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他種族

「九麗亜さまに関しては、今から話すことは問題ないと思っております。しかし、ほかの方々は違うのです。まず、人間種。つまりは我々なのですが、いくつかの宗教には、人間種こそが崇高な種族という、間違った解釈があるのです。しかし、その宗派の人間たちは、それが正しい価値観だと認識している。もちろん、違う方もいますが。そのため、以前お譲りさせていただきました、ミーリンや、今回紹介させていただきました、クルスなどは、大多数の人間に忌み嫌われる存在ということです。また、貴族や、高名な探索者様方は、そういった世間体をすごく気にされることが多く、よって、クルスは売れ残っているのです。」


 サバラは、クルスが売れ残っていることについて説明をした。


「ええ、そのことはミーリンを連れて歩いて、その視線がおかしくって何となく理解していたわ。でも、カリアさんが売れていない理由は何なのかしら?」


九麗亜は、人間種であるカリアが売れ残っている理由がわからなかった。


「それはですな。カリアが、人間種以外の種族を忌避しないからですよ。」


「え、それだけですか?」


 サバラの言葉に、九麗亜はさすがに驚きを隠せなかった。個人の価値観だけで、こんなに態度が変わるものなのだろうか?


「ええ、正確には、彼女の祖国の考え方がそのようだったようです。そのため、気味悪がられているのでしょう。」


 サバラは、ため息をはきながら言う。カリアも心なしか落ち込んで見えた。しかし九麗亜は、


「なら、この国の人たちが馬鹿なのね。ミーリン、いいわよね?」


「はい、ご主人様の思うが儘に。」


 九麗亜は、ミーリンに確認をとると、


「バサラさん、この二人を買うわ。いくらかしら?」


 と、告げた。


「...九麗亜様なら、そのように言われると思っておりました。代金は、一人10万ルクスで結構です。おい、この二人にまともな服を持って来い。」


 サバラは、九麗亜に金額を提示した後、近くにいた従業員に服を持ってくるように指示を出す。九麗亜は、彼女たちが準備している間に、サバラに代金を支払う。


「いいのかしら?結構格安にしてないですか?」


「ええ、本来の1/10もいただいておりません。しかし、ミーリンを見て思いました。彼女たちを任せられるのは、九麗亜様、あなたしかおりません。どうか、彼女たちを幸せにしてあげてください。」


 サバラは、深々と頭を下げる。九麗亜は大きくため息をはいた後、


「あなた、奴隷商人に向いてないですね。」


 と、嫌みを一つこぼしたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「では、九麗亜様、またのお越しをお待ちしております。」


 サバラに見送られて、九麗亜はミーリン、カリア、クルスを連れて街に繰り出した。


「とりあえず、あなたたちの服と武器、防具を何とかしないといけないわね。カリアは剣士か騎士、クルスは挙士でいいかしら?」


九麗亜の言葉て聞いて、豆鉄砲を食らった顔をしていた。


「あ、ご主人様。あの、基本的に奴隷は、新しい服や装備などをいただいたりしません。中古やおさがりなどを使用したり、迷宮に落ちているものを使います。なので、この二人はそのような顔をしているのでしょう。」


 ミーリンに説明され、九麗亜はなるほどといった顔をして、


「いい、あなたたちを買った理由は、私たちと一緒に、この世界で暮らしていくためよ。二人じゃいろいろきついしね。だから、あなたたちを奴隷としては扱うつもりはないわ。仲間、パートナーとして接するつもりよ。だから、不衛生な服を着て病気になったら困るし、いい加減な装備のせいで死んでしまったら元も子もないでしょう。立場は、主人と奴隷かもしれないけど、気持ちの面では対等に行きましょう。」


 九麗亜の言葉を聞いて、カリアとクルスは目に涙を浮かべた。


「私は、いい主人に巡り合えたようだ。九麗亜殿、これからよろしくお願いいたす。」


「私もそう思います。どうか、私を生涯そばにおいてくださいませ。」


 二人がその場で忠誠の誓いを口にする。しかし、その場所は道路のど真ん中。周囲の視線がザクザクと刺さっていた。


「...もう、周りの視線が痛いわ。さっさと行くわよ。」


 九麗亜は、その視線に耐えかねたのか、少々顔を赤くして服屋を探して歩きだした。それを見た奴隷組は、そろって微笑みを浮かべるのだった。


 九麗亜は、以前ミーリンの服を買った服屋に3人を連れてやってきた。


「あら、いらっしゃいませ、何かお探しですか?」


 店に入ると、女性従業員が声をかけてきた。


「ええ、この二人に服と下着、靴を買いに来たの。合わせてもらえるかしら?」


 九麗亜がそういうと、従業員は露骨にいやそうな顔をした。


「あの、お客様?この二人は奴隷ですよね?」


「ええ、そうですが何か?」


「いえ、普通奴隷には新しい服を与えたりしないので...」


 従業員は九麗亜の反応を見ながらも、先ほどミーリンが言ったことを言ってくる


「ええ、そうらしいですね。ですが、それが私がこの二人に服を買うのとどういう関係があるのかしら?」


「いえ、関係はないのですが...」


 従業員の声が小さくなっていく。


「なら問題ないじゃない。このお店は客の要望も価値観だけで、拒否するんですか?」


 九麗亜の一言で、従業員はしぶしぶといった感じで、


「すみません、こちらにどうぞ。」


 と言葉を絞り出した。

 カリアとクルスは従業員に体のサイズを測られている。その間、九麗亜はミーリンと話していた。


「さっきのご主人様、かっこよかったです。思わず、私もうれしくなりました。」


「前も行ったけど、私は種族が違うくらいで差別したりしないわ。それも、こんなにかわいい女の子をさげすむなんて、ありえっこないんだから。」


 九麗亜はそう言って、ミーリンの頭をなでる。ミーリンも、されるがままになり気持ちよさそうな顔をする。

 しばらくそうしていると、従業員が戻ってきた。後ろには新しい服を着た二人も立っている。


「お待たせしました。『チュニック』『ショートパンツ』『布のブラ』『布のショーツ』『布のソックス』をそれぞれ5着ずつと、『皮の靴』が二足ずつ、合計3200ルクスです。」


 九麗亜は、従業員に代金を支払い、服を受け取り店を後にする。


「さて、次は装備ね。この間言った武器屋さんと、防具屋さんは、ミーリンに対して忌避感がそんなになかったから、多分大丈夫よね。」


 九麗亜は、3人を連れて、まず武器屋に向かった。


「いらっしゃいませ、あら、この間の。今日はどのようなご用件でしょうか?」


「ええ、この二人に合う武器を探しているの。こっちのカリアは剣士、こっちのクルスは拳闘士なの。よさそうなのあるかしら。ミーリンが2000ルクスだったから、同じくらいの金額でお願いできる?」


「そうですね、そうなりますと、カリアさんには、この剣で、クルスさんには、このガントレットがいいかと思いますが。」


 そう言って見せてきた武器を、九麗亜は『鑑定』スキルで見ていく。




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