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とある少女と幸福の魔法  作者: 蓮兎
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一章 第一話 彼らと私の関係性

全てが闇に包まれたのち、目の前に現れた茶髪の男性は、こちらを見て何とも言えない呆れ顔をしていた。

恐らくそれを向けているのは私ではなくオレンジ髪の彼であるだろうが…。



「何してんだよユーリス、アヤ巻き込んでんじゃねえ」



「あはー、ゴメンね?ま、アヤだからどうせ助けに来るだろうなって、ね?」



「ね?じゃねぇんだよボケ!っつーか、アヤだけじゃなくてもうこれ以上街を破壊すんなって言ってんだよ!お前人の話聞いてんのか?ゼッテーその頭すっからかんだろ」


 

「えっ、ちょっと酷くない?とういうか、いくら自分の彼女巻き込まれたからって辛辣すぎない?」



「お前ベルが巻き込まれて黙ってられんの?」



「うん、僕が悪かったゴメン」



「わかりゃいいんだよ、わかりゃ」



なんだろう、私が与り知らぬところで重要な単語が飛び出てきていた気がする。

ユーリスはさっきなんて言った?

僕が悪かった…じゃなくてもうちょっと前。

“いくら自分の彼女巻き込まれたからって”…?え?

しかもそれに平然と答えてませんでしたかこの茶髪…。

………マジで?

いやいやいや、聞いて無いよこの人の彼女なんて!

そもそも読んだ話ではこの人の彼女さんて結構貧弱で街においてきたタイプの人だったはずなんだけど?!

なんで私は今このサイハの街まで彼氏とその御一行と一緒なんですかねぇ?!

別に不満があるわけでもなければむしろリットはこう…好きだったから嬉しいけどね?

こう、リットが好きな私は私じゃないってわけでして。

しかも、そんな色恋の話をしている余裕は今の私にはない!

ってことで、悪いけど彼氏関係のことは後回しにさせていただこうか!!


と、いうことで。

ユーリスとリット、それにアルがもめている間にもう一度この世界の知識を捻り出しておこう。


この世界では私が生まれ育った現世のように携帯やネットなんて便利なものは存在していない。

だから、離れた場所の人間とコンタクトをとるには風属性の魔法ウィンドによる言霊の伝達が主な連絡手段だけど、前言ったみたいに魔法の属性とそれができるくらいの魔力量かは生まれた時点で決まってるからそれ以外の方法もあるにはある。

それが、私がこの世界に来たばかりの時に見た人と共存する妖精だ。

彼らは魔力量の少ないものが呼び出して使役することができる。

逆に、ある程度魔力量のある者には呼び出すことができないということ。

その人の属性や魔力量が妖精を呼び出すに値するかどうかは、妖精自身が決めること。

つまり、召喚の儀式をしても妖精が現れなければ、一定以上の魔力もち、または必要のない属性だということ。彼らがお前には妖精なんて必要ないと言っているということだ。

まあ、元来妖精を呼び出すのは主に旅に出たものと街に残るものの間だ。

…確か、小説のリットと彼女はそうだった。

なんか一気に思い出したから適当になってしまったが、連絡手段的にはこんな感じだったと思われる。


そこまで思い出した所で、私の彼氏(仮)が話をふった。

…急にくるのはやめてほしい。



「アヤは大丈夫だったか?怪我は?」



「あっ、うん!怪我とかしてないよ!大丈夫」



「ならいい」



そう言って、彼氏(仮)は私の頭を軽く撫でた。

少し、いやとても恥ずかしい。

主に頭撫でられるとかされるのは女子からだし、ものすごい恥ずかしい!


と、そんなことよりも気になるのはアルの扱いである。

このまま放っておくのか、それとも連れていってなんかするのか。

……恐らく、彼らのことだし放っておくのだろうけど。

そう考えていたその時、アルに話し掛けられた。



「ところでさー、そこの子はちょっと私に付き合ってくれなーい?」



「ふぇっ?」



あっ、変な声が出た…いや、変な声も出るわ!

いきなり敵側のヒロイン?に着いて来い的なこと言われたらそうなるよ!

そんな風に軽く混乱している私を、リットが背に隠してアルに問いかける。



「アヤをどうするつもりだ」



「えー、私は別に興味ないんだけどー、リーダーが連れてこいって言ったから仕方ないじゃーん!」



「ふざけろ、用があんならそっちから出向きやがれ」



わーお。

敵さんの狙いが全くわからないよ!

あと、彼氏(仮)が凄い怖い。

これはちょっといらないフラグと地雷を踏んだんじゃなかろうか?

そんな事を考えていたら、アルの操っているのであろう風によって、私の身体が不意に浮き上がった。



「ふぇいっ?!」



「っ!アヤ!」



「わあぁぁっ!」



彼が私に手を伸ばすも、私はそれを阻むかのようにその手をすり抜けてアルのもとに運ばれていく。



「テメェ…」



「連れて来いって言われたからね!ちゃんと言っておいてあげたでしょー!」



ニコニコと笑いながら、アルは私の周りに風の監獄を作り出す。

まるで鳥籠のようなそれは、決して私を外に出すまいと渦巻いている。



「あははっ、じゃあ、彼女はもらってくね!どうしても返して欲しいなら、私じゃなくてリーダーに言うんだね!」



それじゃっ!

と言いながら、アルは風の監獄と共に走り出す。



「アヤー!」



「っ!」



風を操って自分と私の背を押しながら、速度をあげていく。

ユーリスとリットの声が聞こえてるけど、それに対して返事なんてする暇もなく。


「…リット」



小さい声で、すがるようにその名を呟く。

すると、アルから声がかかった。



「道覚えられても困るからさー、ちょっと寝ててねっ!」



そして、私の視界はこの世界に来て2度目の闇に包まれた。

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