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どうやら自分は仕事が好きらしい。


もちろん嫌々やっているものではないが、親から継いだ仕事で特別な熱意があるつもりはなかった。というより、日々の食い扶持を稼ぐためのものは“好き嫌い”の対象ではないと思っていた。しかし、まだ許婚だったころの佐保に「あなたはこの仕事がお好きなのですねえ」と感心されたことがある。あれは確か、三日三晩夜通しの捕り物を終えた翌朝のことで、無事に下手人を捕えることのできた軽い興奮状態を引きずり、疲労困憊どころかいきいきと――むしろ戯れに佐保にちょっかいを出したりなんぞしていたら、こちらの体を案じて訪ねてきた佐保が、半ば呆れるように、そして誇らしげにしみじみと言ったのだ。


こうしてやるべきことを決め、それに向かって進んでいると、そんなやりとりを思い出す。たしかに、難しい仕事であればあるほど面白がり、さてどうしてやろうかと浮き立つ自分がいる。



異世界へ渡る力を持つ者を探し始めた。上司への打診は、ある程度のアタリがついてからにするつもりだ。そういう事象があり、犯罪があり、迷い人がいる。取り締まる者を組織化したいという話を告げるには、実現性を示す必要があるだろう。以前話を聞かせてくれた男には、具体的に動き出すときにその旨を伝えた。自分自身は職業を変えるつもりはないが、相談には乗ろう、心当たりの者にそれとなく話をしようと申し出てくれたのはありがたかった。


そうして、材料を携え上司に相談を持ちかけたのは、動き始めてから3か月ほど経った頃だった。季節はすでに、盛夏を迎えていた。



「……ふん」


報告書をぽすん、と床に置き、肯定とも否定ともつかない相槌を返してくる。この上司、小野田は話のわからぬほうではない。むしろ常に公正な采配を振るうことから、部下からの信頼厚い男だった。それでもさすがに突拍子もない提案ではある。説得には時間がかかると思った。


「信じ難い話だとは思いますが、しかし…」


言い募ろうとした自分に手のひらを向け、制すと、小野田は「そうではない」と言った。


「いや……ちらほらと、そんなような話を耳にはしていたのだ」


「なんと! それではなぜ、調査をお命じくださらなかったのですか」


「なぜと言うて…そのような眉唾に割く人員が無いことくらいお前にもわかろう。この人手の足りないときに」


確かに、仕事は常に忙しかった。今回の件に3か月も時間を要したのも、多忙な執務の合間を縫っての探索だったことが原因だ。


「けどなあ…」


上司のつぶやきに、目線で続きを促す。


「お前、実際に体験しちまったのか……。お前が――引田勘右衛門が“ある”と申すのであれば、信じぬわけにはいくまいよ」


「小野田様……!」


「お前は不確実なことを儂には申さぬ。……“それ”はまことに存在したのだな」


父の旧友でもある小野田には、赤子の頃から知られており、頭が上がらない。その小野田に、そこまで信頼をしてもらえていたとは。ありがたさと、期待を裏切れぬという緊張感とで自然と頭が下がる。


「して、その“異世界”へ渡る力を持つ者を集めて囲いこみたい、と。アテはあるのか?」


「力を持つ者については今のところ二名ほど接触しています。それと……ここだけの話ですが、じつは、甥も」


「ほう? お前の甥と言ったら…小松のか。最近、見習いに入った?」


「いえ、三男ですからまだ子どもです」


「ふん……」


考え込むときに感情を読ませないのが、この上司の得意技だ。いつか自分も身に付けようと思うものの、こうして裁きを待つ間は落ち着かないことこの上ない。


「まあ……罪人を捕らえよう、悪用する者どもから能力者を守ろう、というのは賛成だ。しかし人探しというのはどうであろうな」


「と、おっしゃると?」


「その菓子屋の坊やは稀な例であって、神隠しなんぞと言っても大抵はかどわかしか人殺しか…あるいは自らの意思で失踪したか、そのどれかだ」


「そんなわけは!」


思わず声を荒らげてしまい、慌てて口を閉じる。小野田の目が一瞬、細くなった。


「……念のために聞くが。人探しができるように整えたいというのは己の妻を探すためではあるまいな?」


「もちろんまったくそのつもりが無いとは申せませんが、妻のことはあくまでもきっかけに過ぎません。不可抗力で飛ばされてしまった人たちを、一人でも多く家に帰してあげたいと」



……スラスラと思ってもいないことがよく出てくるものだ。きっと嘘はバレていると思ったが、小野田はそれについては何も言わず、いつものように「ふん」とどちらともつかない相槌を打っただけだった。


「まあ…ともかくやってみよ。ただし焦るな、慎重にいけ。本当に実現させようと思ったら決めねばならぬことは多かろう。五年…あるいは十年、時間のかかる仕事だと思えよ」



==========


小野田の前を辞してきた。ひとまず道筋はついたのだ、もっと士気が上がってもよいものだが。屋敷へ帰る道すがら、我知らずぼやきがこぼれてしまう。


「十年か……」


確かに、まともに取り組もうと思ったら一年や二年でどうにかなるものではないだろう。というより、そんな拙速にどうにかしてよいことではないはずだ。しかし。


「それは長いよなあ……」


正直に言って、冷や水を浴びせられた気分だ。そんなに待てるか? 佐保。一年前のあの頃の、衝撃と混乱の日々の痛みは、その頃まで消えずに残っているのだろうか。今はまだこの胸を苦しめ続けているけれど。



あれはちょうど今日のような日だった。日が暮れてもまだ空は明るく、生ぬるい風が顔をなぜる。夫婦になって半年になろうかという頃に、長崎への出張を命じられた。期間は三か月。初夏に出立し、江戸に戻ったのは盛夏のこと。顔が見たくて飛ぶように帰宅した自分を待っていたのは、佐保の実家からの離縁願いだった。


草鞋の紐も解かずに神尾家へ走った。


『離縁とはどういうことですか義父上! 佐保はどこにいるのです?』


『佐保はここにはおらぬ。あいつは…姿を消した』


『姿を消した!? それはいつです? 義母上のお具合が悪いゆえ実家へ下がると文が来ましたが』


幼なじみとはいえ、嫁いだばかりの婚家で夫のいない三か月を留守番させるより、実家で過ごさせたほうが安心だと、文を読んで安堵したのは長崎についてすぐのころだった。


『引田の邸より戻って間もない頃じゃ。だからもう三月近く経っておる。もうよい、離縁をしてくれ』


『なにを言うのです! 佐保を、探さねば』


『……勘右衛門』


『は』


『佐保のことは、神隠しにでも遭ったと思ってあきらめてくれ』



神隠し。原因のわからぬ失踪を指すにちょうどよい言葉だ。そのほとんどは、かどわかしか、自らの意志だと小野田は言ったが――そんなはずがあるわけない。無事に戻ってきてくれと、私を忘れないでと耳元で聞いた吐息混じりのささやきは、まだ耳に残っているのだ。


あれからずっと、佐保を探し続けてきた。最初の数日は、ひたすらがむしゃらに歩き回っただけだったが、しかし何の手がかりも得られず、冷静になって戦略を立て直した。綿密に、可能性をひとつずつたどり、つぶしていった。


そして1年が経ち、義父からふたたび離縁を請われたというわけだ。まだあきらめてはいない。必ず見つけだすつもりでいる。が。たしかにあの頃のような焦燥は今はない。じっくり腰を据えて、いつか必ず、と、少しずつそんな言い方に変わってきているのは認める。


「けど十年てのはなあ……」


能力者による組織作りは佐保を探し出すための糸口になるはずであったが、しかし常の業務の傍らまともに取り掛かれば、佐保探しに割く時間はなくなるだろう。それが佐保に近づくよすがとなるのか、あるいは遠ざけてしまうのか。後者であればこのまま進むべきなのか。今ならまだ引き返せる。小野田にはなんとでも言えばよい。しかし、知ってしまった犯罪を捨て置くというのも――


はぁ、とため息をこぼす。やれやれ。


「若様、お戻りなされませ」


うん?と、顔をあげると、ちょうど辻のところに和平が立ち、こちらを見ていた。


「おう、使いの帰りか。そっちから来たってことは、小松家かい?」


そういえば、例の迷子騒ぎからずっとバタバタとしていて、あれ以来小松家には足を向けていなかった。伊三郎の顔も、見ていない。連れ立って歩き始めると、和平は声をひそめた。


「若様には、小松様のご様子を近頃お聞きになりましたか」


「小松の…? 何かあったのか」


「奥方様が伏せっておられるようなのですが…」


「姉上が? どうされたって?」


「それが…たまたま今日うかがいました折にそうと知りましたのですが、どうも皆の口が重く、ご様子を教えてもらえませんで。ただ、」


言い淀むのを目線で促す。


「どうやら伊三郎さまが関わっておられるようで」


「伊三が?」


「はい。伊三郎さまのお姿が見えなかったものですから、どこかへお出かけかと何の気なしに聞きましたところ……今は邸にはおられないと」


「邸にいない? じゃあどこにいるってんだ」


「口が重いのを食い下がって聞き出しましたところ、それが寺に預けられているというのです」


「なんだって? なんでまた」


「それ以上は何も…以前祈祷の話などもありましたし、心配で。ですから若様がなにかご存じではないかと」


伊三郎に“憑き物が憑いている”と言い、祈祷を受けさせていた姉。その姉が床に伏していて、そして伊三郎は寺に残された。それはあいつの“能力”、周りから見ると“神隠し”に見えるあの力が関係しているに違いない。であれば――それは、食い止められたのにそれをしなかった、自分のせいではないか。


「いいや初耳だ。知っていたら捨て置くわけがなかろう――いまから小松家へ行ってくる」


==========


「これは引田の若様、お久しゅうございます」


小松家の玄関で訪ないを告げると、出迎えた用人はかすかに目線を泳がせていた。


「うむ。しばらくご無沙汰しておったので、姉上にご挨拶をと思っての。ご在宅か?」


「は、いえ、そのー…奥方様にはお体の調子がすぐれないようで、お休みになっておられまして…」


「ほう…ならば仕方がないな。またにしよう」


様子を探らずあっさり引き揚げようとすると、明らかにほっとした表情になる。すかさず加えた。


「ではかわりに子どもたちの顔でも見ようかのう」


「お、お子様方でございますか」


「母親が伏せっていては退屈しておろう。上がるぞ」


お待ちを!という声を無視し、ズカズカと廊下を行く。居間まで来ると、賢四郎が不安げな顔で一人ぽつんと座っていた。


「賢」


「おじうえ…」


「伊三はどうした」


「あにうえは…」


くしゃりと顔がゆがむ。抱き寄せてやろうと手を伸ばしかけたところに、追い付いた小松家の用人が膝をついた。


「若様」


「…一体何があった」


「お話し申します。ですからどうぞ、お子様のお耳には……」


賢四郎の頭をひと撫でし、部屋を移す。用人に説明を促した。


「正直なところを申しますと、実際に何があったのかはわからないのです――ふた月ほど前になりますか。あの日、奥方様は伊三郎様を連れて寺へ祈祷へお出でになりました。そして、気を失われてお戻りになったのです。供をした者が申すには、そのー…申し上げにくいのですが」


「構わぬ。申せ」


「は、それが…『あのような化け物は、私の子ではない』とうわ言のようにくり返しておられたそうで」


「なんと…!」


「それで、ひとまずは伊三郎様を寺へ預けて戻って来たのだと申すのです。旦那様はそれをお聞きになりまして、迎えに行かずともよい、とお命じに」


「それは、姉上が落ち着かれるまでは、か? それとも『今後一切』、か」


「……奥方様のご様子が落ち着かれたときに、それでは伊三郎様を迎えにやりましょうと申し上げたのです。すると奥方様は、また発作のように『知らない、知らない』と叫ばれまして。旦那様は、もうよい、と。もうこのまま、伊三郎様を小松家に戻すなと」


「……」


天を仰ぎ、息をつく。なんてことだ。母親から“化け物”と呼ばれ、訳もわからず寺に置き去りにされ、一人で迎えを待っているのか。さぞ怖い思いをしているだろう。


「わかった。俺が迎えに行く。伊三郎はそのまま引田家へ連れ帰る」


「若様…!」


「義兄上に伝えよ。伊三郎は勘右衛門が預かる、とな」


そう言うや、立ち上がり玄関へ向かう。伊三郎を捨てた小松家に、これ以上長居したくなかった。


「若様!」


「なんだ! 異論はあるまい!」


怒りにまかせて怒鳴り、振り向く。すると、


「――!」


追いかけてきた用人は膝をつき、額を床にこすりつけていた。絞り出すように告げてくる。


「どうぞ伊三郎様を…どうぞ、よろしゅう…」


「お前……」


「迎えに行くなと命じられ、陰ながら様子を伺うことしかできません。伊三郎様は、涙ひとつこぼさず、じっと迎えを待っておられます。どうか伊三郎様をよろしくお願いいたします」



==========

その足で、伊三郎が預けられているという寺へ行った。あたりは薄暗くなり始めていたが、どこかまだ暑かった昼間の空気が残っている。住職に話を聞くと、姉は案の定、伊三郎が輪を潜り異世界から戻って来たところを目撃してしまったのだという。事情を知らぬ者から見れば、伊三郎が何もない空中から姿を現したように見えたはずだ。


それで、化け物、か。


伊三郎のいる部屋へ案内され、そっと覗くと、薄暗い中で小さな背中が壁に向かい、じっと膝を抱えていた。


「伊三」


声をかけると、振り向いた目はうつろで。


「すまなかったな、迎えが遅くなって」


近寄っていく自分を無言で見上げてくる。


「伊三――」


「母上が、」


無表情でぽつりとつぶやくのが聞こえ、足を止める。


「母上が、わたしをばけものだとおっしゃいました」


「伊三」


「だから、だれもむかえにこないのですか? わたしが、ばけものだから」


眉根が寄るのをなんとか抑え、笑顔を作る。しゃがみこんで目線を合わせてやった。


「化け物は泣いたりなんぞしない。人間だから泣くんだ」


「わたしは泣いてなどおりません」


そう、確かに涙ひとつこぼしていない。むしろ感情を忘れてしまったかのように無表情だ。けれど、しかし。


「なあに、おじうえにはお前の胸が泣いておるのがようっく見えるわ」


抱き寄せて、その顔を胸に押しつけてやった。


「そら、隠しておいてやるから、泣いてしまいなさい」


ぽんぽんと背中を叩いてやると、二回、三回、背中が震え、そして――


「っ ~~~~~っ!」


それは「うわあん」でもなければ「ぎゃーん」でもない。今までずっと一人で堪えていたものを一気に出そうとして、声にならない声で泣き叫ぶ。その声はこちらの心まで千切られるようで。


まいったなこりゃ……


「このあいだ、迷子の、っく、坊や、人助け、っておじうえ、が、ほめてくれたから、だから、また、しようって」


「そうか…」


背中をさすりながら、嗚咽まじりの訴えを聞いてやる。つまり先日の迷子騒ぎで「人助け」をしたことがうれしくて、再びあちらへ渡ったというのだ。


「でも、それで、帰ってきたら、母上に、見られて、それで、母上が、ば、ばけも…」


ぎゅうっと抱きしめてやる。


「うん、そうか」


「あっちへは、行ってはいけないのですか? でも、人助けを」


「伊三…」


また嗚咽をもらし始めた背中をさすりながら、言い聞かせる。


「おじうえと一緒に帰ろう」


「……」


賢い子どもだ。その言葉だけで、もう小松家からは迎えが来ないことを悟ったのだろう。伊三郎は静かにこくりと頷いた。


もう、引き返せない。お前のその力は化け物じみてなどいない、人を助けることができるのだぞと、伊三郎に伝えてやらねばならない。伊三郎が自信をもって歩める道を、整える責任が自分にはある。佐保、佐保、すまない。お前を迎えに行くにはしばらく時間がかかる。待っていてくれるか? 許してくれるか、佐保。


==========


――あなたはこの仕事がお好きなのですねえ


『そうかあ? 考えたことないけどな』


――お好きですとも。佐保は誇らしゅうございます


『そういうものかねえ』


――もし……いつか、仕事か私か、どちらかを選ばねばならぬときがあったとしたら


『なんだってえ?』


――そんなときは迷わず、お勤めを選んでくださいませね


『仕事かお前かっていったら、そりゃあお前を選ぶに決まってんだろうよ』


――いけません。お勤めを選ばなけりゃ


『なんでだよ』


――だって。あなたのお勤めには、江戸の町の何百何千の人々の暮らしがかかっているでしょう?けれど佐保の身が背負っているのは、あなたお一人だけですもの


『…まあ、未来の女房どのがそう言うなら、聞かないわけにはいかないか』


――そうですとも


『ほんとにいいのか? それで』


――もちろん


『けどな…』


――よいのです


『けど、そんなこと言っても本当は、本当にそんなことがあったら絶対に佐保を優先させると思っていたんだ俺は』


――よいのです


『俺は絶対に、何があっても何よりも、佐保を選ぶはずだったんだ。それなのに俺は、』


――よいのですよ


『まさか俺が、佐保よりも何かを優先することがあるなんて……すまない、佐保。許してくれ』


――それでよいのです。そういうあなたを、佐保は誇りに思うのですから


『けど、十年だぞ』


――十年?


『そうだ。お前を迎えに行くのに十年かかってしまうんだ』


――あら。十年かかるものを五年でやってのけるのが、引田勘右衛門でございましょう?




「――!」


ハッと息を飲み、目が覚める。それがお前の答えか、佐保。ふーっと息を吐き出すと、こちらが目をさましたことに気づいたのか、隣に敷いた布団から「おじうえ」と遠慮がちに声がかかった。


「……ああ、どうした? 目が覚めちまったか」


「のどがかわきました」


「あれだけ泣きゃあ、カラカラになるだろうさ」


こんなこともあろうかと用意させておいた白湯を、飲ませてやる。ああ、そんなにガブガブと飲んだら、寝る前にもう一度厠に連れてってやらなきゃなんねえじゃねえか。


「伊三」


呼びかけると、湯飲みを口につけたまま目線だけこちらを向く。


「おじうえと一緒に、お前のその力で人助けをしよう」


「……」


「おじうえが道を整えるから、二人で…いや、仲間を集めて、みんなで困っている人を助けるんだ」


こくん、と喉をならして湯飲みをおろす。


「わたしが、人を助けられるのですか?」


「ああ。ただし、おじうえが全部決まりを作るから、それまでは一人で勝手に“あっち”へ行ってはいけないぞ。お前が“あっち”で迷子になったって、迎えに行かれないんだからな」


「はい」


「少し、時間がかかると思う。けど、お前のその力が人の役に立つようにきっとしてみせるから……おじうえに、ついてくるか?」


「…はい!」


もう、引き返せない。ああ、お前の言う通りだ佐保。いいだろう、十年かかるというのなら、五年で片ァつけてやろうじゃねえか。



――そして五年後、その日を迎えることになる。

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