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ビュルドゥランドの話

落ちこぼれ竜の恋愛~話をしたいんです!!~

作者: 鬼火の子


初、短編!!




この世界ビュルドゥランドには、四つの種族が暮らしている。


人族に獣人族にエルフ族、そして私達竜人族。私達の種族は、四種族の中で、魔力・身体能力ともに最強を誇る種族です。


しかし、私達一族にはそれを上回るほどのマイナス要素があるのです。





あっ、私の名前はエミリです。竜族の雌。


――――実は私には、前世の記憶があるのです。前世では“ちきゅう”という星の“にほん”という所で、高校生をしていました。

まだまだ夢がありました。どうして死んだのか、私には分かりません。――――自分のことですが。




「今日は、エンドフィ山に行こうぜ」

「ああ。最近、山に魔物が多いというしね。エミリさんも気をつけて」

「っ、はっはいっ!!」


嗚呼、今日も格好よくて優しいレイ様。私の顔は、真っ赤でしょうか。

今日も、冒険者がよく来る薬屋、私の経営する薬屋にレイ様とその友人……名前忘れてしまいました。が来ています。



――――私、エミリは、狼の獣人のレイ様に恋をしております。















あれは半年も前のことでしょうか。



私はこの村に、竜族ということを隠し、人族として暮らしていました。竜族は個体数が少なく、その体からは妙薬が作れると言われています。――――半分は嘘ですが。



そんなある日のことです。


私は何時ものように、エンドフィ山に来ていました。薬を作るために、薬草を採取していました。その頃は、まだエンドフィ山は安全で、戦闘が苦手な私でも気軽に来ることができました。


油断していたのでしょうか? 私は、大型の魔物に四方八方囲まれていたのです。

最強の竜族でも、落ちこぼれの私。私は腰を抜かし、恐怖で体が震えていました。

元々“にほん”という、平和な国に居たのですから、戦闘は私には縁遠いもの。血生臭い戦闘は、私は苦手になり、嫌いにもなった。その事から、私は竜族の落ちこぼれと言われるようになりました。



魔物の鋭い爪が、私に振り落とされる、その時。私の目の前に、長い黒髪を一本に結んだ男性が降り立ちました。


そして、その男性、レイ様が、大剣の一振りで魔物を殲滅していきました。


私はレイ様に救われたのです。




「大丈夫?」


レイ様は一瞬私を見て目を見開くと、優しげな表情で問いかけました。レイ様は長い黒髪を一本に結んだ、藍色の瞳が涼しげのクール系イケメンでした。


私は命の危機が去って、安心したのでしょう。急に瞳から涙が、ポロポロと流れ落ちました。

そんな私をレイ様は、優しく涙を拭ってくれ、さらに慰めてくれました。



――――私はその時、レイ様に恋をしたのです。






あれから偶然、私の薬屋にご来店頂き、私とは顔見知り程度の知り合いです。それから一日一回、朝に私の薬屋にご来店して、挨拶を下さります。

その一日一回が、私にとって一番の楽しみになりました。


挨拶以上出来ないのか? 私は前世の記憶があるといっても、竜族です。私は会話力がありませんでした。挨拶だけで、精一杯のほど。……はい、あの頃は、挨拶だけで幸せでした。













それから半年も経ち、私が助けられた山は安全ではなくなり、危ない魔物が蔓延る山になってしまいました。


レイ様は今日も友人と、エンドフィ山に魔物退治に向かいました。レイ様が強いことは十分に知っています。しかし、私の気持ちはまた別で、毎日薬屋から出ていく姿に不安を覚えています。














美しい夕焼けを眺めながら、私は村でお買い物をしていました。

その日の夕焼けは、やけに真っ赤で、血の色のようにも感じられました。


中央の広場の辺りに来ますと、村の大人達が何やら集まっていました。

皆が皆、重たい顔つきに重たい雰囲気を醸し出し、辺りいったいは重苦しい空気に包まれていました。

私は一抹の不安を胸に抱え、大人の環に入っていきました。


「どうされたのですか?」

「エミリちゃんか、実はよう……レイとシアンが帰ってきてねぇんだよ。もしかしたら、魔物に囲まれ戦闘不能状態になっているんじゃないかと思っているんだよ。エミリちゃんは何か知っているか?」


顔が一気に青くなるのを、感じました。私は持っていた籠を落とし、エンドフィ山へ走りました。

後ろから、「おい、行くな。危ないぞ!!」などの、声が聞こえましたが、私の耳にはそれが雑音にしか聞こえませんでした。


その時の私には、戦闘が苦手とか、魔物が恐いとか、竜族とか、落ちこぼれだということを、綺麗さっぱり頭から抜けていました。



そんな私はエンドフィ山へと続く門から、竜の翼を出し、レイ様のもとへと飛び立ちました。

今思えば、村人の息をのむ音が聞こえた気がします。







エンドフィ山へと降り立ち、襲いかかってくる魔物を無意識に、私は魔法で倒していきました。


エンドフィ山の頂上へと差し掛かるというとき、男の叫び声が聞こえました。

私は声のする方へ、駆け足で向かいました。



そこには、血塗れで倒れている男と、その男を揺さぶっている男を中心に、数百にものぼる魔物が息絶えていました。


私はそれを見たとき、体の感覚が無くなっていくのが分かりました。血まみれの男は、レイ様だったから。




「レイ、なんで俺を庇ったんだ。死んじゃ駄目だ、俺が許さねぇ」


レイ様の友人は涙を大量に流し、泣き叫んでいました。気配に敏感なレイ様の友人は、私へと顔を向けました。


「お前はレイの――――」


虚ろな目をしていた友人は、私の肩を掴むと目眩がするほど揺さぶりました。


「お前、薬師だろ!? レイを助けられないか?」


私は友人の言葉を聞いて、絶対に助けられる。と、思いました。しかし、冷静な部分は、薬師の知識・・・・・では、無理だろう。と、嘲笑ってきます。



私の人生、いや竜生(?)をかけて、今まで培ってきた知識をあぶり出しました。


その知識の中に、一つだけ方法がありました。



「……一つだけ、方法があります。しかし、この方法だと、リスクがありますがそれでもいいですか?」

「『リスクもなにも、生きてるだけで僥幸だ』これはレイが常々言う言葉でも、ある。お願いだ、それをやってくれ」

「分かりました」


私は懐にある、短剣を取り出しました。その刃で指先を少し切り、滲み出た血を口内に含み、唾液と混ぜます。胸元についてある逆鱗を剥き、同じく口に含み噛み砕きます。


この時の私は、耳まで真っ赤になっていたことでしょう。レイ様の唇に私の唇を乗せ、私の口内のものを全てレイ様に流し込みました。

すると、レイ様はみるみる体の傷がふさがり、顔色も良くなっていきます。


唾液にまみれた唇を、私は手の甲で拭き起き上がりました。くるりと、友人を見ました。友人は顔を真っ赤にさせていると、みるみると顔を驚愕の色に塗り替え、私を釘いるほど見つめました。



「おっ……お前、竜族か!?」


友人の言葉で、私は真っ赤だった顔が、青を通り越して白くなるのが分かりました。


今更ですが、私は村人の前で竜の翼を出してしまいました。友人に正体を知られても、私はあの暖かい村、レイ様のいる村には居られないことを悟りました。


竜族は希少です。しかし竜族の体は妙薬です。力の強い竜族なら、いざ知らず。私は弱い落ちこぼれです。

私が多種族に見つかった場合、妙薬や実験台にされて終わりなのでしょう。よく、私の兄や姉が言っていました。




「レイ様は、あと数分で目を覚まします。」


私は友人に一礼しますと、レイ様のそば近くに寄り顔を瞼に焼き付けます。


「レイ様、私に楽しい時間を下さり、ありがとうございます。さようなら」


レイ様が目を覚ますところを見たい気持ちに、後ろ髪を引かれながら、私は翼を広げ村へと飛んでいきました。

その夜は、明日には旅立てるよう店じまいをし、私の少ない荷物を纏めました。


















あっという間に、朝は来てしまうものです。ここから一番近くにある街へ向かうため、私は南門へと行きました。

もう二度とレイ様に会えないと考えますと、目が潤んできました。


南門はこの村で一番の大きく、立派です。これも、見納めかと思い、南門を目に写すと……


そこには一人の男性が立っていました。




「何処に行くの?」


長い黒髪を一本に結んだ、藍色の瞳が涼しげのクール系イケメンのレイ様は、私へ一歩一歩近付いてくる。


「俺、エミリさんにお礼も言えてないし、大切なことも言えてない」


レイ様はその瞳に、甘くドロッとしたものを閉じ込めながら、私を見つめた。


「俺を助けてくれてありがとう。それと……」


レイ様は頬を赤く染めると、朝焼けのような美しい微笑みを浮かべた。


「ずっと前から、一目惚れだった。俺の番になってはくれないか?」


私は思わず、目が点になりました。冷静になり、レイ様の言葉を理解すると私の耳まで真っ赤になったのが分かりました。


「フフっ、その反応。良いってことだよね?」

「はっ、はいっ。よっよっよっ、よろしくお願いしましゅっ!!」


思わず舌をかんだ私は羞恥心から、また顔が真っ赤になっていくのが分かりました。


「じゃあ、俺もエミリの行くところに、着いて行こう」

「ええっ!? 友人さんは、いいのですか?」


私の言葉に、レイ様は目を丸くさせると、意地悪そうな笑みを浮かべた。


「シアンなら『新婚を邪魔なんかしたくねぇ。馬にでも蹴られた方が、まだましだ』ということで、シアンとはここでお別れなんだよ。……もしかして、俺よりシアンの方がよかった」

「そっそんなぁっ。私は、レイ様が、すっ、すっ、すっ、好きなのです」


真っ赤になった私の頬に、レイ様はキスをすると、私の首筋に顔を埋めた。

何やら、ぶつぶつと言っているようなんですが、それが終わると顔を上げ、私の手をとった。


「じゃあ、新婚旅行に行きましょうか」

「はっ、はい!!」


早朝の南門には、幸せそうに寄り添った二人の影がのびていた。






《後日話》エミリとレイの会話



「そう言えば、ちゃんと会話をしたのは、南門での会話がはじめてだよね?」

「そうですね」

「俺は前から会話をしたいな、と思っていたけど。どうして、挨拶したあと何時も、だんまりしていたの?」

「そっ、それは、挨拶で満足していたので……」

「だからかぁ、竜族の会話の下手さは本当だったんだね」

「はい、私はレイのお陰で、ここまで会話が出来るようになったので……でも、あの、私も……レイと会話がしたいと思っていました!!」


レイ様、悶え死ぬ。



※※※※※※


ありがとう御座いました。


後日話で、エミリのレイ様からレイ呼びに変わっているのは、レイが強制(矯正)させたから。


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