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~事件編~


  読者探偵のルール



1、読者探偵は、事件編発表後10日以内に小日向 雛子宛てにメッセージにて推理を送ってください。

※コイコイ氏の推理編公開予定が10日後のため、コイコイ氏の推理編公開後の推理は無効とします。



2、読者探偵は、感想欄にて参加表明する事。

※その際、感想欄に推理を書いてはいけません。書いた物は無効とし、こちらで削除します。


3、読者探偵には、推理の正誤に拘わらず、真の解決編を送付します。

※コイコイ氏の推理編が、正解していた場合はそれを真の解決編とします。


4、期限内に推理に参加し、見事に真相を見抜かれた名探偵の方は、解決編の後書きにて、ユーザーネームを発表致します。

※複数いらした場合でも、期限内であれば、全員発表致します。


5、期限内に読者探偵として参加出来ず、真の解決が行われなかった場合、それでも真の解決編を希望される声が多数寄せられた時は、解説編の公開をする可能性があります。

※感想欄にて真の解決編希望の旨を寄せられた方が30以上(同じ方が複数書いた物は1つとカウントします)あった場合です。

(その際は自らの推理を書いてください)


6、事件編のヒント等は、一切受け付けません。

※真相を見抜くための情報は、全て本編に明示されております。



 以上のルールを守って、どなた様も楽しく、気軽に参加してください。



 推理は『する事に意味があり、外れたからと言って気にする必要は全くありません』


 考える事にこそ、意味があるのです。




 貴方の推理を聴かせてください。






 2014年9月――。



 夏の残暑もすっかり影を潜め、過ごし易い日になって来た9月某日。


 新潟市の石川小学校4年生の一団は、社会科見学で市内のケーブルTV局に来ていた。


 このケーブルTV局は、開局10周年を記念した一大イベント『にいがた音楽祭』に沸き上がっていた。


 メジャーなシンガーからローカルアイドルまで、様々なジャンルのアーティスト達を迎え、六時間ブチ抜きで放送すると言う、社運を賭けたイベントは、予算の都合上、アーティスト達を一堂に会する訳にも行かず、数日に分けて収録し、編集して放映する。


 その一日に石川小学校の児童達は当たり、歓喜に沸いた。


 「誰か、アイドルに会えるかなぁ……」


 ツインテールを揺らし、期待に胸を躍らせた佐藤麻里佳が、隣のショートカットの女子、伊織川天音に話し掛けると、興味無さそうに欠伸をしながら、素っ気なく答える。


 「さぁね、誰かはいるんじゃない?」

 「天音は誰のファンなの? 私、Negiccoのnao☆ちゃん!」


 ウキウキしている麻里佳の後ろから、ムッスリ顔の色黒の少年、加原大樹とイケメンの塩谷孝文が、話に割って入る。


 「分かってねぇな。megちゃんだろ?」

 「いや、kaedeちゃんだな」


 仲良し三人組が揉めていると、天音は冷めた口調で「誰だって良いわよ」と切り捨てる。


 「じゃあ、天音は誰のファンなの?」


 麻里佳が痺れを切らして天音に纏わりつくと、天音は少し照れ臭そうに呟いた。


 「……神田沙也加」

 「誰だソレ?」

 「アナ雪の人だよ」

 「レリゴーじゃない方の人だよね?」


 三人の追及に無言で頷いた天音が小さく呟く。


 「歌が……上手だから」


 それを聞いた加原が天音を指差してケタケタ笑う。


 「お前、歌ヘタだもんな!」

 「大樹!」

 「お前は頭が悪いだろ?」


 加原の発言に、腹を立てた麻里佳と塩谷が即座に口撃する。


 「何だよ、お前ら」

 「何だはお前だ!」

 「そうよ! 虫のクセに!」


 天音を擁護する二人に圧され黙りこむ加原を無視して、麻里佳が天音の肩を抱いて慰める。


 「天音、気にしなくていいんだよ? ハエの事なんて」

 「そうだ。所詮はハエの戯言だ」


 天音も流石に深く傷付いたのか、フォローしてくれる二人の言葉にも、ただ無言で頷くしかなかった。


 「それでは皆さん! これからスタジオの見学をして頂きますので、こちらへどうぞ」


 案内役の若い女性がガイドさんらしい社名ロゴ入りの小さなフラッグを振りながら、児童達をスタジオへ導いた。


 だだっ広い殺風景なスタジオにはド派手なセットが組まれ、セットの前に扇型に数百の観覧席が設置されている。

 数台のカメラがアーティストのパフォーマンスを撮り逃さないように点在してあり、慌ただしくスタッフが東奔西走している。


 忙しなく動き回るスタッフを横目に見ながら、児童達はセットの真ん前に陣取られた観覧席に座った。


 「生で芸能人観るの、私、初めて!」


 期待に瞳をキラキラと瞬かせた麻里佳が天音を見ると、離れた席から視線を感じる。

 視線の方に目をやると、長めの黒髪の少年と目が合う。少年は麻里佳と目が合った瞬間、視線を外して隣の席の児童と話を始めた。


 「誰、あの子?」


 麻里佳が訝しげに少年を見ていると、天音がチラリと一瞥して首を傾げた。


 「さぁ……1組の子でしょ?」

 「天野だよ。天野輝宙」


 天音の隣の塩谷が、後ろを憎々しげに睨みながら言った。


 「確か、アイツって1組のトップだろ?」


 麻里佳の隣から加原が首を突っ込んで来る。


 「あぁ……成績は伊織川と同じくらいで、サッカークラブのストライカー。結構有名人だぞ」


 塩谷の言葉を興味無さげに聞き流す天音に、麻里佳がニヤニヤしながら小突く。


 「天音も有名人だもんね? 天野君、ずっと天音の事を見てたよ」

 「見てたのは麻里佳じゃないの?」

 「何だと!?」


 天音の言葉に加原が過敏に反応する。


 「いや、アイツは間違い無く伊織川を見てた」

 「ライバル登場! って訳ね」


 麻里佳が悪戯っぽくウインクして見せると、天音の顔が一瞬で真っ赤になる。


 「天音、モテモテ~!」

 「麻里佳っ!」


 クスクスと笑う麻里佳に耳まで朱に染めた天音が眉をつり上げて不快を露にする。


 「もうっ! 麻里佳なんか知らない」

 「ゴメン、天音があんまり可愛かったから」


 すっかりヘソを曲げた天音に、麻里佳が慌てて謝罪していると、スタジオ内の照明が落ちた。


 「それでは、撮影を開始しまーす! 観覧席の皆さんも盛り上がってくださいねー!」


 番組ADが丸めた台本を振り回しながら、観覧席に向かって叫んだ。


 「いよいよ始まるね! 楽しみー!」


 沸き起こる拍手の中、スポットライトを浴びたアーティストがステージに現れ、イントロが流れ始めるとスタジオ内は歓声と熱気に包まれた。


 入れ替わり立ち替わりにアーティストがステージでパフォーマンスを披露していくのを堪能していると、急にスタジオ内の照明が点いた。


 「大変申し訳ありませんが、本日の撮影は中止とさせて頂きます。観覧席のお客様は、スタッフの誘導に従って……」


 緊迫したアナウンスに、会場内は騒然となる。


 「……火災とかじゃなさそうね」

 「じゃあ、事故的な事?」


 麻里佳の問いに首を傾げる天音の下に、担任の柳沢先生が血相を変えてやって来る。


 「伊織川さん。ちょっといいかしら?」


 表情の固い柳沢先生に、戸惑う天音と麻里佳に、引き攣った笑顔で柳沢先生が話す。


 「警察の方が貴方を呼んでるそうなの」


 不安を色濃く表す柳沢先生に、天音はニッコリ微笑みながら、「分かりました」と答えると、一人でスタジオから出ていく。



 スタジオから出た天音の背後から麻里佳が走って来ると、天音は麻里佳を右手で制止した。


 「麻里佳、来ちゃダメ」

 「でも……」


 心配そうな麻里佳に笑顔を見せて、天音は言った。


 「多分、園崎さんに挨拶するだけよ。あの人、律儀だから」


 そう言って手を振る天音の後ろ姿を見送る麻里佳の脇を、サッと擦り抜けて行く人影に驚く麻里佳が、人影を目で追うと、1組の天野が天音の後を付けて行くのが見えた。



 天音が通路を歩いていると、背の高い爽やかな青年が、天音に大きく手を振っている。


 「天音さーん」


 結構な音量の呼び声に、天音は不快感を露にしながら、軽く会釈する。


 「何かご用ですか? 成木さん」


 素っ気ない天音の態度を気にする素振りも見せず、成木刑事が天音を非常線の中へ招く。


 「園崎警部がお呼びなんです」

 「何で、私を?」


 首を傾げる天音に、成木刑事は苦笑いを浮かべている。


 「天音さーん」


 廊下の先でクールビューティな女性が満面の笑みで手を振っている。


 「園崎さん……」


 いい大人がハイテンションで迎えてくれる事に、軽く引く天音の下に駆け寄って来た園崎警部が、嬉しそうに手を取って言った。


 「天音さん。久しぶりね! 7月以来かしら」

 「はい、小学生の私に何かご用ですか?」


 訝しげに園崎警部を見つめる天音に、成木刑事が耳打ちする。


 「実は……今時珍しい事件なんです」


 成木刑事の言葉に、益々分からなくなる天音を、園崎警部が真剣な眼差しで見つめる。


 「ついて来て」


 園崎警部は強引に天音の手を引きながら、警官達を押し退けて、とある部屋のドアの前に立つ。


 「この部屋で殺人が起こったの。遺体は既に運び出したから安心して」


 天音が「そう言う問題じゃない」と言いかけた時には、もうドアは開かれていた。


 8畳程の広さの部屋は、煌々と明かりが点いていて中がよく見えた。


 部屋の左側に畳敷の小上がりがあり、着替え用のカーテンが奥に束ねてある。

 部屋の床はクリーム色のタイル張りで、散らばった花びらと細かい赤い点と陶器の破片が落ちている。


 奥にはフラワースタンドと大きな姿見が一枚立っていて、右に目をやると、壁に三枚の鏡が等間隔に貼り付けてあり、その前には簡易のテーブルがそれぞれ置いてある。


 その一番奥の鏡の前に、被害者がいた形跡を示す人型があり、鏡に赤い血文字が認められていた。


 『SOS』


 多少は歪んではいるものの、一筆ずつ書かれているソレは、一際不気味さを放っていた。


 「被害者は赤井璃子、十七歳。死因は後頭部を殴打された事による脳挫傷。凶器は、この部屋にあった花瓶です。死後、まだ一時間経ってません」


 一方的に捜査状況を話す成木刑事を、天音が腕組みして睨み付ける。


 「私は何で呼ばれたんですか!」

 「捜査協力をお願いしたいの」


 園崎警部の落ち着いた口調に、天音は思わず息を呑んだ。


 「私は貴方を信頼しているの。この事件は早期解決しないと、犯人に逃げられる……。そんな気がするのよ」


 園崎警部の真剣な物言いに、天音は「分かりました」と仕方なく協力を了承する。


 「そう来なくっちゃ! 流石は先輩の娘ね」


 嬉しそうにウインクして見せる園崎警部に、天音が覚悟を決めて言う。


 「お役に立てるか保証はしませんが、親の顔に泥を塗る訳には参りません」

 「天音に解けない謎なんて無いよ」


 ハッとして声の方を見ると、麻里佳が仁王立ちで微笑んでいた。


 「麻里佳!」


 天音が目を丸くしていると、麻里佳は刑事達に丁寧なお辞儀をした。


 「天音の助手の佐藤麻里佳です。お久しぶりです、刑事さん」


 ニッコリしている麻里佳に天音が飛び付いて耳打ちする。


 「ちょっと、どう言うつもり?」

 「だって私、探偵クラブのリーダーだし」


 能天気に言う麻里佳に、天音は貫くような鋭い視線を向ける。


 「遊びじゃないのよ?」

 「分かってるって」

 「全然、分かって無いじゃない!」


 ちょっとした口論をする二人を、園崎警部が大人の対応で宥める。


 「まぁまぁ、天音さんの助手なら仕方ないわね」

 「園崎さんっ!」


 楽観的な園崎警部に怒りをぶつける天音の肩を、麻里佳が優しく撫でる。


 「ドウドウ」

 「ドウドウじゃない!」


 二人のやり取りを温かく見守る園崎警部が、小さな人影に気付く。


 「あの子も天音さんの助手?」


 園崎警部の指の先では、短髪の少年が現場を覗き込んでいた。


 「アンタ何してんの!」


 天音の怒鳴り声に後ろに身を跳ね上がらせる少年の首根っこを、むんずと掴んで揺さぶる天音に、怯えた小動物のような瞳を向ける少年。


 「天野君?」


 麻里佳が口を左手で隠しながら、目をまん丸くしている。


 「初めまして……助手の天野輝宙です」

 「アンタなんか知らないわよ!」

 「天野君、サッカークラブじゃん」


 麻里佳の言葉で怪訝な顔を示す園崎警部に、天野は天音の手を振り払って頭を下げた。


 「お願いします! 僕も加えてください!」

 「わざわざ面倒な事に首を突っ込まなくてもいいじゃない!」

 「伊織川さんだって」

 「私は呼ばれたの!」


 口答えする天野に天音が苛立ち、腕組みして威嚇する。


 「虎穴に入らずんば虎児を得ずって言うじゃないか」

 「虎児を得てどうする気なの? 君子、危うきに近寄らずって言葉も知らないの?」

 「でも、佐藤さんは?」


 論破されそうな天野が、苦し紛れに麻里佳を見る。


 「私!?」


 自分を指差し、しどろもどろになる麻里佳と天野の間に、園崎警部が手を叩きながら割って入る。


 「はいはい、もうオシマイ!」


 大人の介入により鎮静化する言い争いに、園崎警部が天野に対して言う。


 「捜査はクイズや遊びじゃないの。くれぐれも邪魔はしないでね」

 「はい……」


 意気消沈する天野も従えて、園崎警部が第一発見者の話を訊きに向かう。


 「ねぇ天音、何があったの?」


 麻里佳が天音に囁くと、天音は囁き返す。


 「何か、赤井璃子って人が殺されたらしいわ」

 「えぇっ!? リコピンが殺されたの?!」


 思わず声を上げる麻里佳が、ハッとして口を押さえる。


 「有名な人なの?」

 「有名よ! ドラマの『アリスにおまかせっ!』とか観てないの?」

 「何、そのダサいタイトル」


 興味無さげに横目で見つめる天音に、麻里佳が熱く語り出す。


 「女子高生探偵の毘沙門天アリスが難事件を解決するドラマよ!」

 「ますます萎えるわね。そのセンス……毘沙門天って……」


 天音が鼻で笑うと、麻里佳は頬をプッと膨らませて地団駄を踏む。


 「アリスは凄いのよ! 暗号を解いたり、トリックを解いたり」

 「分かった分かった。アリスは凄いのね」


 天音が軽くあしらって別室に入ると、その後ろに不満そうな麻里佳と俯く天野が続く。



 部屋は会議室のようで、8畳ほどの広さの中に、机と椅子が『口』の字型に並んでいて、疲れた顔のキャリアウーマンが一人、ちょこんと座っている。


 「お待たせしました。新潟県警の園崎です」

 「同じく成木です」


 自己紹介して向かいの席に着く刑事達の後ろに、小学生三人が離れて座る。


 「早速、発見時の事を詳しく聞かせてください」


 机の上にメモ帳を置く成木の後ろをチラチラ覗くオバサンに、園崎警部がニコリと笑って話し掛ける。


 「まずはお名前から」

 「五十いそ 五子いつこ。赤井璃子のマネージャーです」


 成木刑事がメモを取りながら頷いて言う。


 「では五十さん。発見時の状況を教えてください」


 青ざめた顔を俯かせて、小さな声で話し始めた。


 「はい、私が事務所の社長と電話を終えて、戻ってみたら璃子が……」


 そこまで話すと、五十はジャケットからハンカチを取り出して、目頭を押さえた。


 「被害者に恨みを持つ人物に心当たりはありませんか?」


 成木刑事の問いに、すかさず五十が口を割る。


 「瑛真! 瑛真亜美に違いありません!」


 五十が声を荒げて立ち上がる。


 「アミーノか……」


 麻里佳の呟きに天音が反応する。


 「誰? その人」


 芸能ゴシップに疎い天音にガッカリしながら、麻里佳が答える。


 「アミーノはね! リコピンのライバルなのよ」

 「リコピンとかアミーノとか、何か栄養素みたいな渾名ね」


 天音が話の腰を折ると、麻里佳は天音をジッと睨み付けて言った。


 「天音はもっとアイドルとかに興味持った方がいいよ」


 拗ねる麻里佳を他所に、大人達の話は進む。


 「瑛真は、璃子に仕事を取られた逆恨みをしているに違いありません!」

 「落ち着いてください」


 刑事達が宥めるのも聞かず、五十は喚き立てる。


 「きっとそうです! 『アリスにおまかせっ!』の時だって、主役は瑛真に決まってたのを急遽、璃子に差し替えになったし……他にも璃子に代わった仕事が沢山……」


 五十の言葉に麻里佳が鋭く反応する。


 「アリスってアミーノが演るはずだったんだ」

 「人気あるの?」

 「マンガが元のドラマで、どっちも大人気よ。貸そうか?」

 「いや、いいよ」


 笑顔を引き攣らせて遠慮する天音に、麻里佳が食い下がる。


 「読んでみなって! 面白いから」

 「いや、私マンガ読まないから」


 そんなやり取りの中、一人キョロキョロしている天野が、ブツブツと独り言を呟いていた。


 「成木! 瑛真亜美を呼んで」


 園崎警部の命令に「はいっ」と威勢良く返事をして出て行く成木刑事を見送って数分後。

 成木刑事が小さなイチゴ柄の白いフリフリドレスに、猫耳のようにイチゴがあしらわれたカチューシャ姿の女の子を伴って帰って来た。


 「どうぞ、こちらへ」


 園崎警部に促され、怯えながら椅子に腰掛ける瑛真に、成木刑事が笑顔を見せて話し掛ける。


 「緊張なさらずに。少し話を訊くだけですから」


 瑛真は不安いっぱいの瞳で成木刑事を見ると、後ろにいる子供達に気付いて、表情を和らがせた。


 「まず、お名前から」


 園崎警部が言うと、瑛真が怪訝な顔で睨む。


 「オバサン、私のこと知らないの?」

 「お…オバサン!?」


 瑛真の言葉に鋭敏に反応する園崎警部が、思わず立ち上がる。


 「誰に向かって言ってるの!? 私はまだ30歳よ!」

 「じゃあ、オバサンじゃん」

 「成木! 逮捕しろ!」


 興奮する園崎警部を抑えながら、成木刑事は苦笑いを浮かべる。


 「いいから質問に答えてくださいよ。オ・バ・サ・ン」


 堪りかねた天音が瑛真に向かってほくそ笑むと、今度は瑛真が立ち上がる。


 「何よ、このガキ?」

 「社会科見学で警察官のお仕事を見に来ました。小学4年生でーす」


 天音が挑発すると、頭のイチゴを振り乱して怒る瑛真に、ニンマリ笑って園崎警部が言う。


 「オバサン同士、仲良くしましょうか」


 ドッカリと座り直す園崎警部に、瑛真は不満そうに口を尖らせる。


 「瑛真えいま 亜美あみ十七歳。アイドル」


 不貞腐れながら言う瑛真の姿に、麻里佳はドン引きしている。


 「被害者との関係は?」

 「親友です」


 サラリと言い切る瑛真に園崎警部が追及する。


 「何でも、被害者に仕事を取られていたとか」

 「それは違うわ。私がリコピンにお願いしたんだもん」

 「何故、そんな事を?」

 「私は歌一本でやりたいから、リコピンに回したのよ。大体、私が降りただけで、都合良くリコピンに仕事が回ると思う?」

 「確かに……」


 納得の言い分に頷く刑事達に、瑛真が言い放つ。


 「犯人はアイツよ」


 瑛真の唐突な言葉に、刑事達の顔が一瞬で引き締まる。


 「それは誰ですか?」

 「制作スタッフの曽菅。リコピンのストーカーよ」


 澄まし顔の瑛真が腕組みしながら言う。


 「今日、楽屋に挨拶に行った時に言ってたわ。曽菅が花を送って来たって」

 「その花って……」

 「楽屋にあったでしょ? デンファレ……リコピンが好きな花」


 瑛真の言葉で、脳裏に現場の光景が甦る。


 「そもそも、この仕事も曽菅のオファーで入ったらしいし、リコピンに曽菅の事は相談されてたから」


 園崎警部が立ち上がって成木刑事を指差す。


 「曽菅を連れて来い!」


 成木刑事は飛び上がって部屋をダッシュで出て行くと、瑛真が面倒臭そうに言った。


 「私、もう帰っていい?」

 瑛真の横柄な態度に、園崎警部は少し苛立ちを感じながらも、笑顔を崩さず言う。


 「別室に待機していてください。五十さんと一緒に」


 瑛真は園崎警部のお願いに、チッと舌打ちして席を立つと、椅子を戻して部屋を出て行った。


 「私……アミーノのイメージ変わっちゃった」


 麻里佳が眉を顰めて呟くと、天音は腕組みしながら言った。


 「そうかしら? 意外とイイヤツかもよ」


 そう呟いて目を閉じる天音の後ろでは、相変わらず天野がブツブツ何か言っていた。


 「連れて来ました!」


 成木刑事が入ってくる後ろから、ゆっくりと現れたムサイ男。

 小汚ないTシャツにダメージジーンズ。頭はボサボサの一見ニートのような風貌だか、TV界ではかなりの力があるらしい。


 「僕に何か用ですか?」


 やや尊大な態度の曽菅に、敢えて低姿勢で応対する園崎警部。


 「お忙しい所、大変恐縮ですが、お話をお聞かせください」


 園崎警部が着席を促すと、椅子を乱暴に引き出し、ドッカリと腰を下ろす曽菅に、成木刑事が質問を開始する。


 「お名前からお願いします」


 成木刑事の問いに頭を掻きながら、面倒そうに答える。


 「曽菅そすが正彰まさあき。三十三、ディレクター」


 眠そうな曽菅に園崎警部が話し掛ける。


 「被害者との関係は?」 「プラトニックな関係ですよ。普通の恋人とは少し違いますね」

 「被害者はストーカーされていると言っていたそうですよ」

 「バカな……璃子とは相思相愛ですよ。あの花が証拠です」


 鼻で笑う曽菅を訝しげな視線で見つめる成木刑事が、質問を変える。


 「今日は被害者と会いましたか?」

 「もちろんですよ。楽屋入りしてから会いに行きました。花を飾って置いたのも僕です」


 得意気な曽菅を睨み付ける天音が、手を上げて園崎警部を呼ぶ。


 「タイムテーブルを調べてください」


 天音の耳打ちに静かに頷いた園崎警部が、大至急調べたタイムテーブルを準備する。

 タイムテーブルを見る天音と麻里佳と天野。


 赤井璃子が楽屋入りしてから遺体発見までの事が書いてある。


 楽屋入りが午後1時。


 その後、五十が電話のために席を外したのが、午後1時40分頃。


 曽菅が楽屋に訪問したのが、午後1時55分頃から約5分間。


 瑛真が楽屋を訪問したのが、午後2時5分頃から約5分間。


 それから間が空いて、五十が遺体を発見したのが、午後2時25分頃。


 空白の時間が15分間。


 五十は電話、瑛真は舞台に出演中、曽菅はサブにいたらしいが、忙しさの中でスタッフの記憶は定かではない。


 天音と天野がジッとタイムテーブルを見ていると、曽菅が体を反らせてから反動で立ち上がった。


 「犯人は五十さんだね。璃子は事務所を変えたいと言っていた。あの事務所は璃子無しじゃやってけないからね」

 「何故、貴方がその事を知ってるんですか?」


 園崎警部が問い掛けると、曽菅は不敵に笑う。


 「僕は璃子の事なら何でも知ってる」


 その笑みに園崎警部は背筋に悪寒が走った。


 「なーんだ。そう言う事か……」


 天音が大きな独り言を呟くと、室内の視線が一斉に集まる。


 「天音さん! どう言う事なの?」


 園崎警部が天音に縋り付くと、天音は振りほどきながら答える。


 「被害者は犯人の名前を書いていたんです」

 「それって『SOS』の事?」


 園崎警部が首を傾げると、天音は頷いて言う。


 「そうです。その答えは天野に話してもらいましょう」


 突然の指名に慌てる天野が天音を見ると、天音は横目で天野を見つめた。


 「貴方も分かったんでしょ?」

 「まぁ……一応」


 緊張からか若干、目が泳いでいる天野が立ち上がる。


 「じゃあ、宜しくね! 名探偵」


 天音が天野の肩を優しくポンと叩いて言うと、天野が話し始めた。


 「犯人は……」





 以下、推理編に続く。



 さて、赤井璃子を殺害した犯人は誰でしょう。



 我こそは名探偵と言う読者探偵の方は、感想欄にて参加表明をして、『小日向 雛子』宛てに犯人の名前と結論に至った推理をメッセージにて披露してください。



 容疑者は3人ですので、メッセージをきちんと読み解けた場合のみ、正解とします。


 つまり、理由まで正解しないと不正解です。



 事件を解決するのは、貴方です。



 多数のご参加をお待ちしております。




 尚、読者探偵の代表として、後日、コイコイ氏の推理編が公開されます。


 合わせて御拝読頂きますよう、宜しくお願い申し上げます。




 この作品は、コイコイ氏の推理編と連動しております。

 従って、解決編もコイコイ氏の推理編と連動しますので、コイコイ氏の推理編の内容で、解決編も変化します。※推理編が正解だったからと言って解答を変えると言う意味ではありません。


 よって、解決編はコイコイ氏の推理編公開後、数日かかります事をご了承ください。





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