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君と僕は

作者: ざぶろ

 君は僕と違ってほんとうに熱心な人だった。僕なんて君の足元にも及ばない。いつだって君は僕の数歩先をいってしまうんだ。寄宿学校時代からそうだ。君は誰よりも勉強をしていた。僕たちが惰性で毎日過ごしている間も、君は必死に本を読んで論文を書いていたね。

 そんな君の背中を見るのは好きだったけど、こうして君が死んでしまった今、僕はなんだが人生というのがわからなくなってしまった。

 君は将来のために毎日一生懸命だった。今を犠牲にして勉強していたのは将来のためだ。だけど、人生というのはある日突然、思いもよらないところで断ち切られる。

 先日君の叔母様と会ったよ。とても失望しておられた。なんたって期待の時代当主候補だったからね。それはそれは悲しんでおられた。でも叔母様の悲しみは時代当主を失ったということだけじゃない。叔母様は君が好きだった。君の人格を愛していたんだ。

 君は今どこにいるんだろうか?

 天国にでもいるの?

 もし天国にいるんだとして、君は何を思っているのかな?

 もっと僕らと悪ふざけや、遊びをしておけば良かったって後悔していない?

 君はきっと後悔なんてしないんだろうな。そんな気がする。きっと自分がやりたいこと全部やりきった、みたいな顔をして立っているんだろう。勉強しかしていなかったくせに。

 先日新しい寮の委員が選ばれたんだ。それが意外な事にマキアスなんだよ。驚くだろ? あんな不真面目なやつが。それが奴、最近やけに真面目にやってんだよ。お母様に相当やきを入れられたらしいね。まあ無理もないか。

 先生方も元気だ。君が死んだあとはもう、世界が終わったみたいな顔してたけど。でもようやく取り戻しつつあるよ、以前までの生活を。だけど僕はなんだかそれが悲しくて悲しくて仕方がないんだ。とても切ないよ。人間の生きた痕跡というのはこんな風に消されていくのかな。

 でも君はとても存在感のある人だったから、みんなそう簡単には忘れないと思うよ。だから安心してほしい。まあ、君のことだからどうせ僕たちのことなんて対して気にかけてないんだろう。わかるよ。

 君は独りで生きていける人だがらね。

 僕は違ったんだ。

 それで、僕は君と仲良くしたかった。

 だからああやって近づいていったんだ。誤解を解く前に君を失ってしまったような気がする。本当に、ただ一緒に遊びたかっただけなんだ。下心なんて、これっぽっちも。

 一つ後悔があるとすれば、僕は君へのアプローチの仕方を間違えたね。

 隣に並んで座って一緒に勉強すればよかったんだ。

 でも、この方法は君が死んだあとに思いついたんだ。

 本当に僕は心残りで一杯だ。

 だけどこれだけは信じてほしい。

 僕はただただ君と友達になりたかっただけなんだよ。

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