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しょーとすとーりーず⑧

5度目のミレニアム・・・


いろづかい、フォルム、質感、音響、ニオイ、否私の官能するすべてを挑発して凌駕していく劇薬たる風情・・・

シュールアートのきょくほくを悪夢てきなまでに緻密にさいげんした、それでいてながめるもののすべてを恍惚とさせるであろうこの、超未来都市を私は凝視している。


私がこの、うちゅうにいきること、知性という狂気のうずなかのそのてっぺんの被験者ー具現者となったいきさつや動機など、詳細をかたるほどでもない。


それは純粋にただ眼前にひろがっているこの風景がみたかった、もうそれだけでしかない。


わたくしのすごした、5千年というぼうだいなちんもく、その代償はいますべて報いへとくべられた。


私はこの知性のおかした狂気のプロジェクトの全体像を、ぼんやりとただ、かいつまんでしっている。


この惑星にてわれわれじんるいが、かれらきんるいをりようすることにてはじまったこのプロジェクトは、深遠な帰結をむかえていくのだ、としかいいあらわせない。


当然ながらこのプロジェクトのはじまりは、一人物とキノコのシンプルなであいによってもたらされた。


そののち、霊長としてわれわれじんるいをうわまっていくこの特殊なきんるいは、両性具有てきであり、にちじょうてきなメスのじょうたいでは、きんるいにとって繁殖のさまたげになることはいっさいなく繁殖するし、

じんるいには、栄養物としてりようされてきた。

ゲノムとしてのじょうけん下、約13年ごと、地下のちかという、位置エネルギーにて、きんるいぜんたいが同時せいをもってオス化したさい、きんるいとしては、いっせいにモデルチェンジをなし様変りするし、それを食したじんるいには、猛毒があたえられるのである。


たまたまある地下室でオス化したきんるいを食したその人物は、13年誰にも発見されず、13年後のある日突然あらわれ、そして、ある日突然ふたたび消えてしまった。


かれは数百年後、のせかいにもういちど目をさますうんめいとなった、かれはひとしれずある地下にて長いねむりについた。


この猛毒は、強い幻覚をともなって、せいぶつを仮死じょうたいにしてながい、ながいねむりを強制する、逆説てきには、ながいながい、仮死じょうたいをかのうなからだへと強化する。

仮死じょうたいのそれは、13年後、いちどめをさます。


そののち、40日間生き、ふたたびひとしれない場所でねむりにつく。

(百数年~数千年、げんざいそのびちょうせいがかのうであるため、それをプロジェクトの基礎としているのだが)

ふたたびそれはながい、のちにめをさます。


仮死じょうたいのそれがみつづける幻覚は、ながい、のちにめざめ過ごす40日(さいしょのかれは、300年ほどのちのみらいをすごした)の記憶~よって、予知夢である~のマニアックな詳細、もっとくわしくいうならば、40日プログラムの永遠回帰、つまり、えんえんとしたループの、未来の日常のきおくを40日間のサイクルで、さらにもっとせいかくには、40日×119回=4760日つまり、(うるう年を考慮して)13年と12または11日後にめざめるまでに、リアルタイムな夢の現実を、そして未来の現実を、119とおりの可能性、パターンをもってして、イヤでも深く記憶に刻みつけながらロールプレイングしていく、という代物である。



さて、この美しい、恐怖の都市へと至るこの惑星のへんせんは、じつにかんがい深い。


このプロジェクトは、ただ食用とされつづけてきたこのきんるいが、ぐうぜんの毒性の発見とその超げんじつてき

効果の、研究と開発によって、ひやくてきにじんるいのすべてをへんぼうさせた。


つまり、未来の記憶をせっきょくてきにとりいれることで、じんるいのげんざいと未来は超スピードでむすばれてしまった。


そして、未来へとはけんさせるじんいんに、13年後もちかえる未来の記憶を、こまやかにくまなくタイムシフト

していくことでじんるいの科学はインフレーションしていった。



私はもっともきけんでなにより精神てき代償のたかいとされる1000年スパン、の旅路を、まよいなくえらんだ。


私は未来へいきたかった、誰も見ることのできない、とおいとおい未来へと。


われわれモルモットは、核兵器、地球滅亡にもたえうる地下深くのシェルターでかわれていく。

このべんりな毒キノコを、定量食すことのみで、われわれはとくにてをかけられることはない。

その量にまちがいがなければ、たとえ1000年間でも私は放置されていてかまわない。


いまやこのほしは、科学と生体化学との不思議な婚姻にうまれたこどものようである。


私は、けっか5000年のこの惑星のれきしをおおざっぱにかいまみて、それはひょっとして、ミレニアムというとくべつなたいけんでしか得ることのないおおきなたいけんをもちかえったようにおもう。


私はいちど、じんるいの滅亡をみた。

私はいちど、じんるいの救世主となり、アダムとなった。


しかしなによりかんがい深いたいけんは、惑星が劣悪に崩れ果てたとき、

そのぶんめいをたすけ、さらに向上させていったのは、いうまでもなくこのきんるいなのであり、私はその美しい手腕をまのあたりとした。


さいしょのミレニアム、きんるいは発光し、それを言霊とした。

それは、淡くまじりあった、ターコイズブルーと、レモンイエローをしており、ごくわずかに、ローズレッドがまぎれこむ。


この発光できんるいはこうごうしく、ふくざつなじげんにてかいわしていく。

いつのまにかじんるいのぶんめいはかたむき、それを維持しているのは、じんるいをこえ、たかい知性をそなえた、きんるいたちであった。

もはやわれわれモルモットを維持し育てるのは、じんるいではなくきんるいなのである。


もうひとつ、このきんるいに途轍とてつもなくたかくそなわっているのは、雑食性をいかした、最強のサバイバル力である。


じんるいがかたむいて、じんるいがよりかかるきょうぞんじょうたい、であった第2ミレニアム、きんるいは、街を呑み込み、自然を呑み込み、山や海をも呑み込んでしまった。

そして、そっくりそのままのフォルムで、より強度のたかい構造、素材で惑星のありとあらゆるばしょをぬりかえてしまった。

発光しないばしょは、地殻のおく深いばしょだけではないのか。

もはや惑星は、きんるいの独壇場であった。


もう、とっくのむかし、じんるいが、核にほろびた、第3のミレニアム、荒廃した惑星を呑み込み、有害となるすべてのぶっしつをかきかえ、ふたたび、せいめいのすむことのかのうな、美しい惑星を創造した。

私はきんるいからうまれた、美しいイヴと交接し、子をうませた。

あたらしいじんるいを私は創造し、私は神となった。


さて、じゅみょうもそろそろとなったこのさいごのミレニアム、深夜の都市、じんるいには、設計不能なすべてのまちなみが、私の目を喜ばせた。


あたらしいじんるい、わがこどもたちは、2000年のあいだにて、数をふやし、惑星じゅうをかがやかせていた。


夜明け前であるのに、かがやきがとまることはない。

きんるいは、とっくに地殻をやぶり、中心核へと到達していることだろう。

この惑星は、もはや、地の底からしてまばゆい。


夜明け、私は光とともにきえていくだろう。もうしばらくのあいだ、この美しい街をたのしむこととしよう・・・


あかつき・・・私は信じられなかった。


私にふりそそいだのは、強くマブシイ、ターコイズブルー・レモンイエローそして、ごくわずかながらハッキリと彩った、ローズレッドが織りなす、太陽の光線だった。


ああ、なんてうつくしい、なんてうつくしいせかいで、死んでいけるのだろう・・・


意識がモウロウとしてきた。

ナガクナイ。・・・


・・・私は私をみおろしている、私は地にうずくまっている。


・・・すると、私の内側がまばゆく光の輪を放った。


ターコイズブルーと、レモンイエローと、そして、ごくわずかの、ローズレッドの光で。


私は、新しいじんるいへと、生まれかわった。

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