あ、あそこに水晶が飛び出てるわ。こんなのがあるなんて、やっぱり異世界なのね。」
九麗亜が、岩山の壁の亀裂から、水晶が突き出しているのを見つけた。長さ1mくらいで、10センチくらいの太さで、まず日本ではお目にかかれないものだった。
「ん、ご主人様、どうしたのだ?水晶が飛び出ているなんてよくあることじゃないか。水晶なんて、それほど珍しい素材でもないだろう。」
「ですです。でも、これは結構立派な結晶柱です。1000ルクスくらいにななるのではないでしょうか。えいっ!」
クルスが水晶の柱を根元からへし折った。水晶は、ひびも入ることなく、ほぼ傷もついておらずとてもきれいだった。
「クルス、さすがに水晶を素手でへし折るのはやめなさいよ。」
九麗亜は、額に手を当てて呆れている。しかし、クルスの純粋そうな笑顔を見るとどうでもよくなった。
水晶を『収納』スキルにしまい、探索を再開した。
岩山を探索していると、壁にぽっかり空いた洞窟を発見した。入口が人一人通れそうなくらいに広く、仲も広そうだったので4人は入ってみることにした。ミーリンの『精霊魔法』で光源を作り出し、クルスの『暗視』スキルで、クルスに索敵をしてもらいながら、洞窟探索を続けていく。ミーリンの『精霊魔法』のおかげで、探索は難なく進んでいる。
「ねぇ、この辺りの壁を掘ってみてもいいかしら。正直、どこが採掘に向いているとかわからないし、とりあえずやってみない?」
九麗亜は、荷物からピッケルを取り出し、壁に向かって振り降ろす。岩肌が削れ、ごとごとと石礫が転げる。
「さすがに一回ではいいものは出てこないよね。そりゃ!」
九麗亜は、続けてピッケルを振り降ろす。変わらず石礫が出てくるだけだったが、5回、10回と繰り返すうちに、足元に、キラキラと光るものが混じり始めた。
「ん?ご主人様、足元にただの石じゃないのが混じり始めているぞ。」
カリアに言われ、九麗亜は採掘をいったんやめ、足元の石礫に『鑑定』スキルを発動させる。
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鉄鉱石(低純度)
鉄を10%以下含む鉱石。
錬成することで鉄を精製することができる。
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銅鉱石(低純度)
銅を10%以下含む鉱石。
錬成することで銅を精製することができる。
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エメラルド原石
エメラルドの原石
研磨することで、エメラルドになる。
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「結構色々取れるのね。さすがはファンタジーね。」
九麗亜は、鉱石と原石を『収納』スキルにしまい込み、ただの石礫をいくつかポケットに入れる。
「さて、もう少し探索しようか。」
九麗亜は、3人に声をかけ、さらに洞窟の奥に進んでいく。