第四話 赤
それからA君は一週間に二日程度のペースでB君の元に通い続けました。A君はいつも身の回りであった出来事や最近買ったゲームの話などしかせず、B君の病気については一切触れようとしませんでした。B君に余計な負担をかけたくなかったんでしょうね。そして自分自身にも言い聞かせていたからだと思います。
「俺が治ると信じなくてどうする」と。
またB君もそれを黙認していたようで自分からも病気について触れようとせず、A君に心配かけまいといつでも前向きに生きていました。
……しかし無情にも病魔はそんな二人をあざ笑うかのようにB君の体を確実に蝕んでいました。
A君がB君のことを見つけてから二・三ヶ月たった頃でしょうか。
A君はいつものようにB君の元に行ってくだらない話をしていました。A君は本当にいつも通り話していて、B君も本当にいつも通り笑って聞いていました。A君もB君も本当にいつも通りでした。
そして数時間話し、A君は帰りの電車の時間が近付いてきたので帰ろうとしました。A君が席を立ってB君がいつものようにベッドの上から見送ろうとした
その時です。
B君が聞いたこともないような勢いで咳込みました。
すでに部屋をでようとしていたA君は、背後からの聞いたこともない音に驚き勢いよく振り返りました。
A君はそこに広がっている光景に驚きを隠せませんでした。
苦しそうに悶えているB君
赤く染まったシーツ
B君の口から吐き出される、赤い
血
A君はB君の元に駆け寄り混乱しながらもナースコールのボタンを押しました。